にぼろし

社会での思うことやショートストーリーを書き溜めています。

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最近の記事

【2000字のホラー】電話エイギョウ

「わたくし投資営業の者なんですが、今からご案内するのはシニアにおすすめなeコマースの・・」 ブツン またここで切られた。いつもこのパターンだ。 電話先リストから一行消し込む。そして次の電話番号へ。 「わたくし投資営業の者なんですが、今からご案内するのは・・」 ブツン 一行消し込む。次の番号へ。 繰り返し、繰り返し。何度も何度も繰り返し。 「わたくし投資え、えいぎょうの・・・」 「わたくしとっ投資えい、えいぎょう・・」 「わ、わ、わたくしとっとっ・・」 「お前

    • インスピレーションの源泉を

      世の中を変えるのは一部の天才かもしれない。 でも彼らもゼロから何かの発想を得たわけでない。何かを見て、聞いて、知って、そこからインスピレーションを得て自分の糧としたはずだ。 その情報元もまた、ほかの何かからインスピレーションを得たものだ。それは決して直接的ではないかもしれない。しかし触れたもの同士が繋がって、新たな気づきとなる。新たなアイデアとなる。 未来を自分一人で作るというのはおこがましい。それでも、自分自身が発信したり、行動したことが、誰かに影響を与え、誰かのインス

      • 働きアリはかく語りき

        公園のベンチにスーツ姿の男が座っている。 バッグからお菓子を取り出し、おもむろに食べ始めた。 ボロボロと食べかすが落ちる。 ふむ。これは行幸だ。 私はその破片に向かって歩き始めた。 「あれ。アリが寄ってきたな。」 男は私に気づき、何やら独り言を始めた。 「アリはいいよなぁ。食うためにエサを運んでりゃいいんだ。それに比べて人間ってのは面倒だ。何のために働くんだ、なんていちいち考えなきゃいけないんだもの。上司にも客からも言われたよ。それで別々の答えをするわけさ。上司には『会

        • 青い星のささやかなクロニクル(後編)

          高度に築き上げられた文明において、モノを作ることは手放せなかった。代わりに、エネルギーの効率的に消費する技術が発展した。自然エネルギーを使い、大量に電気を溜める技術が発展した。 有害ガスは必ずしも工業に起因するものとは限らなかった。家畜の排出するガスもまた温室効果を高める成分を含んでいた。飼料を育てるために森林が切り開かれ、それもまた温室効果を高める要因となっていた。人工肉が培養され、加工された昆虫も食されるようになった。 空気を人工的に浄化する技術も開発された。有害ガス

        【2000字のホラー】電話エイギョウ

          青い星のささやかなクロニクル(前編)

          原始の星の深い海の底で、その生命体は誕生した。水にたゆたう有機物が幾度となくぶつかり合い、奇跡的な確率で起きたある衝突の瞬間、一つの意識が生じた。 「この奇跡を絶やしてはならない」 そして生命は自己複製の能力を宿し、自らの存在を増やしていった。地表には紫外線が直に降り注いでいた。浅い海は赤く濁り、生存に適した環境ではなかった。 深い海では生命が自己複製の過程で進化の方向性を模索していた。海の毒素を吸収する種を生み出し、海に広がっていった。日の光が届く層まで浮上した生命体

          青い星のささやかなクロニクル(前編)

          運気予報【ショートストーリー】

          朝。起きてまずやることは、運気予報を確かめることだ。 「今日の運気は?」 俺の声に反応し、スマホが専用アプリを読み込む。ほどなくピピっという音が鳴り、音声アシスタントが声を上げた。 「今日の運気は、吉です。」 今日も悪くない。 テレビでは朝のニュースが読み上げている。 「続いて、全国の天気と運気です。」 日本地図の上に晴れマーク、雨マークが並ぶ。テロップは一定のテンポで切り替わる。最高気温と最低気温、降水確率、そして運気。笑顔マークが並ぶなか、泣き顔マークの場所が

          運気予報【ショートストーリー】

          幸せな家族と消える私【ショートストーリー】

          テレビには幸せそうな家族が映っている。 この家族が、私を消した。 夕方のニュース番組の1コーナー。 家族経営の定食屋で一家が奮闘する様子が映し出されている。 厨房で鍋をふるうお父さん。横で食材を切る長男。 幼さが残る長女は店内をいそいそと動き回り、 注文と片づけを繰り返している。 画面が切り替わり、インタビューのテロップが表示される。 「学校から帰ってすぐアルバイト?」 アップになった長女が答える。 「そうですね。ランチよりも夕方から夜にかけてが一番混むんで。」 テロップ

