犬①

かなり前の話だが。

犬と散歩をしているとき、向こうから、美しい毛並みをたなびかせ、軽快に歩くロン毛のチワワと、そのリードを持ったお洒落なご婦人が現れた。
挨拶してすれ違おうとしたが、犬が反応したので立ち止まった。

「スムースのチワワですね」とご婦人。
「はい」と私。

ご婦人「スムースは珍しいわね。おいくらくらいしたの?」
私「え?」
ご婦人「スムースって高いんでしょ、でもうちの仔は〇〇というお店で50万円だったの、血統書付きでね」
私「そうですか、お高いですね、スタイルも良いしキレイな毛並みですね、良い血統なんでしょうね」
ご婦人「そうなの!頭の形も良いでしょ?で、おたくは?」
私「うちの仔は、病気を発症したご老人から譲り受けたので、プライスレスです」
ご婦人「は?」

納得いかない、という顔のご婦人を背に、サッサと退散した。

ずんぐりむっくりだけど、私にとってうちの仔はすんごくお高いですよ。
心の中で返事した。

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