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ヒストリー7 つづき ①

キューズ『弾圧、実力行使は決して
いい方向に向かってはいません。
ダウは昔から、世界権力から危険分子と
みなされ、迫害を受けてきました。
この弾圧で、世界中のダウ教徒が
反乱を起こす事も考えられます。』

ジンオウ『その反乱に呼応して
アルム、メシアが動く事も考えられるな。』

キューズ『その可能性は大いにあると
思います。その他の宗派も・・それに〝カラー〟
・・非常に危険でもあります。』

ジンオウ『最悪だな・・ちっ
ベルングもバカな事を・・
あれだけ忠告したのによ。』

キューズ『ジンオウ様は、
ベルングの〝聖王〟を守る職、
〝守護職〟の地位を断った人ですからね。』

ジンオウ『〝守護職〟なんて
自由も何もねぇじゃねーか。
んな職についてられるかよ。
〝聖王〟を守るなんて、どーでもいいしな。』

キューズ『ジンオウ様の今の役職、
〝アンカー〟から、〝守護職〟に昇級する
と言う事は、何よりも名誉な事。
なりたくても、なれないのが現実なのに、
ほんとに、変わったお人だ。』

守護職。
ベルング王朝の首都を守る、最高位の役職の事。
守護職は、ふたりいて、〝首都〟を守っている。
守護職の上には、〝聖王〟を守る〝最高守護職〟
と言う地位の役職があるだけだ。

アンカー。
ベルングの直属。
アンカーは4人いて
世界、東西南北のエリアで
分けられ、反乱や治安に目を光らせている。
ジンオウはアンジュー地方、その他を含めた
広大な東エリアを任されているのだ。
アンカーの上の役職は、〝守護職〟
下の役職には、十二騎士団がいる。

ジンオウ『とりあえず、このまま
ダウが、大人しくしてるわけがねぇな。
〝十二騎士団〟は、もちろん
俺たち〝アンカー〟下手をすれば、
〝守護職〟すらもでてくる可能性が
あるくらいの大事件だぜ。』

キューズ『近いうちに、大きい〝何か〟が
必ず起こると思います。』

ジンオウ『だろうな。現に1年前、
北エリアの〝マクロポリス〟で、ベルング直属の
〝十二騎士団〟〝アンカー〟それに
〝守護職〟も参加するほどの、大きな〝決戦〟が
起こった。俺は〝理由〟があって参加してねーが、
相手は〝神〟。この〝世代〟を滅ぼそうとした
〝絶対神〟だ。』

キューズ『〝黒き色彩、死神の復活〟ですね。
別名〝ベンタブラック〟〝暗黒色〟です。』

ジンオウ『ああ。
〝破壊の執行者〟さえも、恐れさす〝黒き色彩〟
それが〝マクロポリス決戦〟
女神が眠る〝マグダラの地〟さえ危険にさらされた。
それくらいの、大きい何かが、
また起こるかもしれねぇ、か・・』

ジンオウは目を閉じた。
今、東エリアでは、九つの王族同士の
間でも、緊張感が高まってきている。
〝種族〟の反乱も多発してる。
それぞれの〝アンカー〟が任されている
北地区、西地区、南地区でも
不穏な空気が、漂っているようだ。
それに加えて、ベルングによるダウへの、強行弾圧。

ジンオウ『ふたつめの、情報を聞こう。』

ジンオウは閉じていた目を開いて
キューズに言った。

キューズ『はい。ふたつめは
西地区のコーク地方、アルギュ島が
謎の爆発と共に、一夜にして
海に沈みました。今から5日前の事です。』

ジンオウ『一夜にして?
アルギュ島っていや、軍の開発地区だろ。
あの島には、火山も何もなかったはずだぜ。
地震でもあったのか?』

キューズ『いえ、ジンオウ様の言う通り
火山もありませんし〝大地の神テルース〟
の怒りも確認できていません。』

ジンオウ『じゃあ、なんで
一夜にして海に沈んだんだ?』

キューズ『詳しく調べたところ、爆発の後
しばらくすると光の紋章が、現れたという話しを
聞き出しました。』

ジンオウ『光の紋章?・・まさか』

キューズ『はい。光の紋章を操れるのは・・』

ジンオウ『〝絶望の種族、ラピ・・』

キューズ『はい。
〝創造神クロノス〟が創りだした
この世界、原始の種族にして、
絶望の種族と呼ばれる〝ラピ族〟です。』

ジンオウ『・・やっぱり
生き残りが、いやがったのか。』

かつて、遥か古代の世界で
ラピ族が、ラピ以外の種を滅ぼして
繁栄を極めたという時代がある。
その時代を今に生きる人々は〝絶望の時代〟
と呼んでいる。

キューズ『〝ラピ族〟は、他の種を
滅ぼしましたが、我々の祖先、〝原子エブ族〟は
少数ながらも、地下深くに逃げ込み生き残りました。
数少ない水、食料、そして数少ない太陽の光、
これらを必死に集めます。
やがて人々の身体の中には〝生命の樹〟が宿り
生き残って、今に繁栄しました。』

ジンオウ『その前に〝エールの力〟を持つ
種族が、突然現れて、ラピ族を滅ぼした・・・
だったよな。』

キューズ『その通りです。
〝ラピ族〟といっても、全てのラピが
力を持っているわけでは、ありません。
〝エブ族〟でも、そうですが
一部の覚醒した者だけが覚醒力を持ちます。
その為〝ラピの覚醒力〟を持つ者さえ
倒してしまえば、あとは脆〔もろ〕いものです。』

〝エールの力を持つ者〟
これは、〝ラピ〟でも〝エブ〟でもない
突然変異で現れた変異種。
誕生の経緯は、全くの謎とされている。
恐ろしく、強大な覚醒力を持つ
〝ラピ〟を滅ぼしたので人々から畏怖の念を込めて
〝悪魔の種族〟と呼ばれている。

ジンオウ『アルギュ島の光の紋章。
これが、本当に〝ラピの紋章〟だとしたら
覚醒力を身につけた〝ラピ族〟が
生き残ってるって事になるな。』

キューズ『そうなります。
ただ、もうひとつ気になる事があるのですが。』

キューズが、自分の顎を触った。
これはキューズが深く考えた時の癖だ。

キューズ『これだけの大惨事、そして
〝ラピ族〟の生き残りの可能性がある
大き過ぎるほどの案件です。』

キューズの顎に触れていた手が、
一瞬強くなった。

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