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Marvin Gaye / What's Going On (1971)

2020年に大刷新された「ローリング・ストーン誌が選ぶロックの名盤500選」で、現代を取り巻く状況も踏まえて見事1位に”昇格”した、マーヴィン・ゲイの永遠の名盤。

史上最高のソウル・アルバムとも称される本作は、60年代の活動において名デュエットを成していた”ソウル・メイト”のタミー・テレルの早逝による計り知れない悲しみと喪失、加えて自らの音楽性への疑問と不信からしばらく音楽から遠ざかっていたマーヴィン・ゲイが、ベトナム戦争からの帰還兵である弟から聞いた戦争の惨状をきっかけに書き上げた、ソウルの超名曲であるタイトル・トラックで幕を開ける。

モータウンの反対を押し切り、当時画期的だったセルフ・プロデュースでレコーディングされた本作には、マーヴィンの哲学的な思索が深く刻み込まれ、愛と融和を唱えたメッセージを根底に、戦争、暴力、差別、貧困、宗教、環境問題(彼がいち早く取り上げたといえる)に言及。
当時の大衆性と社会性を帯びると同時に、現代においても普遍的な価値を内包している。

ソウルフルでジャジーでスムースでセクシーでグルーヴィーなサウンドに、名ベーシストのジェームス・ジェマーソン(こちらも2020年RS誌の「史上最高のベーシスト50選」で1位に)らを擁する盤石の演奏、歳月を超越する極上のメロディ、そして慈悲深く艶やかな至高のヴォーカル。
切れ間なく連なるA面6曲は溜め息が漏れるほど美しいし、歴代最高レベルの名曲3曲(前述の①、超ポップでジェントルで妖艶な⑥、異様なまでにモダンな仕上がりの⑨)を核としたコンセプチュアルな構成と、全編を通じて貫かれる緊張感とサウンドのクオリティの高さとポップ・ミュージックとしての心地良さたるや、圧巻の一言。

名盤が持つ全ての要素を備えたこの不朽の名作で彼が投げかけた問いは、半世紀以上経った現代においても鋭く生々しく真に迫り、芯を喰う。





マーヴィン・ゲイ自身の人生の転換期と、完璧なまでに充実した音楽性と、時代の必然性と、時代を超えた普遍性とが奇跡的に交差した地点に置かれている、いくら褒めても足りないぐらいに物凄いアルバム。
いつ聴いても圧倒されてしまう。

マーヴィンは今からちょうど40年前の自身の誕生日前日、実父に自分がプレゼントした銃で撃たれ、45歳直前でこの世を去った。

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