見出し画像

44【恋愛小説もどき×親友との思い出】

私が援助交際とか、言ってしまったからだろうか
きりんさんが激しく動揺して、私の言葉を否定した

「違うよ!違う、違う!!
 ボクは君と結婚を前提に、真剣に交際したい
 君が嫌がるのに君に触れたりはしないよ、約束する」

私は、心の中で、きりんさんの言葉を反芻してみた
私は、どうやら今きりんさんに
プロポーズされたようだった
この時私は嬉しいとも、困ったとも、思わなかった
なぜか動悸が止まらなかった
こんな時の人間の直感は、だいたい正しい

そこで、正直に話した
「きりんさん、すみません
 私、他に好きな人がいますので、、、
 それに私まだ未成年だから、さすがにまずいでしょ?笑」

きりんさんは、引き下がらなかった
「ボクは君が大人の女性になるまで
 待っていられる自信がある
 その時君に好きな人がいなかったら、考えてくれる?」

私は、この時自分がなんて言ったのかさえ、覚えていない
ただ私は、私よりずっと大人のきりんさんが
まさか、私が成人するのを待っているなんて
夢にも思っていなかった

この時きりんさんは
私の好きなところと嫌いなところを100個書き出したと言って、
そのリストを私に渡してきた
私は危うくそのリストを目にしてしまいそうだったけど、
へこみそうだったので、見るのをやめた
でも、最初の一行だけ見てしまった

「歯が白い」

と書いてあった
もっと他になかったのか、とは思ったけど
うっかり嫌な言葉を目にしなくて、本当に良かった

きりんさんは私のことを分かっていない
好きなところを100個並べられたとしても、
いっぱいお金をくれると言われたとしても、
私のこころは動かない

今、私のこころを簡単に動かせる人がいる
私はその人の言葉ひとつでこころが喜ぶし、
逆に傷つけられるのは怖い
きりんさんは嫌がったら触らないって言ったけど、
前酔っぱらってた時は嫌がるのに触ってきたやん、と思ってしまう
私は本当は、本当に、好きな人以外には、触れられたくない

そういう気持ち、きりんさんは分かるかな

私は、きりんさんの散文は理解できなかったけど、
論文は素晴らしいと思った
ある時、きりんさんは私のお弁当の中身を見て
「ブロッコリーの緑が鮮やかできれいだね」と言っていた
わたしはその言葉がすてきだなって思った
わたしのこころが動くのは、そういう瞬間なのだ
分かるかな

言葉はなくても、
なんとなく通じ合える
そんな風だったら、いいのにね






この記事が参加している募集

#夏の思い出

26,360件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?