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ファスト映画は本当に悪だったのか

今回のnoteでは上記新聞記事をもとに、ファスト映画について考えてみました。大学のゼミで書いた文章をそのまま載せているため堅苦しい文章で長くなっていますが、最後まで読んでいただけると幸いです。
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はじめに

ファスト映画により映画の売上が減少するとしたら、今回の訴訟という判断は正しいと考えられる。無料版が存在することにより、本来有料版を視聴するはずだった視聴者が無料版を視聴してしまい、その分売上が減少してしまう可能性がある。売上が減少すれば、創作意欲が失われ、映画業界は縮小してしまうだろう。逮捕者を出すことにより、ファスト映画を投稿する人を大幅に減らすことができる。

しかし、ファスト映画には売上を増加させる可能性もある。なぜなら、ファスト映画は無料で視聴することができ、映画の宣伝にもなるからだ。ファスト映画を視聴し作品に興味を持った有料版を観る予定がなかった視聴者が有料版を視聴するようになれば、その分映画の売上は増加する。

ファスト映画によって映画の売上が増加するのか、もしくは減少するのか、原告企業は詳しく検証する必要があったのではないか。しかし、ファスト映画に関して、十分に検証できていないと考える。なぜならいきなり逮捕に踏み切ってしまったからだ。ファスト映画が映画の売上に与える影響はおそらく作品や作り方ごとに異なる。しかし、逮捕者が出てしまったことによって、ファスト映画は投稿されなくなり、どのようなファスト映画が売上にプラスに働くのかマイナスに働くのか検証することが難しくなってしまった。

また、検証が十分に行われていないのはないかと考える理由はもう1つある。被害額の算出方法に問題があり、ファスト映画が売上に与えるマイナスの影響を過大に評価しているからだ。被害額の200円をファスト映画の総再生回数にかけるのは明確に間違っている。ファスト映画は無料であり、値段が安い分需要が増え再生回数が多くなる。有料の場合はその分需要が減り再生回数が少なくなる。そのため、200円の場合は再生回数がその分減るはずだが、無料の場合の再生回数にかけてしまうと被害額が過大に算出されてしまう。

以上のことから、原告企業はいきなり逮捕に踏み切るのではなく、まずはガイドラインを制定し、ファスト映画の売上への影響を詳しく検証する必要があったのではないかと考える。また、ファスト映画が映画の売上にプラスに働く可能性は高いのではないかと考える。

本論

ファスト映画がなぜ売上にプラスに働く可能性が高いと考えるのか。理由は大きく分けて2つある。1つはコンテンツの量が増えすぎているからである。そして、YouTubeが発達しているからだ。ファスト映画を視聴者が作るネタバレありの広告動画と捉えると面白いのではないかと思う。

コンテンツの量が増えすぎている

まず1つ目について、コンテンツが増えすぎており、余暇時間を奪い合っている状況だ。映画は上映時間が約2時間と他の動画コンテンツと比較すると非常に長い。そのため、他の動画コンテンツと比べ視聴者に映画を見てもらうハードルは高くなる。映画の予告編は今まで1分や30秒ほどと非常に短いが、そういった予告編によって2時間の映画を見る判断をするのは難しくなっているのではないか。視聴者は自分の時間を無駄にしたくなく、確実に面白い作品しか見たくなくなる。
そこでファスト映画が広告動画として有効になると考える。ファスト映画は10分ほどで作品が解説されており、結末までもが紹介されている。そのため、ファスト映画により、その作品がどのような作品で面白そうかどうかを判断することができる。面白そうだと判断した場合、フルで見たくなり有料版で視聴することになるだろう。

YouTubeの発達

次に、YouTubeの発達だ。YouTubeのユーザー数は増加しており、アルゴリズムが非常に発達している。そのことにより、ファスト映画は拡散されやすく、広告として非常に強力なものとなる。複数人が同じ作品についてファスト映画を投稿することにより、拡散能力はさらに高まる。

コミュニティの形成

また、YouTubeのコメント欄は映画コミュニティとして有効である。昔の作品について他のファンと交流することの難易度は高いが、YouTubeはユーザー数も多く、コメント欄でのユーザー同士の交流が活発であり、ファン同士の交流の場として有効である。

ファンの力

上記のことを企業はお金をかけずに実施することができる。ファンが映画の広告活動を企業の代わりに行ってくれるのだ。しかも作成された動画はファンの視点で作られており、企業が作る動画よりファンに受け入れてもらいやすい可能性もある。広告動画の量産や、ファスト映画と同程度の拡散力を持つ広告の制作となると非常に高額な広告宣伝費がかかるが、企業はファスト映画を認めることにより、この費用を削減できるのである。

2次利用を活用する他業界

他の業界では、ゲーム実況やコミケなどの2次利用を認めることにより非常に盛り上がっている。また、日本のシティポップも違法アップロード動画により海外で注目を集めた。ファスト映画も人によって解説の仕方が異なる。新しい形の映画の楽しみ方が生まれていたかもしれない。

おわりに

ファスト映画が売上にプラスに働く可能性もある。作品ごとにファスト映画の影響を検証する必要があった。ファスト映画を有効に活用することができれば、昔の映画の再流行など新しい可能性があったのではないか。

参考

田中辰雄「あわてた権利行使は貰いが少ないか」2022
<https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3960>



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