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病めるときも



少し前、父の手術があった。

健康診断を受けた時、心電図に異常があったから、すぐに病院で検査をしろということになったらしい。

父が大げさだと思いながらも渋々検査に向かった頃には、すでに緩やかな心筋梗塞を起こしている状態だった。



父は大変なヘビースモーカーで、冠動脈の詰まりはほぼ喫煙のせいであるとされた。

検査の後即入院、1日も早く手術しなければ危ういとの判断で、あれよあれよという間に手術日程が決められ、心臓病専門の病院へ転院した。



手術は成功した。

しかし術後の方がやはり痛みに苦しむとのことなので、今頃きっとつらいに違いない。


去年、母も脳の病気で入院し、手術をしたばかりだった。

あの時は、術後の1番ダメージを受けて疲れ果ていた状態の母を、父と私でぼうっと立ったまま黙って眺めていた。


やつれた母の姿を見て少し面食らっているような、そんな父を見た。




今度はまさか自分が、と今は思っているのだろうか。

退院したらきっと、煙草はおろかお酒も飲ませてもらえないだろう。

食事に関しては、今父が毎日向き合っているであろう、大嫌いな薄味どころか無味のご飯(病院の人すいません)から解放されるから良い。

でも父にとって、煙草とお酒を手放すのはとてもとても苦労、というか苦痛を伴うだろう。


私だって酒をやめろと言われるとつらい。

それに私と父はお酒で繋がっている(勿論それだけではないけど笑)ような所もあるから、そうなると寂しい。

父もきっとそう思う。




私は例のごとくまた、ただ眺めている。

この心配とか、労りとか、不安とか、慰めなんかの気持ちを形にすることもできずに、なんとなく電話したり、LINEしたりして、あとは何もできずにいる。

できることなんてない。
今は感染対策が厳しいから会いに行くこともできない。

祈ることしかないのだ。



そういうことをゴロゴロと、思っていると、

なんと、

コロナに感染した。(笑)



父の手術日の翌日、早朝5時半に目覚めると39度近い熱があり、喉もカサカサして痛い。

まさか...と思いながら、とにかく、と車に乗り込み、熱で朦朧としながら走った。



陽性結果を聞いても何も驚かなかった。

たしかにまさかとは思ったし、感染経路に心当たりはゼロだけど、何か当然のような、腑に落ちる感覚がした。


仕事にしばらく行かない連絡を済ませ、ベッドに潜り、鼻の付け根あたりに感じる熱っぽさを味わいながら思った。



これは父の痛みをちょっぴり共有しているのかな、と。



そうだといい。
父の抱える重さとは全然違うけれど、少しだけでも分け合って、一緒に苦しんであげたかったのかもしれない。

そういうことにしたい。


なので、私も禁酒をしている。一緒に闘病中。


夏の終わりに今、ひとりぼっちだけど、全然平気だし、悪くない。



父が帰るまでには、私も完治しなくてはいけない。

父も私も、初の孫/甥の誕生が差し迫っているのだから...


健康は何よりも大事だな。
それを噛み締める10日間です。

今夜のBGM。お酒はないので、麦茶と共に。

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