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ローソンは白かったが

その日の午後は太陽が暑かったが風が幾分の涼しさで、寂しげな南の島の小さな街を煽っていた。
特段なにかやるべきこともなかったが僕はアパートを勢いで出た。モールまで歩いた。モールまでの距離は近くもあり、遠くもあった。道を挟み片側はペンキの剥がれ落ちが目立つ古びたアパート群、反対は片側を皮肉とでもいうような新築で綺麗な平屋が立ち並び、花やその葉を道まで露出させていた。
モールへ行き3冊の文庫本を抱えて出てきた僕はモスバーガーへ入った。新鮮な野菜で美味しいバーガー食べながら幸せを感じつつも、この束の間の贅沢は腸が消化を開始する頃にはもう忘れさられているだろうと思った。この刹那的な幸福は僕をニヒリズム的な思想の穴に落としてしまった。
楽観的で無知な人ほど生きやすいものはないが、知識は僕の弱い心を守る上で重要な役割を果たしてもいた。
僕はモスバーガーに長居はしなかった。アパートに戻るとエアコンで冷えたソファに身を投げ、モールで買った文庫本を読み始めた。

物事は落ち着くべき場所で落ち着かなければならない。はみ出せばひどく疲れるものだった。

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