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【6月22日】 やはり、そこになければないのである

某日

東京にきてから好きになったものの一つに、丸源ラーメンがある。こちらでは割とお馴染みのラーメンチェーンのようだが、北海道には一店舗しかなく、その存在すら認識していなかった。

定番メニューの「熟成醤油ラーメン肉そば」は、あっさりとこってりがいい具合に共存したスープと、薄切りの豚肉、そして何気に重要な玉ねぎの歯応えが絶妙。柚子胡椒入りの大根おろしをスープに溶けば、爽やかな香りがプラスされ一味違う風味を楽しめる。具材が多い分、麺が主張しすぎていないのもバランス良し。

そのままでもうまいが、卓上の調味料で味変すると可能性が広がる。オリジナルの「どろだれラー油」が良い。中盤で追加すれば、ピリ辛の刺激で食欲にターボがかかる。さらに「揚げにんにく」を惜しみなく振りかける。こんなことしていいんでしょうか、という喜び。からの、最後は「お酢」を投入し、程よくまろやかに変化したスープを最後まで楽しむ。

そう、丸源ラーメンのゴールは「お酢」である。私は今日も「お酢」を目指していた。自宅から自転車を一漕ぎしたその瞬間から、目指していたのは「お酢」だった。

店に着いて、「熟成醤油ラーメン肉そば」を注文し、運ばれてきたそのままの「熟成醤油ラーメン肉そば」を食べ進め、時々冷たい緑茶を流し込み(丸源ラーメンでは水ではなく冷え冷えの緑茶が与えられる!)、「どろだれラー油」で味変、間髪入れずに「揚げにんにく」投入、上へ上へと昇り詰めて、さあ、最後に「お酢」でこの物語は完結だ、と勢いよく卓上調味料の並びに手を伸ばして、スープにひと回し、したところで、何か妙だと気づく。液体が茶色かったような気がする。右手を見る。私が持っていたのは、「餃子だれ」だった。やってしまった。ゴール前で転倒。もうダメだ。終わった。いや、諦めたくはない。すがる思いでパッケージを読む。「餃子に合うように、熟成醤油と酢を合わせました」とある。ということは、だ。「餃子だれ」を分解すれば、それは本来追加したかった「お酢」と、「熟成醤油ラーメン肉そば」の「熟成醤油」部分なわけであり、全くもって見当違いな意味不明調味料を混ぜてしまった、ということにはならない。うん、大丈夫。「熟成醤油」の分だけちょっと味が濃くなったくらいの話。安堵&安堵。もう少し「お酢」を足して食べてみると、全く問題ない。ちょっと濃くて美味しい。一瞬焦ったが、無事ゴールできた。満足して帰宅。暖まった体に小雨が心地よかった。


某日

Xのいいね欄が非表示になるということで、タイムラインが騒がしかった。私はあまり他人のいいね欄を見る習慣がないから別に、と思って静観していたのだが、いつものようにぼんやりタイムラインを眺めたり、盛り上がっている話題について掘っていくうちに、もはや暴言としか言いようのない馬鹿げた発言をしている奴を見つけた。そのツイートには、いいねが1だけ付いており、こんな馬鹿げた発言を「いいね」と思うアホ人間というのは一体全体どういう奴なのだ? と、ほとんど無意識でいいね欄をタップしていた。押せなくなっていて、そこでやっと気づいた。私は嫌いな奴を見るためにいいね欄を使っていたらしい。見れなくなって実に残念だ。


某日

楽天ポイントの期限が迫っていたので、使える店を探して、夫と焼肉を食べに行った。ちょっと前にも楽天ポイントを使う目的で鰻屋に行ったのだが、アプリでは「使える店」になっていたのに、いざ行ってみると使えないと言われた。単にちょっと奮発して鰻重を食べただけになった。今回は予約の時に楽天ポイントが使えるか聞いたので安心して焼肉を堪能できた。

焼くうちに網が汚れたり焦げたりすると網を交換してもらうわけだが、こちらの店では店員の方から「網代えますね!」と声をかけてくれた。しかも、何度も何度も。あまりそういう店に行ったことがなかったので、夫と二人で「わあ、優しい……」と感動した。網をこまめに代えてくれるのは、優しい。


某日

SNSで話題になっていたダイソーの商品が欲しくて、自転車で店舗に向かった。ダイソーのアプリで商品の在庫を検索できると最近学んだので、あらかじめ調べてみたところ、いつも行く店より少し遠い店には在庫があったので、そこまで赴いた。

店内を一周しても目当ての商品を見つけられなかったので、店員に聞いてみることにした。アプリの画面を見せると、それがありそうなリビングコーナーに案内された。しかし見当たらず、店員は、「うーん、ちょっと聞いてきますね」と裏に入って行った。ダイソー店員といえば「そこになければないですね」でお馴染みだが、アプリで在庫有りになっている以上、探さないわけにはいかないのであろう。

しばらく待っていると、さっきとは違うコーナーに案内され、「ここにあることになっているんですが……」と言う。しかし、ない。ないということは、つまり、ないのであろう。店員は「お待たせしたのに大変申し訳ございません」と深々頭を下げた。私は恐縮した。わざわざ来たわけだから残念といえば残念だが、何が何でも必要というほどの物ではないし、大体、100円で買って済まそうとしている時点で、そこまで本気度の高い買い物なわけがない。やはりダイソーの店員には、「そこになければないですね」の態度でいてもらった方がこちらも気が楽である。

せっかく来たので、洗濯ネットを数枚買って帰った。


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