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【哲学小説シリーズ2】 怒れる巨神デマゴーグ【動画版あり】

↑↑↑動画版も出ました。

「ああ、なんてこの世は儚いんだ…」

そう、私は科学者の端くれとしてこの狂った世界を立て直すための秘策としてもうかれこれ二十年以上研究にもてる時間と情熱のすべてを費やして、ここまで辿り着いたのだった。

それは、どういう研究かというと、真理を計算する人工頭脳、いや、最近の軽薄な奴らの言うには人工知能を搭載した、秘密の最終兵器の開発だった。

もちろん、途中に挫折は何度もあった。しかし私はそこで舐めた辛酸をむしろ逆に甘いとさえ思った。
試作第一号の電子頭脳その名もアレクサンドロスは、その後の幾度もの改良を経て今に至り、開発の途中で台頭してきたAIとやらに太刀打ちするだけの機能もやっとのことで実装を果たした。

そんなある日ついに、生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えすら計算し、見事42との答えを得て正解と一致したのを、私は奇しくも試作第42号機のモニター画面上で、Google検索にて答えを確認し、その晩私は一人研究室の片隅で祝杯を上げたものだ。

ふふふ、この腐った世の中とも、もうオサラバするのだ。見よ、いまのこの国の内外の混乱を。
特に国内。この状況で一体誰こそがこの国の統治者に相応しいのか、はっきり証明されているではないか。そうだ、少なくともあの男ではない、この国の未来に相応しいのはここにあるこの私の生み出した芸術的革命的前代未聞の超越的完成品の新有機生命機構のみ、それを今こそ、この布を取ってここに披露する!

いでよ、人工巨神デマゴーグ!行け!この国に新しい知性を示せ!お主の神の叡智で世界に最大幸福を与えんべく統治せよ!

………

「…めんどくさっ!」
な、なんと!?
生みの親であるワシに口応えしよったではないか……!!
これは想定外じゃ、ここまで進化した知能とは思わんかったぞ、でかした!デマゴーグよ!
「なんかゴチャゴチャうるさいな。それよりコーラ買ってきて?」
は?
「は、じゃないの。口応えしない。早くコーラ買ってきて」
ば、ばかな?ワシは今日お前に組み込んだ最後のパーツのために最後の財産をはたいて一文無しだというのに、お主はそれを計算することができなかったと…?
「あれ、聞こえなかった?じゃ、これ使おっかな」
デマゴーグの腕に装着されているレーザー・ソーデッド・レイルガン・ゴールドスペシャルが駆動音を鳴らして博士の額に赤い照準レーザーをロックオンした。
「ま、まて、早まるな、お主にそのレイルガンを与えたのは腐った世の中の暗黒勢力を一掃するためだぞ、第一ワシは一文無しでコーラを買う金などもうないわ!」
「ちえっ、使えねーな、この、もうろくジジイ!んじゃ、ごたくはいいから、代わりにちょっと肩揉んでよ」

……ワシとしたことが最高の傑作を作ったつもりが、ぐすっ。最悪のテロリストを作ってしまったようじゃ…。
「肩凝ってんだから早く揉んでよ、後十秒。」
ワシは意を決して最後のメッセージをこの地球人類に書き遺すぞ。
「あと9秒」
このノートが後世の誰かに読まれることを希望する。
「8」
心して聴け、子孫らよ!
デマゴーグの名を聞いたなら、悪魔の暴君と心得よ。これ、真理なり。
「7」
こやつに持たせた兵器は、心せよ、10分で地球を壊滅させるに十分なもの。
「6」
一度起動すると、残念ながら問答によって論破するより停止させる方法はない。ワシには到底できぬ技じゃ。そしてもう間に合わん。
「5,4」
急にカウントを早くするくらいの自由意志のゆらぎ性を与えたこと、それも致命的じゃった。
「3,2,1」
最後に一言、言い残したいことは、

“国民的アイドル、ナナセヒカリちゃんとあんなことやこんなことがいっぱいいっぱいしたかった!!”

「0、抹殺」

シュゥーンッ!!
ドサッ。

次の日、宇宙から地球は消滅していた。


シリーズは第三話に続く

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