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片思いが終わった話

昨日恋が終わった。片思いだった。

彼との出会いは2年前、私が働く会社に彼が入社してきた。
同じフロアで働いていたが、初めはあまり接点が無かった。しかし、1年前に彼が異動したことをきっかけに、関わることが増えた。

彼への恋心を自覚したのは去年の秋頃だったように思う。
仕事ぶりは誠実で向上心があり、人当たりが良い。
仕事が早く、何か依頼や相談をすると意向をすぐに汲み取り先回りして思った以上の対応をしてくれた。
一緒に取り組んでいたプロジェクトでは中心になって皆をまとめ、沢山のアイデアを出してくれた。
そんな彼を、気付いたら好きになっていた。
新たな一面を知る度に嬉しくなった。

しかし、彼には恋人がいた。
恋人がいることを知ったのは、恋心を自覚した後だった。
それからしばらくは食欲がなくなり眠れなくなった。

自分に気持ちがない相手を思い続けることは辛い。
好きな気持ちを断ち切ろうと、何度も思った。でも出来なかった。
彼の視線に言動に、もしかしたらと淡い期待もしたが、全て私の都合の良い思い込みだった。
彼の優しさは私に特別に向けられたものではなく、同僚として皆に等しく向けた優しさの1つだった。

私がものすごく欲しかった彼の特別な気持ちは、恋人に向けられているのだろう。
私の知る由もないところで。

このまま近くで働いていたらいつか、と思うこともあった。

だが、彼が退職することになった。
退職すると聞いてから、私はまた食欲がなくなり眠れなくなった。
思いを断ち切りたかったはずなのに、未練タラタラだ。

昨日は彼の最後の出勤日で、退勤前に簡単な挨拶を交わした。
伝えたいことは沢山あったのに、結局ほとんど何も言えなかった。
これまでの感謝も、仕事ぶりを尊敬していることも、新天地への応援も。
好きだということも。

新しい仕事が決まっている彼は、晴れやかだった。この職場を離れることも、私と会えなくなることも、何も未練が無いようで。
やはり彼の人生には私の居場所は無かったのだと思い知って悲しくなった。

私は彼の連絡先を知らない。
これから会うことも、言葉を交わすこともきっともう無いのだろう。
昨日、私の片思いは終わった。

憂鬱な月曜も、彼に会えると思えば職場に行くのが楽しみだった。
仕事が辛い時も、彼が同じ職場で頑張っていることが私が頑張る理由になった。

これまでは自分のためにしていた自分磨き。
だけど彼を好きになり、スキンケアもメイクもヘアスタイルも、ファッションも、フィットネスも、少しでも彼に素敵だと思ってもらいたいと願いながらするようになった。

仕事も自分磨きも、彼を好きになる前も変わらずやっていたのに、これから私は何を励みに頑張っていけば良いのだろう。
彼を好きになる前の生活に戻るだけなのに。

もっと彼のことを知りたかった。色々な話を聞いてみたかった。
私も話したいことが沢山あった。彼に聞いて欲しかった。

彼と会話をした時、もっと上手く答えられていたら何か変わったのだろうかと思うことがある。
だけど出会った時にはすでに彼には恋人がいて、初めから私の出る幕はなかったのだ。

出会いのタイミングが合わないのは、元々縁がないということなのだろう。
このまま近くにいたら想いを断ち切れず、不毛な片思いをズルズル続けていたと思う。
彼が去ることになったのは「この人じゃない」と運命が軌道修正してくれたのだ。
無理矢理でも、今はそう思うことにする。

成就せずに終わった恋だったけれど、彼を好きになって良かった。
毎日が変わった。胸が痛むこともあったけれど楽しかった。

ありがとう、好きでした。
大好きでした。

今も食欲はないし、よく眠れない。
忘れるまでに時間はかかりそうだし、しばらく気持ちを引きずるだろう。
でもいつか、この気持ちが終息して懐かしく思い出せたらいいと思う。

今までも叶わなかった恋を乗り越えてきた。
きっと大丈夫。また誰かを好きになれる。

そして次こそは、自分が大好きな人に自分を好きになってもらいたい。

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