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NFT活用事例シリーズ(2)旧山古志村「Nishikigoi NFT」

NFTはさまざまな方々に、さまざまな場所で、さまざまな形で、活用されています。その幅広い活用方法の一端を「NFTの活用事例シリーズ」として紹介していきます。第2回は、旧山古志村における「Nishikigoi NFT」の事例です。


世界でも例を見ない、日本で独自に発展したNFTの活用方法「NFT × 地方創生」

NFTは世界のいろいろなところで、いろいろな形で使われています。一方で、日本以外ではなかなか見ることのない、日本で独自に進化したNFTの使われ方があります。それが、「NFT×地方創生(地方創生のためのNFT活用)」です。

この地方創生のNFT活用事例として、おそらく世界で一番有名なものが、今回取り上げる「旧山古志村におけるNishikigoi NFTとデジタル村民」プロジェクトです。

NFTを活用し地方創生を目指す

人口減少による「山古志地域存続の危機」という切羽詰まった問題

新潟県長岡市にある山古志地域(旧山古志村)は、2004年の新潟中越地震により大きな被害を受けました。それから15年以上の歳月の中で、震災被害からの復興は果たしましたが、元々、山間部で世界有数の豪雪地帯でもあり、中越地震以降は保育園の閉鎖や診療所機能の縮小、公共交通の撤退など集落維持機能自体が低下し、呼応するかのように急速に人口が減っていきました。その結果、震災前には約2,200人いた地域住民は、半数以下の約800人にまで激減し、さらに、住民の2人に1人は65歳以上の高齢者(限界集落)となり、地域は存続の危機に陥っていました。

この危機に対し、住民は「山古志住民会議」 を組織し、ツーリズム事業はもちろん、移住やサテライトオフィスの誘致、インバウンドや情報発信などおよそ考えうる限りのことに取り組んできましたが、人口減少という課題を食い止める結果にはつながりませんでした。

山古志地域は人口減少により存続の危機に

「Nishikigoi NFT」の挑戦

そんな状況の中、2021年12月に新たなチャレンジとして取り組んだのが、旧山古志村が発祥である「錦鯉」をシンボルにしたNFT「Nishikigoi NFT」の発行です。このNFTは、デジタルアートという側面に加え、同時に山古志地域独自の「電子住民票」の意味合いも兼ねており、移住や定住という枠にとらわれない、国内からでも、海外からでも、どこからでも接点が持てる新しい「デジタル関係人口」を生み出しました。

旧山古志村が発祥である「錦鯉」をシンボルに

NFTを活用した「デジタルアート × 電子住民票」

山古志住民会議では、NFTを活用した「デジタルアート×電子住民票」により、当初、3つのことを目指しました。

1.NFTを接点とした新たな共同体の形成ができないか

2.上記により、世界中から知恵や資源を集められないか

3.上記により、独自の資金調達ができないか

結果、このチャレンジは成功し、初期目標の大半を実現しました。具体的な動きを見ていきましょう。

山古志住民会議での話し合いと決定を基に、2021年12月に山古志発祥の錦鯉をシンボルにした「Nishikigoi NFT」を発行しました。山古志住民会議が当初想定した「Nishikigoi NFT」の機能は、「コミュニティーへのアクセス権」「投票権としてのガバナンストークン」「【アート+機能性】としてのデジタル資産」「プロフィール画像などへの利用によるアイデンティティへの活用」の4点。結果から見ると狙いは外れてはいませんでした。

第一弾セール、第二弾セール、第三弾セールを終え、NFT発行総数約3000、デジタル村民(NFTホルダー)の数は1600人を超え、現実の山古志村民数約800人を超える新しい関係人口を生み出しました。購入者は国内在住者が中心ですが、一方で、欧米や中華圏など幅広い地域からの参加もありました。初期売上は41.4ETH、セカンダリーを加えた総取引量は82ETHになり、継続的にコミュニティーを運営していくための重要な資金になっています。

