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11月22日 焼うどん

2021/11/12

結婚式の前撮り用にネイルサロンで初めてジェルネイルをしたのが約4カ月前。それから何度か付け替えて楽しみ、結婚式も終わったので一旦お役御免。ジェルを外すためにネイルサロンに行った。

外すためだけに都会に出るのは面倒だったので、この田舎町唯一のネイルサロンに行ってみることにした。自宅サロンとのこと。きれいな一戸建ての敷地内に車を停め、玄関に向かう。すると何となく庭の方から視線を感じた。振り返って、思わず二度見。庭のウッドデッキに鷹がとまっている。鷹はじっとこちらを見たあと、興味を失ったようにフイと首を回した。いくら田舎とは言え、鷹が住宅の庭に、あんな風に落ち着いてとまっていることなどあるのだろうか。

疑問を抱きつつインターホンを押すと、エプロンをつけた若い女性が出てきた。部屋に案内される途中、廊下にインコやオウムの鳥かごが三つほど並んでいた。これはもしやと思い、「あの、外に鷹がいて……」と言ったら、「はい。今、日向ぼっこ中なんです〜」との返答。鷹飼いネイリストは根元の伸びたジェルネイルを丁寧に削って外し、表面を綺麗に磨き上げてくれた。帰りにまた庭の方に目をやると、鷹はどこか遠くを見ていた。すぐ横の物干しにはカラフルなプラスチックハンガーと洗濯バサミがかかっていて、鷹の凛々しい表情と生活感のコントラストがやけに面白かった。

夕食時。夫がほうれん草と油揚げの味噌汁を「この味噌汁、おいしい!」と目を輝かせて食べていた。まるで初めて食べたかのようなリアクションだったが、割とお馴染みの具材の味噌汁である。今後の参考にしようと、「いつもと違う?どの辺がおいしい?」と聞いたら、「ほうれん草と油揚げが入っていて、おいしい!」と言っていた。

2021/11/13

父方の祖父の一周忌のため、実家のある旭川へ。法要にも対応してくれるお寿司屋さん。やたらと目立つ城のような外観が特徴で、向かっているときに住宅街の中から天守閣が見えて笑ってしまった。あまりにも城。

お経の最中、一歳の甥っ子が後ろの方で号泣していた。なんだこの妙ちきりんなお歌は、Eテレではこんなものやってないぞ、という怒りであろうか。ギャンギャン泣き続ける甥。しかし途中から急に静かになり、「んあ!」とか「あひ!」とか上機嫌な声が聞こえてきたので、ちらっと後ろを振り返ると、義妹に抱かれた甥が、襖に描かれた松やら笹やらを指さして何やら盛り上がっている。真剣にお経を唱える僧侶、静かに聞かなければならない大人、襖に興味を示す幼児、という状況にやたらウケてしまい、声を殺して笑った。

祖母は元気そうだったが、椅子を片づけていた店員さんを私の母と間違えて「ねえ~」と気安く話しかけるなど、相変わらずのボケっぷりであった。ただこれは歳だからとかではなく、昔からこういう人なので、ある意味正常である。

夜、実家にてすき焼き。母以外、全員酔っ払う。弟が「側転を見せる!」と言い出しリビングのソファを端に寄せると、夫が「じゃあ俺はブレイクダンスする!」と言って頭を床に付け、その横を父がほふく前進で横切って行った。

2021/11/14


昼まで実家で爆睡し、午後から出発。帰る途中、ラーメン屋さんに寄る。「インスタフォローでトッピング無料」との張り紙。一瞬、悩む。というのも、私の中で一つ確信していることがあり、それはズバリ、「インスタのタイムラインの総カロリーと実際の摂取カロリーは比例する」という説である。おいしいものの写真を眺めていれば、食欲が増すのは当然であろう。などと言いつつ、結局は味玉につられてフォローしてしまった。すぐフォローを外せばいいのかもしれないが、たぶんそうはしないと思う。私はおいしそうな食べ物の写真が大好きなのだ。

夫が眠そうだったので、私が運転して帰ることにした。約二時間のドライブ。今年の夏、我が家に二台目の車がやってきて、私も車で移動することが多くなった。それまで好きでも嫌いでもなかった車の運転であるが、頻度が上がるにつれ、だんだん好きになってきた。特にラジオを聴きながら運転するのが好きだ。ラジオを聴きたいから運転する、みたいな順序になりつつある。

2021/11/15

目を覚ますと雨の音がした。うとうとしながらそれを聞いていると、そのうち窓がバチバチ鳴り始め、雹が降っているのだとわかった。ツイッターで「雹」と検索すると、「雹降ってる!」とか「雹が痛え」みたいなつぶやきがいくつか出てきた。ご近所さんだろうか。この周辺に住んでいる人がつぶやいているのだと思うと、つぶやきの向こうに生身の人間がいることを改めて実感する。

