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・追われる

夜、俺は腹が減りコンビニへ買い物に行った、その帰り道での出来事である。


姿は見えないのに、何かの気配を感じた。


気の所為だろうか・・・

早歩きをしながら様子をうかがう。

…やはり気配を感じる。
一体なんだ?
ここから先は人通りが少なくなる。
走るか。

意を決して走り出す。

得体の知れない何かも追ってくる。
気配はあるのに相変わらず姿が見えない。
恐怖心が増していく。

更にスピードを上げて走る、走る。
相手も負けじと追ってくる。

何故だ?
人から恨まれるような事をした記憶はない。
まさか…強盗?この格好を見れば金が無いことくらいわかるだろ!
何故追って来るんだ!
走りながら考えてみたが、思い当たることがない。

そう。
彼の髪はボサボサ、無精髭を生やしている。ヨレヨレのTシャツ、薄汚れたズボン、そして踵が磨り減ったシューズ姿。
とてもお金があるとは思えない身なりである。

まさか…猟奇的な奴が追ってきてるのか?
勘弁してくれよ!

ついには猛ダッシュ。

こんなに走るのは一体何年ぶりだろう。


息が…苦しい……
このままでは死んでしまう…
まさか…
どちらにせよ
俺は……
死ぬ運命なのか?
そう思った瞬間、彼は足を止め膝から地面に崩れ落ちた。


気配だけだったのが、次第に足音が近付いて来るのが分かる。

タッタッタッタッタッ

ああ…
俺の人生もこれまでか

タッタッタッタッタッ

冴えない人生だったけど楽しかったぜ

タッタッタッタッタッタッ

ゼェゼェゼェ…
はぁはぁはぁぁ…
苦しげな呼吸をしながら1人の男が現れる。

さぁ!
殺したければ殺せー!


「は、はあ?
 何言ってるんですか?
 お客さん、買った物お忘れですよ。
 ホラ!
 釣りまで忘れるって…ありえねぇ…
 店長に言われて追いかけてきたんす」


現れたのはコンビニの店員だった。

「陸上やってますけど、さすがにこの荷物持って走るのはツラいっす。」


その時やっと自分が手ぶらである事に気付いた。
緊張の糸が弛み放心状態の中やっと出た言葉、


えあぁ・・・


腑抜けである。

膝を震わせながら何とか立ち上がり、コンビニで買った弁当やらビールやら水やらが入った袋を受け取った。


ホントに重てぇなぁ…
こんなの持って走ってくるコンビニ兄ちゃん、すげぇわ…
ありがとう…
ありがとう……

安堵の涙を流し呟きながら、足元フラつかせ家に帰ったのだった。


                             お わ り


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