8/31 誕生日の話

先日、無事25歳の誕生日を迎えた。
アラサーと呼ぶには少し若いけれど、20代後半になり、大人の落ち着きを……と思いながらも一応学生なのでかなり自由に生きさせてもらっている。

学生の誕生日といえば友達から盛大に祝ってもらったり、サプライズで火花が散ったケーキが出てきたり、アクセサリーを恋人からもらったり、その様子をInstagramにあげて感謝するようなアレが真っ先に思いつく。

文系大学に在学していた頃、私には5つ年上の彼氏がいた。
Twitterで知り合い、なんとなく飲みに行き、お互い長いこと恋人が居なかった事もあり、付き合うまでに時間はかからなかったような気がする。

相手はフリーターの夢追い人。学生だった私にはそれが何を意味するのかあまり深く考えておらず、バイトを終えたら終電で片道1時間かかる相手の家に通う生活を送っていた。
数ヶ月が過ぎた頃、流石にお前もこっちに来いよ、的な話をしたら、「自分の家じゃないと寝れないから無理」と。
脳内お花畑女子大生・長濱は「じゃあ仕方ないか〜」と納得してしまった。
今思えば電車賃がかかるからだろう。金を払ってまで会いたい女では無かったのだ。
結局、同棲前に私の一人暮らしの部屋に来たことは2回しか無かった。

話を戻す。
文系大学時代、陰キャの私には誕生日をサプライズで祝ってくれる友達はいなかった。
なんとか陽キャになろうと入ったサークルで一度祝われたことはあるが、それは同じ誕生日の陽キャの為のサプライズのおまけだった。もちろんそれでも嬉しかったくらいに友達がいなかった。

そして、年上の彼と付き合って初めての誕生日。
サプライズなんてする柄じゃない人で、贅沢ができないことも知っている。
でも一体何をしてくれるんだろう?とワクワクしていた。
「おめでとう、はいプレゼント」
そう言って渡してきたのは手のひらサイズの小袋。

指輪か?ネックレスか?
期待に胸を膨らませて開けてみると、
出てきたのは本の栞だった。

確かに私は本を読む。文学部だからめちゃめちゃ読む。
だからだろう、この栞をくれたのは。
猫が本の上で寝ているデザインの栞だった。

「嬉しいでしょ?可愛いでしょ?高かったんだよ」

残念だが、私はこの栞を書店で見たことがある。
栞やブックカバーのデザインが気になって手に取ることがよくあるからだ。
だからこの栞が1000円だと言うことを知っていた。

「栞持ってないから嬉しい、ありがとう」

笑顔で伝えた。

当時、お花畑女子大生の長濱は、素直に喜んでいた。
本が好きで栞を持っていない私を見ていてくれたんだ!
物の価値は値段じゃない!彼がこれを私に買ってくれた!

ここまで来ると純粋を通り越して惨めである。
何故なら私はこの時必死にInstagramに載っている同級生たちの投稿への羨望を無視していたから。

私だって火花の散ったケーキをどこかの知らないレストランでサプライズで持ってきてもらった後、彼氏からアクセサリーやブランド物のお財布が欲しかった。
でもそれは男を財布としてしか見ていない卑しい女がすることだ、私はそんな女にはならない!

今思えばなんたる偏見と嫉妬だろう。
醜いことこの上ない。
それでも当時の私は栞を貰ったことを数少ない友達に報告するくらい、十分幸せだった。

私は女子大に通っていたのだが、同じ講義を受けている友人がマイケルコースの鞄を買ったと見せてくれた。
MKというロゴを「ミキハウス?」と読んで笑われた。

可愛い鞄に胸を打たれ、早速百貨店に足を運ぶ。
マイケルコースやケイトスペードが並ぶ中で、シンプルだけど高級感のあるFURLAというブランドを見つけた。
確か2〜3万円くらいだったと思う。
もちろん苦学生の私には買えない。
アウトレットでバイト代を貯めて買ったcoachの財布を何年も使い続けている女だ。
これをプレゼントで貰ったらどんなに嬉しいだろう。
でもそんな事を考えたって彼氏がくれるはずがない。
私は一生、こういう物を男性からプレゼントされずに終わっていくんだろうな、と本気で思って店を出た。

それから月日が経ち、22歳の時に何故かピアノを弾く時用の椅子をプレゼントしてきたフリーター彼氏とは別れ、今は別の人とお付き合いしている。

そして迎えた25歳の誕生日。

22歳の私よ。
贅沢は敵だとか、戦時中みたいなことを言って、ブランド品が目に入らないようにしていたよな。
4℃が好きで就職祝いに祖母から指輪を買ってもらっていたけど、本当は彼氏から貰いたかったんだよな。
それでも指輪が欲しいとせがんでようやく貰った指輪が中古のメリケンサックみたいなvivieneだったよな。メルカリで高く売れそうだよな。

大丈夫だ。素直に欲しい物を口に出せて、それを嫌な顔一つせずプレゼントしてくれる人に出会える。
私の人生はつまらないまま終わるなんて肩を落とすなよ。
椎名林檎も言っていたよな。人生は夢だらけだぞ。


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