          幸せな家族と消える私【ショートストーリー】

          生命、知能、シンギュラリティ

          生命体の誕生に立ち会いたい。そんな淡い願いを抱いている。 受精や出産の類ではない。無から有。無機物しかなかった地球に有機物が誕生した瞬間があったはずだ。 そんな神の御業を人工的に再現した瞬間を見てみたい。 生命体は繁栄に向かおうとする地球上のあらゆる生命体は、自らの種の繁栄のために行動していることは共通している。 もし始祖がその誕生した瞬間のままであれば、どこかで潰えていてもおかしくない。繁栄を望み、増殖を繰り返し、数多の種に枝分かれし、目まぐるしく変化する環境に対応すべく

          生命、知能、シンギュラリティ

          何をするかより、何をしないか

          仕事がリモートワークになった直後は、あれができないこれができないの声がそこら中にありました。僕もまた不平不満を述べる一人でしたが、ある言葉で気づきを得たことをきっかけに、今では前向きにとらえています。 リモートワークは「しない」好機この業務は出社しないといけない、会議は対面でないといけない等々。 社内アンケートの結果では実に多種多様な「できない」が列挙されており、 それを受けて対策会議が開かれました。 会議もオンラインで「これ自体がやりづらい」「やっぱり会議は対面で」なん

          何をするかより、何をしないか

          才ひらく街【ショートストーリー】

          機械に仕事を奪われた。 工場からの解雇通達を見つめながら、ただ茫然としていた。 予感はあった。技術が向上しただの特許を取得しただの その手の情報は更衣室の社内広報でデカデカと宣伝されていた。 いつかは何か影響が、というのは漠然と考えていただものの 解雇通知の「最新機械の導入により」という言葉を目の当たりにして それが今だと思い知らされた。 ひとしきり頭が真っ白になったあと、沸々と感情が湧いてきた。 機械が憎い。 涙をポロポロと流しながら、 次は機械に獲られない仕事をしよう

          才ひらく街【ショートストーリー】

          音楽は水のように 【ショートストーリー】

          蛇口をひねると音楽が出てきた。 踊るように流れる音符たち。両手に溜めて、顔を洗った。 楽しい音色、悲しい音色、嬉しい音色、怒った音色。 何度も何度も顔に浴びせると、新しい歌が聞こえてきた。すばらしい朝! こんな日に家にこもってるなんてもったいない。 着替えもそこそこに、私は家を飛び出した。 太陽の日差しが空気中の音楽を吸って、私の体いっぱいに照らされる。 車の音、電車の音、信号の音、人の足音、誰かの咳払い、店の呼び込み。 町中のすべてが音楽とまじりあって素敵なリズムを奏でて

          音楽は水のように 【ショートストーリー】

          ビジネス会話は"体のたとえ"が通じやすい

          仕事のコミュニケーションでは、物事をきちんと説明するのが意外と難しいものです。話し上手の人の言葉を観察してると、"体のたとえ"をうまく使いこなしてることに気づきました。 私も真似するようにしたら少し話せるようになったので、話ベタな方はぜひ活用してみてください。 手が足りない忙しくて誰か手伝ってほしい時の慣用句。王道ですね。 やれリソース不足とか横文字使わなくても、一言で状況が伝わるので使いやすいセリフです。 「忙しい?」「なかなか手が足りなくて」「今ヒマだから手伝おうか?」

          ビジネス会話は"体のたとえ"が通じやすい

          怒られかけてる時のゆる謝罪フレーズ5選

          「今、怒られかけてる・・?」ってシーンでは、ガチ謝罪よりもゆる謝罪が有効です。 上司による不穏なお気持ち表明、愚痴のような嫌味のような言葉がチラホラ。察して「大変申し訳ございません!」と謝ると「謝らないで」と逆に怒られてしまうことも。 修羅場のIT企業で10年以上生き延びてきた経験から、そんなシーンで使えるフレーズを紹介いたします。 【1】失礼しました。思い違いをしておりました。求めれてたレベルに達してなかったり、相手の期待とズレた提案をしてしまった時などにはこのフレー

          怒られかけてる時のゆる謝罪フレーズ5選