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Sufjan Stevens / A Sun Came ! (1999)

現代のアメリカを代表するシンガー・ソングライター、スフィアン・スティーヴンスのファースト・アルバム。

未完成な楽曲が雑多に集められた前19曲(ボーナス・トラック2曲)は、粗削りでとりとめのなさもあるが、ときに珠玉のメロディが奏でられ、詞も(日本語訳がないので細かくは聞き取れないが)ストーリーテリングの要素が強い印象で、スフィアンのソングライティングの出発点を刻んでいる。

伝統的な音楽だけでなく、ベックやピクシーズ風のUSオルタナ・サウンドや枯れた質感のフォーク・ソング、エスニックなリズム感、エレクトロ・ミュージックへの目配せなども含み、その後の音楽性を予感させる、スケッチ・ブックのようなデビュー作。





何やかや理由を付けて仕事を休んだ平日のよく晴れた朝。
いつもと同じ時間に起き、でもいつもより頭痛はなく、すんなり動き出せる現金なやつ。
社会性とか責任感が失われつつある昨今の僕の心象風景には、破れかぶれの逃げの姿勢が滲む。
助けを求めて、同時に淵に安住して、そうやって時をやり過ごしている。”それ以外”の時を求めて。
反復するリズムに酔ってしまったのかもね。あれから10年。
どうでもいいことばかり口を突いて出るのに、大事なことは何一つ言い出せず。
ごちゃごちゃになった脳内から取り出す言葉はいつだって、ポケットの中のイヤホンよろしく絡まり合い。
無価値の中にどうにか価値を見出そうと躍起になって、急に飽きが来て、そして冬が来る。
頭を空っぽにしても、埋めたい予定が流れ込む。夜汽車に乗って、見果てぬ場所まで寝過ごしたい。
もうこれ以上先へは進めない。でも誰も掛け声をくれない。
内なる声に耳を澄ませてみれば、空腹の音が哀しく響く。
コーヒーとウイスキーを流し込んだ胃は、真っ当な日常に晒されるときりきり痛み、帰路にはすっかり元通り。
サイケデリックになっちまった脳味噌をお玉に掬ってゆっくりお湯に溶かして、わかめでも浮かべて食べようっと。
生きている実感にはかつてなく敏感になっていることが数少ない救い。

なんそれ。

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