デジタルアート×電子住民票を想定したNFT

Nishikigoi NFTをガバナンストークンとして活用した「山古志デジタル村民総選挙」

2022年2月には、 Nishikigoi NFTをガバナンストークンとして利用した「山古志デジタル村民総選挙」を開催。山古志活性化に寄与するアイデアを公募し、山古志住民とデジタル村民による投票 により実施プロジェクトを選定しました。第一弾売り上げの3割(約3ETH)をコミュニティー予算として拠出し、当選した4つのプランを具体的なプロジェクトとして進行しています。

山古志デジタル村民総選挙

メタバースに、旧山古志村を再現した「仮想山古志村」

山古志の動きは「仮想山古志村」としてメタバースにも広がっています。「仮想山古志村」には、美しい棚田や風に揺らめく水面があり、虫の声や風の音も聞こえてきて、古き良き日本の原風景が懐かしさを感じさせてくれます。同時に、空には特産のニシキゴイが泳いでいて、懐かしさだけではない、バーチャル空間ならではの味付けもされています。分身の「アバター」により、仮想山古志村内を歩いたり、チャットを通じて参加者どうしで交流したりできるほか、仮想山古志村内で現実世界のイベントを見ることもできます。2022年10月に現地で開かれた新潟県中越地震追悼式典の様子も仮想山古志村で中継されました。この追悼式典にはデジタル村民が実際に手伝いに出向いたり、この「仮想山古志村」自体もデジタル村民の手で作られていたりなど、さまざまな形で活発な交流につながっています。

将来的には、「仮想山古志村」内に、「牛の角突き」と呼ばれる伝統行事が行われる闘牛場や野菜の販売所など、山古志全体を再現することを計画中。遠くにいても山古志を感じ、オンラインで特産品を買える環境を目指しています。

メタバースも活用

「デジタル村民」のリアルな「帰省」も活発に

コロナの落ち着きと共に、「デジタル村民のリアルな帰省」も増えつつあります。デジタル村民の多くは、元々、山古志地域とは接点のなかった人たちですが、Discordやメタバースを通じた山古志とのやり取りを通して現地の方と密な関係を築いているので、その後、初めて山古志を訪れた時には、「実家に帰ってきたような感覚」を覚え、自然と「ただいま」という言葉を発してしまう人が少なくありません。最近では、「帰省ラッシュ」という言葉が使われるほどの訪問と交流が生まれています。

デジタル村民がリアル帰省に繋がる

NFTというテクノロジーが山古志を変えた。しかし、山古志の挑戦はまだまだ続く

今、人口減少に悩む多くの自治体にとって、関係人口を増やすことは目の前の課題になっています。その中で、山古志はNFTを活用し、現実の住民数を上回る、1,000人以上の関係人口を生み出しました。同時に、山古志の人々とデジタル村民のコミュニティーを運営していくための資金も生み出しました。国内外問わず多くのメディアからも取り上げられ、成功事例として高い評価も手に入れています。

しかし、山古志の人々は現状に満足することなく、山古志存続の基盤をさらに固めていくと共に、他の地域でのローカル課題の解決のためにこの「山古志モデル」を使えないかを模索し始めています。

山古志は立ち止まることなく走り続けています。「 NFT×地方創生」という新しい挑戦から、私たちはまだまだ目を離せそうにありません。

限界集落を救ったNFT



NFTの生成に特化したWebプラットフォーム『NFT Garden』

当ブログは、マルチチェーンNFT生成プラットフォーム『NFT Garden』を開発・運営するConnectiv株式会社が運営しています。

NFT Gardenは強力なNFT APIを提供し、polygonやSolanaを含むさまざまなブロックチェーンでNFTの生成や参照、転送などが可能です。これにより、「ゲームやメタバースで使われるアイテムのNFT化」や、「プロモーションを目的としたNFT配布画面の構築」「DAOやコミュニティ組成を目的としたNFTの大量生成」など、様々なユースケースでご利用いただけます。

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