午後になって雨は止んだが、どんより曇っていて暗い。昼間とは思えない暗さだ。冬が来ているな、と思う。同じ曇りでも、夏とはやはり暗さが違う気がする。

2021/11/16

この町に引っ越してきてから、初めて歯医者に行った。隣町の歯医者だ。家のすぐ近くにも歯医者があるのだが、夫によると、その歯医者は歯医者としてのやる気に欠けているらしい。以前、親知らずが痛くなり診てもらったら「うちでは無理」と断られたとか。仕方なく隣町の歯医者に行き、他の医院で断られたと話したら、「うーん、そんなに難しい親知らずじゃないですよ」と言われたらしい。

そういうわけで私も夫と同じ隣町の歯科医院へ行くことにした。どこか痛いわけではなく、悪い所がないか検診してもらいたいのだ。というのも二年程前、何だか時々歯茎から血が出るなーと思って歯医者を受診したら歯周病と診断され、しかも結構悪化していたらしく、歯茎を切開して中を綺麗に掃除するというやたら大掛かりな治療を受ける羽目になったのである。またあんな大事になるのは御免なので、検診は定期的に受けたい。

到着してみると、かなり綺麗でオシャレな医院だった。カウンセリングのための部屋があり、そこで色々と話を聞いてもらったあと、ガラス張りの診察室へ。歯をチェックしてもらい、レントゲンや口の中の写真を撮った。「矯正してました? 歯並び凄く綺麗ですね!」と褒められた。矯正はしていない。していない割には、確かに綺麗な方かもしれない。

その褒めてくれた人、何でも自分で判断している感じだったし、質問にもかなり詳しく答えてくれていたので、てっきりこの人が先生なのだと思っていたら、「では先生呼んできますね~」と部屋から出て行った。歯科助手さんだった。今まで通っていた歯科医院では、先生が全てを取り仕切り、歯科助手さんは本当に助手という感じだったので、こういう風に歯科助手さんに色々任せている医院もあるのだなと妙な感動があった。歯科助手さんが生き生きしていて、いいな、と。

先生が部屋に入って来て、開口一番「レントゲン見ましたけど、めちゃくちゃ良い歯並びですね!矯正してました?」と言う。していないと答えると、「矯正してなくてこんなに綺麗な人、30人に1人いるかいないかですよ!」とまで言う。いや私、そんなに歯並び良いんだ。知らなかった。今まで通っていた歯医者さんよ、何で褒めてくれなかったんだ。褒めてよ。知らなかったよ。そしたら今までの人生、プロフィールの長所の欄に「歯並び」って書いたのに。

で、私の歯であるが、歯と歯茎の隙間が深くなっている、歯周ポケットになっている部分があり、次回からは麻酔をして歯石取りをします、とのこと。前回手術する羽目になってからは歯ブラシに加えてフロスと歯間ブラシも念入りにやっているというのに、重症でないとは言えまた悪いところが出てきて少々ショックを受ける。「歯周病になりやすいタイプかもしれませんね。でも手入れは綺麗にされてますし、歯茎が元々柔らかいので、治療すれば治りが早いタイプだと思いますよ」とのこと。その言葉を信じて、マメに歯医者に通いながら生きていくしかないようである。

2021/11/17

朝、異常に眠くて二度寝しそうだったが、昨日歯医者の帰りにおいしいパン屋さんでパンを買ったことを思い出し、何とか起きた。スマホのスヌーズより、おいしいパンの方が目覚ましとして有能である。

夫とテレビを見ていたらぺこぱが出ていて、二年前のM-1の話になり、夫が「M-1っていつも年末だっけ? もうすぐじゃん。楽しみだなー」と言った。私は感動した。夫は私と付き合い始める前まで、M-1やキングオブコントを毎年見るという概念を持たない人だった。そんな夫のM-1楽しみ発言。感動。好みを強要するのは良くないが、自分の好きなものを好きになってもらえるのは、本当に嬉しいことである。

2021/11/18

夜、夫が後輩と飲みに行くというので、送り迎えした。後輩は大柄でのそっとした朴訥な雰囲気の人なのだが、帰り際に「ありがとうございました。これお二人でどうぞ」と言って渡してくれたお菓子を家に帰って開けてみると、やたらファンシーな、花の形を模した派手目なお菓子で、本人のキャラと手土産のギャップに笑ってしまった。

2021/11/19

絵の教室に行くため、都会へ出る。4年ほど前から通っているが、上達しているのかはよくわからない。ただ、せっかく始めた趣味らしい趣味なので、田舎に引っ越してからも月に一回だけ通い続けている。一人一人に合わせて教えてくれる教室で、特に課題などはなく、好きなものを描いてよい。油絵を描くことが多いが、描きたいものが特に思いつかなかったので、ここ数回はデッサンの練習をしている。

