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【#26】雑なプロンプトをすくい取れ

広告・Webサイト・チラシなどの制作を請け負っていると、明確ではない修正指示が飛んでくることが多々ある。「この広告やサイトっぽくしたい」といった形でベンチマークがあれば、イメージも湧きやすいのだが、そういった戻しはなかなかこない。

むしろ相手が素人であればあるほど、参考になるベンチマークの存在そのものが頭にないので、「これっぽく」というのが言えない。まぁ探すのが面倒だし、そういったベンチマークを引っ張ってきて、提案してほしいというのが本音なのだろう。まぁそれはわからなくはない。

この業界は基本的に「請負契約」がほとんどなので、成果物を完成させて納品しなければ、対価が支払われることはない。しかも納品は発注者がOKを出さない限り納品と見なされない。最悪の場合契約破棄となり、作業させられるだけさせられて、対価も支払われずにただ時間を失ったということは珍しくはないだろう。まぁこれが請負契約のしんどいところだ。

しかしこの状況は発注者が一方的に悪いというケースばかりではなく、受注者側のコミュニケーション不足で起こるケースもそれなりにある。初回の打ち合わせで制作フローを決めずに、いきなりヒアリングを行なって制作に着手しようとするケースだ。

これは特に駆け出しのフリーランスや請負契約の経験が少ない人が陥りがちな罠だろう。目の前の制作物を作ることばかりに気を取られ、さらに発注者のインサイト(何をやりたくて、それを達成させるために何を作りたいのか)に気がつかない。

だから「何を作りたいのか」は発注者がすでに答えを持っていて、それを聞き出し答え通り作れば、発注者の望むものが自然と出来上がると勘違いしてしまうのだ。もちろん、何を作りたいのかが明確で、的確に指示を出せる発注者もいる。ただ何を作りたいか明確に言語化できる発注者であるならば、その業務を今後人間が請け負う必要はなくなる。

明確な指示(プロンプト)ができるなら、AIでも問題なくこなせるからだ。特にWeb周りの業界は「作業そのもの」は、AIに最も簡単に取られてしまう。だからこそ発注者の明確ではない指示(AIがうまく動作しないような雑なプロンプト)を綺麗に整理して言語化し、発注者の頭の中にある「言葉にできないけど、ふわっとあるイメージ」をすくい取らなければ、この先生き残ることはできない。

ただこの作業は非常に疲れる。特にプロジェクトが始まって信頼関係が構築されていない状況だと、相手から出てくる情報量が圧倒的に不足しているため、発注者の内に秘めた本当の考えが見えづらい。しかしここに最適解はない。

泥臭いコミュニケーションを重ねていく他に道はない。非常に険しい道のりではあるが、ここで得た対人スキルは色々な場面で活用できるので、できれば早いうちに身につけておきたい。

直近クライアントとのコミュニケーションがうまく行っていない自分への戒め。

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