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「冗談」では済まない、エイプリルフールの落とし穴

明日はエイプリルフール。

新型コロナウイルスの流行により暗い雰囲気の世の中を、少しでも明るくしようと思ってエイプリルフールネタを考える、という人もいるかもしれません。そのお気持ち、よくわかります。

しかし、いま言おうとしている(投稿しようとしている)そのネタ、本当に発信して大丈夫ですか?

発信する前に、まずはこちらの記事を読んでみてください。

悪質なウソは逮捕されることも

過去に、震災の際に「動物園からライオンが逃げ出した」とSNS上でデマを流して逮捕されてしまった方がいます。

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これは、ウソによって動物園の業務を妨げたことを理由とする偽計業務妨害罪(刑法233条)に該当するからです。

同様に、ウソであっても何らかの犯行予告(偽計業務妨害又は威力業務妨害。刑法233条)であるとか、他人の名誉を毀損する表現(名誉毀損。刑法230条)は、犯罪になりえます。

たとえ軽い気持であったとしても、誰かに迷惑のかかるウソはやめておきましょう。

民事上の責任が生じることも

また、上記のような他人に迷惑のかかるウソをついた場合、それによって損害を被った被害者から損害賠償請求を受けるおそれがあります(民法709条)。

「匿名のSNSだったらバレないのでは」と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

(あえて詳細な手続は省略しますが)発信者情報の開示を求めることで、誰が発信したのかを調べることができるからです。

なお、名誉毀損の場合、直近2~3年の裁判例を見ると100万円程度の慰謝料を認める事案が多いです(『判例秘書』調べ)。また、議員さんなどの有名人や企業に対する名誉毀損だと数百万円の損害賠償を認めた裁判例も複数あります。


では、人を嬉しい気持ちにさせるウソなら何でもよいのか?というと、そうとも言えません。

たとえば、「100万円プレゼントします」というウソです。

このようなウソは、相手方がウソだと知り又は知りうる状況であれば「冗談」で済みますが、そうでない場合には本当に100万円をプレゼントする義務が発生します(民法93条)。これを「心裡留保(しんりりゅうほ)」といいます。

「相手方がウソだと知り又は知りうる状況」かどうかは、相手方との関係、プレゼントを約束するに至った経緯、発言者の経済状況などが考慮されます(東京高判昭和53年7月19日判時904号70頁。同棲解消に際して2000万円を支払う旨の約束について民法93条ただし書により無効とした事例)。

そのため、顔見知りに対してこのようなウソを言うぶんには、冗談で済む可能性が高いと思われます。

SNSで発信する場合は特に気を付ける

これに対して、SNS上でこのようなウソを発信する場合には、冗談では済まされない可能性が高まるといえるでしょう。

たとえば、「本アカウントをフォローして、本ツイートをリツイートした人全員に100万円をプレゼント」という場合(このような文言に加えて、大量の札束の画像を添付している例もありますね)。

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この場合、条件を満たした人は100万円の支払いを受ける権利を取得することになります(民法529条。懸賞広告)。

これに対して、発信者が「いやいや、あれは冗談だったんですよ。冗談なのはあなたもわかってたでしょ(民法93条ただし書)」と主張したとしても、状況次第では100万円を支払う義務を免れない可能性があります。

個人情報収集目的の可能性も

話は変わってしまいますが、このようなプレゼント企画に参加することには、また別のリスクがあります。

というのも、SNS上のこのようなプレゼント企画は、個人情報を収集する目的で行われていることがあるからです。収集された個人情報は、リスト化されて業者間で取引され、詐欺などの悪質な行為に利用されるおそれもあります。

そのため、プレゼント企画に不用意に参加することは避けた方がいいでしょう。


ちなみに、このようなプレゼント企画の場合、当選者を「全員」ではなく「抽選で●名」としていることが多いと思います。

そのため、条件を満たした人が発信者に対して100万円の支払いを求めても、「あなたは抽選に外れました。だから支払いません」といわれてしまう可能性が高いと思われます(応募者全員で一丸となって支払いを求めれば、誰かしらの請求が認められる可能性は高いとは思いますが、現実的ではないでしょう)。

最後に

以上のとおり、誰かを傷つけたり、迷惑をかけたりするウソは避けましょう。

また、プレゼント系のウソは、ウソをつくのも、つかれるのも、気を付けてください。

結局、法的にみると薬にも毒にもならないウソが一番良い、ということですね(笑)

私個人は、企業のエイプリルフールネタが結構好きです。新型コロナウイルスの影響で今年はエイプリルフールネタも自粛…という企業もあるかもしれませんが、世の中を明るくするためのネタは積極的に発信していただきたいです。

弁護士 永野達也


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