場所は先生の自宅アトリエで、猫が二匹いる。私は猫アレルギーなのだが、マスクをして、短時間であれば問題ない。おそらく一生猫は飼えないだろうし、猫カフェなども厳しいだろうから、この教室は猫のいる空間に身を置ける貴重な機会である。猫は基本アトリエの外に出されているのだが、生徒が来ると気になるらしく、ニャーニャー鳴いて、ドアをガチャガチャやって、入って来る。机の上に飛び乗り、私の描いているブドウの匂いを嗅いで、先生に「だーめ」と怒られ、去って行く。面白くて、つい猫の動きを目で追ってしまう。デッサンに集中できない。

教室の後、せっかく都会に出たので服を見ることにした。数日前、20代前半からずっと好きで着ていたブランドが休止するとネットで知って、最後に何か買いたいなと思っていたのだ。ショップに入り、気になるものをいくつか試着した。普段はあまり店員さんと話したいタイプではないのだが、ブランド休止を惜しむ気持ちを共有したくなり、「ブランド休止しちゃうらしいですね」と話題を振った。すると「あ、はいそうなんですよー」とそんなに熱のこもっていないような返事。考えてみれば、かなり若そうな店員さんである。私がこのショップに初めて来たときと同じくらいの歳だろうか。そうなると、このブランドへの想い入れは客である私の方が強かったりするのかもしれない。ニットとシャツを購入。大切に着よう。

本日、ポケモンの新作ゲームの発売日。夫にとっては、一種の祭りである。祭りとなれば私も乗っかるしかない。持ち帰りピザと瓶ビールで一緒になって盛り上げる。

夫は最初の設定で、主人公の名前は自分の名前、ライバルの名前はカズヤにしていた。何でカズヤ?と聞くと、初めてポケモンをやった小学生の頃、一番仲が良かったのが同じマンションに住むカズヤという子で、ライバルの名前を夫はカズヤ、カズヤは夫の名前にしていたらしい。引っ越してしまい、カズヤが今どこで何をしているのかはもうわからないが、ポケモンの新作が出るたびにライバルの名前をカズヤにする習慣だけはずっとそのままになっているのだと言う。夫は普通の顔して話していたが、何だかめちゃくちゃいい話じゃないか。夫がいつか「あいつ今何してる?」に出演したら、番組にカズヤを探してもらって、カズヤも未だにライバルを夫の名前にしているかどうかを確認してもらいたい。

2021/11/21

夫が、「今日のお昼、スープカレー行く?」と言ってきた。これはとんでもないことである。私はルウカレーも好き、スープカレーも好きで、どちらも定期的に食べたいと思っているのだが、夫はスープカレーを食べるならルウカレーが食べたいし、何ならカレーよりラーメンが食べたい人なので、今まで一緒にいてランチを決める際にスープカレーという私の希望が通ることは滅多になかった。そんな夫が「スープカレー行く?」である。

なぜこのようなことになったのかというと、先日、マツコの知らない世界でスープカレーが特集されていたのである。その中で札幌のスープカレー界のレジェンドとして、木多郎というお店の店主がスタジオに登場し、マツコにスープカレーを作った。この木多郎というお店、札幌以外にもお店があり、その一つが我々の住む町の隣町にある。札幌に本店があって有名な店だからと何とか説得し一度だけ一緒に行ったことがあるのだが、その時はあまりピンと来ていない様子だった。仕方ない、これからは食べたくなったら一人で行こう。そう思っていた。

そんな木多郎に、夫が行きたいという。完全にマツコの影響。早速車を飛ばし、食べに行った。前回はピンと来ていない様子だった夫、今回は「おいしかった~!」と笑顔。木多郎のスープカレーには丸ごとのホールトマトと菜の花がデフォルトで入っているのだが、夫はトマトと菜の花が苦手で、それもあって前回評価が低かったようだ。しかし今回は「おいしかった~!」である。マツコが「トマトと一緒に食べると全然違う!トマト必要!」、「菜の花の苦みがいい!」と言っていたおかげだろうか。夫にとって、マツコの言葉は何よりのスパイスなのかもしれない。マツコさん、夫の苦手克服のために、絹さやとグリンピースにも何かコメントをお願いします。

2021/11/22

ゾロメなので、ゾロメ日記を更新しなければならない。慌てて書き始めるも、書き始めると結構書いてしまう質で、あっという間に夜になった。夕飯の支度を何もしておらず、夫がコンビニで何か買ってきてくれることになった。ゾロメのせいで雨の中コンビニに行く羽目になった夫が不憫である。更に夫はめちゃくちゃ優しいので、コンビニから電話をくれて、「丼物は親子丼、牛丼、中華丼、ビビンバ……。麺だったら、担々麺、味噌ラーメン、天ぷらそば……」という具合に置いてある商品を片っ端から教えてくれる。優し過ぎて泣けてくる。優しい人が焼うどんを買ってきてくれたおかげで書けたゾロメ日記がこちらです。ご査収ください。



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