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恋せぬふたり制作日誌⑤第4回のこんなところに注目!

毎週月曜よる10時45分から放送中のよるドラ「恋せぬふたり」。
第4回ご覧いただけましたでしょうか?
演出を担当しました、押田です。

今回は4回で注目してほしいところについて、お話していきたいと思います。ちょっと長いですが(笑)お付き合いください!

4回の主役はなんといってもカズくんです!お気づきのようにグイグイ遠慮なしに迫ってくるキャラクターで、「ふたり」とは真逆の性格の持ち主です(苦手な方もおられるようですが…)。

そんなカズくんとのひょんなことで始まる共同生活ですが、下記の3つを大切にして演出しました。

劇中写真

①カメラはなるべく高橋家の室内から離れないようにすること

②カズくんはなるべく動くこと

③食べることを大事にする

まずは、「①カメラはなるべく高橋家の室内から離れないようにすること」についてです。 

4回をご覧いただいた方はわかりますが、カズくんが思い出す会社での咲子とのシーン以外、この回はずっと高橋家の室内で展開します。これは別に予算がないからとか、高橋家以外セットがないからというだけではありません(笑)。

朝から晩まで高橋家という密室の中で、セクシュアリティが違う咲子&高橋とカズのやり取りが、ぶつかり合い、ときには認め合い、理解し合う、そんな瞬間を日常生活の中から見守ってほしいという思いからでした(ある意味、しゃべり場みたいなものですね笑)。

それは、どちらかの価値観に一方的に丸め込むということではありません。どちらが正しいとか、間違っているとかではなく、どちらの価値観も受け入れていくようになる、そんな瞬間を目撃してほしいからでした。高橋家の室内という1シチュエーションに限定することで、それが一番作用できるように考えてみました。

物語の冒頭は、まだまだ双方には壁があることを示すために、高橋の部屋側にいる咲子と高橋、そのふすまの反対にいるカズで2対1に見せています。ふすま一枚が実は大きな壁です。

劇中写真

咲子&高橋とカズの対立は、リビングに降りてきたときに、さらに顕著です。共同空間なので、壁はないように見えますが、カズくんが思う疑問は、咲子たちには一切響かない。双方には見えない壁があるのです。

咲子と高橋のあいだで、カズくんはあくまで異質。同じ空間に存在していても、双方は違う考えで人生を歩んできたことが示されます。外に出たら、咲子と高橋の関係はマイノリティかもしれませんが、この室内では、あくまでカズくんの方がマイノリティなのです。

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さらに同じ空間で生活することは、それぞれの距離感を自然とみつめることにもなります。最初、カズくんは高橋さんとの距離感を間違えてしまい、拒否感を与えます。しかし、高橋のそぶりから、だんだん、高橋の心地よい距離を認識し始めます。

それは同時に「恋愛関係抜きの家族」というものが、ふたりには「ある」ということをなんとなく認識しはじめることによって見えてくるのです。言葉では説明しませんが、分かってくる双方の心地よい距離感。声高には叫んではいませんが、徐々に歩み寄っていく瞬間が、同じ空間だと可視化されやすいと思いました。

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さらに、咲子とカズくんが相性では、ピカイチだということもわかってきます。食べ物の好き嫌いも合う、推しのアイドルも一緒、なにより、咲子が落ち込んでいるときに一番励ましを与えるのは、ほかでもないカズくんです。

同じ空間を共有することで、咲子&高橋VSカズという対立に思えていた構図が、徐々にそうでもないことがわかってきます。セクシュアリティは違うかもしれない。でもそれは決して対立を生むことではないのです。

劇中写真
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①と似通ったところもあるのですが「②カズくんはなるべく動くこと」についてもお話します。

4回のカズくん、落ち着きがないほど動きます(笑)。

これはカズくん役の濱正吾さんにあえてお願いしたことです。「ふたり」のあいだに、あえて突っ込んでいく。閉ざしていたドアも全部開けていきますし、咲子&高橋の聞きにくい質問などにも踏み込んで、その境界線を曖昧にしていきます。

もちろん、嫌がっていることを無理やり行っていくカズくんにも悪いところはあるのですが、彼は「知りたい」というただ一点でぶつかっていきます。素直です。まっすぐです。

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しかし、このカズくんの思い切りがとても大事な気がしています。ハラスメントだからとか、言っちゃいけないからとか、意識すればするほど、どんどん境界線がはっきりしてきて、何も言えなくなっていきます(相手を傷つけるとわかっていて言うのはもちろんダメです!)。

それは過剰なまでの他人との「分断」です。でもこのドラマが目指すところは、「分断」ではありません。アロマアセクについて分からないからと言って、思考停止になるのではなく、もっと知っていきたいということを目指したいのです。それを体現するのが、実はカズくんだと思います。

高橋の同僚である浜岡(猫背椿さん)と豊玉(西川可奈子さん)が押しかけてきたとき、咲子は、この二人が醸し出す色目やおせっかいがなんのためなのか、よく分かっていません。二人は外から押し寄せてくる世間です。その世間の反応をカズくんは咲子に気づかせようとします。おそらく、カズくんが咲子に直接話をしなければ、気づくことのなかったことを、カズくんは何の躊躇ちゅうちょもなく聞いてしまいます。

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浜岡さん(左)と豊玉さん(右)

彼は一生懸命、分からないなりに「ふたり」に向き合っていこうとします。最初、不躾ぶしつけにみえていたことが、最後には、彼の真剣さに見えてくる、そこがアクティブに見えてきたら良いなあとなるべく動いてもらうことにしました。

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最後に「③食べることを大事にする」についてです。

この回では、「カップうどん」、「パンにチーズとか卵とかぎゅって雑に焼いてるやつ」、「シーフードモチモチタラマヨ(邪道ピザ)」、最後に「ロールキャベツ」と食べ物がたくさん出てきます。

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最初はそれぞれ別々に食べていたものが、宅配のピザ(このピザもカニカマでした。高橋さんはいつになったら好物のカニを食べることができるのでしょうか?笑)を一緒に食べるようになり、最後は手づくりの料理を一緒に食べるようになるまで変わっていきます。俳優部にお願いしたのは、必ず口にしてもらうこと。やはり人間、食べ物を口にすることで見えてくる何かがあります。

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特に、最後に出てくるロールキャベツ。カズくんがほぼ初めて作った料理ですが、ボロボロになりながらも(手には絆創膏ばんそうこうが貼ってあります)、一生懸命手づくりしたロールキャベツ(美術部には下手だけど一生懸命さがにじみ出てほしいとオーダーしました。絶妙な加減だと思います!)を3人で食べることが、この回のいちばん大事なことです。お互いを理解し、受け入れつつある状態、それを「食べることを大事にする」で表してみました。

最初は、上手くいかないと思っていた3人の共同生活が、意外にも?心地よいものに変わりつつある。しかし、理解できたように見えたカズくんですが・・・・まだまだそうでもなかったようです。5回までしばらくお休みですが、「恋せぬふたり」引き続き見守ってくださると幸いです。

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よるドラ「恋せぬふたり」
[総合] (月)よる10時45分〈全8回〉
NHKプラス&NHKオンデマンドでも配信中
第1~4回「イッキ見」再放送 2月19日(土)午前1時01分から(放送時間が変更になりました。※当日変更の場合あり)
第5回 2月21日(月)放送

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