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blur / Parklife (1994)

ブラーの最高傑作にして、ブリットポップの金字塔というべき名盤となったサード・アルバム。本作で初の全英チャート1位を獲得。

前作で志向した”英国回帰路線”をさらに強力に押し進め、古のミュージック・ホールから60年代以降のブリティッシュ・ロック、70年代のパンク、ニュー・ウェイヴ、そして80年代エレクトロ・ポップまで取り込んだ上で、ブラーらしく知性的でウィットに富み、滑稽でどこか哀愁の漂う詩情と、捻くれながらもどこを取ってもキャッチーなメロディ、ギター・ポップの弾けるリズム感により、英国ロックの真髄を捉え、”英国らしさ”を凝縮させた、90年代を代表する音楽作品となった。

デーモン・アルバーンのソングライターとしての腕前もさらに向上し、レイ・デイヴィスからポール・ウェラー、モリッシー、アンディ・パートリッジら英国の歴代の卓越したソングライターそれぞれの要素をしっかりと引き継いだ上で、「アメリカのグランジ・ブームに対するカウンターとしての英国らしさ」という時代性を反映し、ブラー4人だけの独自性をも発揮している。

英国の市井の人々の暮らしを諧謔を交えながら具体的に綴ったショート・ストーリー(ロンドンをはじめとした地名が満載)を全編に渡ってポップなメロディで歌う本作には、脈々と受け継がれてきたブリティッシュ・ロックの伝統と、現在にまで通じるポピュラー・ミュージックとしての普遍性が宿っている。



ブラーの名作にして、ブリットポップを象徴する名盤「パークライフ」から30年。
キンクスの諸作と同じように日曜の昼下がりにぴったりな、開放感と憂鬱と享楽と諦念とが混じり合う、庶民のためのポピュラー・ミュージックとして最高級のアルバム。

彼らのベスト・アルバムにも収録されるような代表曲以外も、英国らしくブラーらしいポップ・ソングが勢揃い(個人的には"Badhead"や"Clover Over Dover"あたりが地味ながら好み)で、ブリティッシュ・ロック/ポップを彩ってきた多種多様なジャンルを網羅した上で、どれもキャッチーなポップ・ソングとして修練されているというのが驚異的。
"Girls & Boys"を皮切りにポップな曲を矢継ぎ早に繰り出した挙句、"This Is A Low"の壮大なクライマックスへと向かい、最後のささやかなエンドロール的な終幕まで見事な構成。

ブリットポップという狂騒の真っ只中のアルバムだけに、ブームの中にその価値が埋もれがちだが、1枚のポップ・アルバムとして非常に優れたレコードであることに疑いの余地はない。

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