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大雪

東京が大雪だ。

こんなとき雪国の人間は、東京の交通機関が麻痺するのを嘲笑ったり、頼まれてもいないのに雪道の歩き方のコツを伝授したりと、所謂「北から目線」を披露してひんしゅくを買う。

私は去年、北海道の豪雪地帯から東京に引っ越してきた。こうして1センチの積雪で大雪大雪とニュースになっているのを見ると、100センチの雪の中で生活していた人間としては、確かに何か言いたい気持ちになる。なるけれども、ああはなるまいと思って耐える。しかし、あえて最大限おちょくるとしたら、カシスオレンジを飲んで酔っ払う大学生を見ているような気持ち、とでも言おうか。うん、これはかなりひんしゅくを買いそう。

秋ごろ、関東出身の人に、東京の冬について聞いた。「雪は降っても積もらないんですよね?」と聞いたら、「それが、積もるときもあるの!」と言うので、「あ、そうなんだ!」と思ったのだが、さらに聞けば、「1センチくらい積もって、電車も何も動かなくなっちゃう。で、次の日には解ける」と言う。ハッとした。雪が積もるの概念が違う。私の中で「1センチ積もって次の日解ける」は「雪が積もる」にカウントしていなかった。

寒いのが苦手だし、ウィンタースポーツを嗜むタイプでもないので、雪は大嫌いだ。東京にきて、せいせいしている。こんなに快適な冬があるのかと感動したくらいだ。

東京に引っ越してきて、「あ!」と思ったことが多々ある。この「あ!」とは、「あ! あれって雪が積もるからなんだ」の「あ!」である。北海道の普通が、全国の普通ではないことに気づいた「あ!」である。

引っ越してすぐの頃、スーパーに行って驚いた。カート置き場が外にある。なんなら、商品が店の外に野晒しで並んでいたりする。これは北海道ではまずあり得ない。雪が積もる前提で店をレイアウトしなければならないからだ。北海道の建物の入り口は基本的に二重扉になっているので、一枚目の自動ドアと二枚目の自動ドアの間のスペースにカートが置かれていることが多い。

駅もそうだ。東京の駅というのは、地上にある場合、大抵出入り口にドアがない。屋根はあるが、改札を出たらもうそこは外。これにはまだ慣れない。非常に簡易的な印象を受ける。北海道ならほぼ確実にドアがあるので、もっと建物感が強い。

あと、お巡りさんが自転車でパトロールをしている。初めて見たとき、感動した。ドラマや漫画の世界に入り込んだような気持ちだった。北海道で自転車のお巡りさんはまず見たことがない。雪が積もったら自転車に乗れないから、移動手段として採用できないのだろう。

ほんの少しの積雪とはいえ、外が白い。それを見て、「あ!」と思う。ちょっとだけ、血が騒いでいる自分がいる。

久しぶりに見ると、悪くない景色だ。




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