見出し画像

サンゴから何が見えるかな?

沖縄県名護市出身、現在はニューヨーク在住の写真家 比嘉良治さん(80歳)
ニューヨーク在住ですが、年に2回ほど来沖し子どもたち、特に、「社会の日陰的な存在になりがちな小さな島、小さな学校」の子どもたちのためにボランティアでワークショップを行なっています。通称ヨシ。長年アメリカに住んでいるから(?)か、年齢差を感じさせない、とても気さく、求心力のあるお方です。

ニューヨークの大学で学んでいた社長とのつながりからお友達になり、私も何度か来間島でのプロジェクトにお邪魔させていただきました。ヨシはたくさんのお友達がいて、ヨシと一緒に島にお邪魔してから私もお友達が増えました。琉球タイムスをご覧いただいてからは、「あなたの文章が好きです。子どもたちの感性を育てるにも助けとなります」と、素晴らしい芸術家のヨシさんにエールをいただきとても嬉しかったです!

9月にも来沖していたヨシ。名護の小さな絵本屋さんで行われるワークショップ「ガーランド絵本づくり」のお知らせをいただき、お邪魔してきました。ヨシが撮った写真を見て、その上に子どもたちが絵や言葉、色を塗っていく…というものです。

写真集には載らなかった写真を、子どもたちへ惜しげもなく差し出してくれるヨシの心意気、さすが! プロが撮った、こんなに大きなサイズの写真を手に取るということ自体、なかなかレアな経験ではないでしょうか。自分のお気に入りの1枚を選ぶときにはワイワイガヤガヤしていた子どもたちでしたが、各自スペースを確保すると、だんだん静かになり…それぞれの時間に入り込んでいきます。ときどきチラッと周りのお友達がどんな表現をしているのか気になって覗きつつ、思い思いに自分の色、心を1枚1枚の写真にのせていきます。

大人になるにつれ、何かを創るという時間が減ってきている気がして、こうして子どもたちが自分の心との会話を表に出していく姿は自由で素敵でした。大人たちが何を言う訳でもなく(評価しない)、するわけでもなく(導かない)、子どもたち自らの力で進めていくのです。

少しずつ現れてきたものを見せてもらうと、とても感心します。
ヨシの最新の写真集は、サンゴや岩を撮ったもの。そこから何が見えるか… それぞれの視点がひかります。
犬、マンボウ? 悪魔!? 余白に即興で物語を書き上げる子まで…!


一人だけ、写真の裏面に描いている子がいました。

「彼、裏に描くんだけど、写真選ぶんですよ。なんでもいいんじゃないんですよ 何かイメージといま描いているものがあると思うんですね だからそういうのを大切にして 「これ反対でしょ」ということじゃなくて。反対でもいいんですよ」

何に見えたっていい。何を描いてもいい。どう描いてもいい。ここは、それぞれの視点や表現が尊重される場…

「いまの子どもたちは、親や周りの目線を気にする傾向がある。そうなるとその子の内面が出てこない」。ヨシの考えから、お母さんたちは子どもの様子を見ないようにしていました。

「大学のころ(ずいぶんむかしですけど)、イギリスの児童心理の先生が児童絵画を教えてくれて。そのときの影響が非常に強くて、子どもをなるべく自由に自由にと。いま来間島でカメラを表現でやっているけど、カメラはおもちゃみたいに道具であり、粘土みたいに、絵具みたいに、カメラを使ってなんでも撮っていい。

来間島に行くと、何もないんですよ。写真の対象物がない。ちょっと心得のある人が来間に行って写真を撮ろうとすると、海の写真を2、3枚撮って終わり。ところが子どもたちが撮るのはものすごく素晴らしい。銀座で展覧会をやったら、東京の新聞社がみんな紹介してくれて。どういう写真がいいとかじゃなくて、「なんでもいいから好きなのを撮っておいで」というような感じで。で、それを自分たちで選ばせて。デジカメだから何枚でも撮れるでしょう、それを自由に選んでもらって、こちらでプリントだけを手伝って。

ぼくの友達が(同級生なんだけど)、最近「5歳のときの絵を見つけた」と言って、ウェストサイドで紹介したんですよ。そしたら、絵描きさんたちが大絶賛。「だんだん悪くなってるんじゃないか(笑)」って。そういうふうに子どもの自由を育てたいから、お母さんたちにも席を外してもらうようにしていますが、どうぞご理解ください」

子どもたちが、のびのびと楽しんでいる姿を見て、私も何か描きたい、創りたい、見つけたい… そんな意欲が湧いてきました。海に行けば、シーグラスや貝殻を見つけては延々と拾っていられます(笑)。または、ヤドカリの動きをじーっと観察したり、カニが穴から出てくるのを今か今かとシャッターチャンスを待ち構えたり… 自然のなかから与えられるインスピレーションにも心が洗われます。自然やArtには、きっとそういう癒しの力があるのだと思います。「ひとり旅」もまた然り。


◆参考◆
・ヨシの最新の写真集(北川角子さんとの共著):『砂浜に残り、歌にきざまれた人々の夢・沖縄』

・毎日新聞にて:小石に宿る「記憶」を写す 写真家の比嘉良治さん

・主催の「絵本屋Polaris」さんも、とても素敵なところでした;
ODAYさんによる紹介記事

こんな絵本屋さんで一日ゆったり過ごしてみたい… あこがれちゃう場所です。

沖縄には小さな書店がたくさんあるような気がしますが、どうなんでしょう?先日近所で行われていた古本市では、古い県産本をたくさん見つけました(その度に興奮!)統計を調べた訳ではないのでわかりませんが、古本屋に足を運ぶと小さな単位での出版、自費出版も多いのかと想像しちゃいます。本を「売る」こと以上に、「伝えたい」、「残したい」という想いをもつ人が多いのかなぁ? 誰でもが本を作れる(受け継いでいきたいことを形にする)可能性があるカルチャー。沖縄独自の文化、アイデンティティが育まれていく土壌でしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?