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Leonard Cohen / Songs of Leonard Cohen (1967)

カナダが誇る詩人/小説家/シンガー・ソングライター、レナード・コーエンのデビュー・アルバム。当時彼は33歳。すでに文学の世界では詩集や小説により名声を上げていたが、稼ぐためにシンガー・ソングライターを目指し(60年代的!)ニューヨークに移り住んだ後に、ボブ・ディランをプロデュースしたジョン・ハモンドに見出され、33歳にしてレコード・デビューを果たす。

詩人だけに詞が先行であるが、詩的で示唆に富んだ言葉だけでなく、アコースティック・フォークの弾き語りスタイルは心地良く味わい深い。朴訥としながらもシリアスでストイックなトーンで貫かれた本作は彼の音楽性のまさしく原点であり、同時に彼の音楽表現のあり方を端的に表している。

ヴェトナム戦争による社会の疲弊や虚無感、サマー・オブ・ラヴの祝祭と狂騒の中、人間の内面を真摯に見つめ、それを繊細に綴った本作は、1作目ながら多くのカヴァーが生まれていることからもわかるように、時流には乗らずとも、普遍を掴んでいた。



今から55年前の年の瀬にリリースされたレコード。
年末になるとレナード・コーエンの厳かな声が聴きたくなる。
宗教や性愛や死などのテーマを通じて、人間の本質を射抜くような彼の音楽/文学的表現は、この頃から屹立していて、気づけば慈悲深さを帯びている。

今の僕は当時の彼と同じ年齢。だからどうしたって話だけど。
来年最初の1冊は「大いなる眠り」にしようと思っている。
フィリップ・マーロウが33歳の設定だから。だから何って話だけど。

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