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エバーフレッシュが教えてくれたこと

大きく育ったエバーフレッシュ

”エバーフレッシュ”という観葉植物を育てている。
夜になると葉を閉じる、ネムノキのような植物だ。
名前のとおり、一年中瑞々しい緑色の葉をつけ、楽しませてくれる。
初夏の頃になると、タンポポの綿毛のような花を次々とつけ、
部屋は微かな甘い花の香りに包まれる。
もうかれこれ10年前のことになるが、
街の花屋さんで20センチほどのエバーフレッシュの苗木がふと目に止まった。
花屋さん曰く、割と育てやすい植物だということで
早速買って帰り、育て始めた。
言われた通り、数日に一度水遣りをすればよく、
苗木はすくすくと育ち、今では私の身長を超えるほど成長した。
わさわさと大きな葉をたくさんつけ、今や立派な大樹である。
ソファのそばに置いているのだが、
うたた寝をしていると、どこか南の島の木陰にいるようだ。
葉のほんの小さな変化で水を欲しているタイミングも分かるようになった。
数回の引っ越しも共に乗り越え、今や私の大切な相棒のような存在になっている。

葉の端から枯れ始める

この植物の葉も、他の植物と同様、ずっと同じ葉をつけ続けているわけではない。
どんなに端正こめて世話をしていても、
古くなった葉は、やがて役目を終える時がやってくる。
このように、葉の端から茶色に変色し始めて、
これらがパラパラと落ちるようになる。
こうなると、掃除が厄介になってくるため
早めに枯れ始めた葉は、ハサミで切り落としてしまった方が良いのだが、
せっかくモリモリと生い茂った木がスカスカでバランスが悪くなってしまい、
なんだか豊かさがなくなる気がして、
ギリギリまでそのままにしておこうとしてしまう。
”私”がもがいてしまう。
しかし、ある時を境に枯れが加速し始め、
掃除がいよいよ大変になってくるため、
仕方なく意を決して枯れた葉を片っ端から切り落とす。
やはり、葉がスカスカで見栄えが悪くなってしまったな・・・。
いつも感じる虚無感だ。

しかし、3日もすると驚くことが起こる。

鶯色の新芽

鶯色の新芽が次々と生え始めるのだ。
もう本当に驚くほどの速さで、だ。
そしてそれは、思いもよらない枝から生える。
そうして徐々に木全体の形を変えていく。
これが、剪定するたびに毎回起こることだ。
でも、なぜか私は、古い葉が枯れ始めた時に
切り落とすのをいつも躊躇してしまう。
毎回、こんなに楽しいことが起こるのに、だ。
多分、現状に執着してしまうのだ。
今の状態の木の形に満足しているから、崩したくない。
このままがいい・・・。
でも、エバーフレッシュは教えてくれる。
「きちんと世代交代をすれば、もっと面白いものを見せてあげるよ」
現状にとどまり続けようとすることは、
自然の摂理に抗うことになる。
この人間社会でも同様のことが言えるだろう。
新しい命は、ものすごく強い、大きな力を持っている。

しかし、決して忘れてはいけないことがある。
先の葉が養分をたくさん吸収して、木を元気にしてくれているからこそ
元気な新しい芽が出るのだ、ということを。


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