日記 かえる

外小屋の自転車には何匹かの蛙が駐留しており、枯れ草で尻を小突いてやるとすぐに飛び降りた。しかし一匹だけ、タイヤから地面のすぐ近くまできて一転こちらに振り返り、どうして私は自分の住みかを追われなければならないのかという顔をした。その心意気を買った私はベルに乗せて工場まで連れていったのだった。風に吹かれた蛙はいとも簡単に家を捨てた。できることなら、帰してやりたかった。

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