恋せぬふたり制作日誌③第2回のこんなところに注目!
毎週月曜よる10時45分から放送中のよるドラ「恋せぬふたり」。
いつもご視聴ありがとうございます。 第2回を監督させていただきました野口雄大と申します。
いきなりの問題です! 第2回に登場した劇中のモノで、特に私の中で思い入れの強いモノが3つあります。 それは一体、何でしょうか!? (知らねーよ!という声が聞こえてきそうですが、少しお付き合いいただければ…)
ヒントは本来の用途や役割とは見え方が違ったように感じた!?かもしれないモノです。 (スミマセン、感じない人もいると思います…) はい、では一方的に正解を発表します! まずは一つ目ですが…
《家族写真》です
家族の仲の良さが伝わるように、助監督さんがたくさん撮ってくれました。
これは劇中では、咲子の実家に行った高橋の目線として、最初に入っているカットです。 なぜ思い入れが強いのかというと、「人によって【家族写真=幸せ】ではないだろう」とこの作品に向き合う中で感じ、それを観る方にも感じてもらいたいと思ったからです。
幼い頃から両親ではなく祖母に育ててもらった高橋が、家族の温もりを感じる家族写真を見たら「どんな感情を抱くのだろう」「高橋にとって家族写真ってどんなモノなんだろう」と想像を巡らせました。
そして人によっては“普通の家族写真”が普通ではなくなる。 「むしろ普通ってなんだ?」と、この写真と向き合うことで、今までの自分の価値観を改めて見つめ直すきっかけにもなりました。
二つ目は…
《料理》です
咲子が自分は多分アロマンティック・アセクシュアルだと、家族の前でカミングアウトをするシーンの最後に入っている料理です。 美術スタッフには、「母・さくらの愛情がにじみ出るような料理」とお願いしました。
咲子の恋人報告(うそ)に大喜びし、ただ娘の幸せを一心に願って母が一生懸命作った料理。 けれど、その母の思いが詰まった料理は、一口も手をつけられることなく、無残にもリビングのテーブルにさみしく置かれています。母をはじめ、咲子たちを温かく迎えようとした家族の象徴として表現できたら…という思いで準備してもらいました。
三つ目は…
《裁縫箱》です
咲子が実家での出来事を謝るために、高橋の部屋を初めて訪ねたシーンです。 なにやら髙橋は裁縫箱を開け、枕カバーのほつれを直しています。なぜそうしたのか? それは、少しでも高橋と祖母のつながりを想像してもらいたかったからです。 実はこの裁縫箱、祖母が使っていたという設定の裁縫箱なんです。 (そんなの気づかねーよ!という声が聞こえてきます…)
このドラマはセクシュアリティだけでなく、家族というテーマにも踏み込んでいます。 高橋が祖母について語る時、高橋の過去や、この家の匂いを漂わせたいという思いから、祖母の裁縫箱を登場させました。
劇中でそのような説明は一切していませんが、高橋一生さんが静かに枕を縫う姿は“何か”言葉では表現出来ない感情がにじみ出ているのではないかと思います。
「さりげなく“何か”を感じてもらえたら良いな」 「色んな感じ方をしてもらえたら良いな」
そんな思いを込めて、3つのモノにはこだわりました。
最後に… カミングアウトのシーンの撮影中、私は涙が止まりませんでした。 撮っていて涙が止まらなかったのは初めての経験でした。
なぜ悲しかったのか。 もちろん、咲子が長年抱えてきた悩みや痛み、そしてそれが理解されない苦しさを感じたことは大きな要因の一つです。 ただ、それと同じくらいに、
「この場所に、本当に悪い人は、誰ひとりいない」
ということを感じてしまったからです。 咲子や高橋の魂の叫びは、痛いほど伝わる。 一方で、両親であるさくらや博実、妹・みのりと夫・大輔の気持ちも理解出来る。 互いの苦しみに胸を締め付けられ、「なんて場面なんだ」と震えていました。
相手を思いやる気持ち、相手の気持ちを想像することがいかに大事で、 同時にそれを想像することがいかに難しいかを痛感しました。 撮り終えた夜、撮影の余韻が凄まじく、ふだんは飲まない度数の強い酒を飲み続けました。
この第2回を撮りながら、ずっと自分の「当たり前」に向き合っていました。 その向き合いは、放送が終わった今も続いています。
来週第3回も、何かの「当たり前」に向き合えるかもしれません。 ぜひご覧いただければと思います。
ありがとうございました。
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