『夜明けの詩』〜時間が止まる直前みたいな映画〜
『夜明けの詩』を観た。
1人の小説家が問題を抱えた人たちとの会話を通して自らを見つめ直す話。
ひと言でまとめるなら、そんな感じの話だと思う。
アルツハイマーを患い、息子をかつての恋人だと思い込む母親。妊娠したけど中絶することを選んだ大学の後輩。奥さんの癌を治したくて奇跡を求める写真家。無くした記憶を他人から買うバーテンダー。
受け入れたくない現実を抱えて、それでも今日一日を生きている人たちの話だと思った。
過去でも未来でもなく、"今"この瞬間を生きている。
1秒先も、そのまた1秒先も、とにかく今だけを生きて、カタツムリより遅い速度で前に進む。1秒以上先の未来は見えない。
時間が止まっているようで進んでもいる。今にも止まりそうな時間の流れすれすれをずっと眺めているような、そんな不思議な感覚になる映画だった。
観ている時は、寝てしまいそうな静けさの漂う気だるいストーリーに感じたけれど、観終わってから振り返りあれこれ考えるほど味が出てくる映画だと思う。
原題は『아무도 없는 곳』直訳で「誰もいないところ」となるらしい。
日本語のタイトルはラストシーンから取ったのかなと、個人的には思っている。
生きているようで生きていない、でもやっぱりそこにいる。そんな雰囲気を纏った登場人物たちの長い夜が明ける日が来てほしい。
見終わったあとから、いろいろ考えたくなる映画だった。
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