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神は”鍋底”に宿る

なんとなく気持ちが重たい日がある。
特に理由はない。

そんな日は、鍋の底をクレンザーで磨く。
ガラスのコップを漂白剤につける。
コンロのパーツを可能なところまで分解して
ブラシで擦って汚れを落としてみる。

普段は見向きもせず、通り過ぎてしまっている汚れを
キョロキョロとあたりを見回して探す。
いつもはしない部分を、敢えて綺麗にしてみる。

すると不思議なことに、重くどんよりとした気分が晴れてくる。
ずっと閉めっぱなしだった窓を開けて
すっと風が通ったような気分になる。

ある日突然訪れる、どんよりとした重たい気分というものは、
台所周りの少しずつ蓄積していくコゲや油汚れのようなものだ。
目に見えて手の届きやすい汚れは、その都度軽く掃除できるが、
手の届かない細部は、目にもつきにくく、掃除が疎かになる。
少しずつ少しずつ汚れが蓄積していくように、
気付かぬうちに少しずつ、心にも澱が蓄積してゆく。

なぜかわからないけど、
この心の澱を取り除くのに、台所のコゲとか油汚れを取るのが効果的だ。
心と台所はどこかで繋がっているのかもしれない。

コゲや油汚れを取らずに放置すると、
鍋は買い替えを余儀なくされる。
コンロは火の加減がうまくできなくなったりする。
そう、長く使い続けることができなくなる。

心も同じで、澱をこまめに取り除いていないと
病を引き起こしてしまうことさえある。

私は、
「神は細部に宿る」ならぬ
「神は鍋底に宿る」と肝に銘じ、
わけもなく気分が重い日は、
鍋底をゴシゴシと磨き、心の澱を取り除くようにしている。

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