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【NJRPG/シナリオ】トラップ・オブ・コルネリウス

0:初めに

このシナリオは「ニンジャスレイヤーRPG」に対応した、2~4人のプレイヤーおよび経験の浅いキャラクター向けのシンプルなシナリオである。プレイヤーキャラクターはソウカイニンジャであることを想定しているが、ヨロシサンやオムラと契約する企業ニンジャ、親ソウカイヤのフリーランサーをチームに加えても構わない。
 真正面からカラテで競り合うのではなく、組み込まれたギミックに対処しながら戦うという構成になっているため、プレイグループの趣味嗜好によってはニンジャマスターから事前にその旨を伝えておこう。

0-1:ニンジャマスター情報
「トラップ・オブ・コルネリウス」は主に2回の戦闘を想定している。特にボスキャラクターであるコルネリウスとの戦闘はイベント的要素が強く、描写にも影響を及ぼす特殊なギミックが用いられる。コルネリウスは虹色の特殊なカラーパターンを媒介して、光学合成あるいは錯視めいた仕組みで視覚情報に介入するゲン・ジツの使い手なのだ。
 ボス戦はこのシナリオの数少ない佳局なので、NMはギミックを印象づけるため、色を含む場面描写をほんの少し多めに行うことが望ましい。

◇シナリオ本文中に登場する略称
NM:ニンジャマスター、PL:プレイヤー、PC:プレイヤーキャラクター
◆変更履歴◆
20190203:ジツ関連の補足を加筆。ゲン・ジツ(迷)の効果内容を整理。その他細微な変更や加筆。
20190127:マップデータを追加。

0-2:ギミックの補足
シナリオ中に登場する「ゲン・ジツ(虹)」は、技巧を凝らした様々な独創的手法で用いられる。その仕組みは少々ややこしいので、NMは描写にあたって事前に下記のポイントは押さえておこう。

◇ゲン・ジツ(虹)を構成する2要素
1:密かにジツの影響下に置く:特別な虹色のパターンで塗りつぶされた空間を移動する相手に、催眠術のような原理でゲン・ジツを掛ける。
2:視覚情報の偽装:TVの光学合成のように、ジツを掛けた対象の目に映る虹色を他の三次元的な映像(視覚情報)で上書きしてしまう。

なお、より詳しい設定や解釈は次の記事で取り扱っている。一部の内容は整理して本シナリオの各シーンにも挿入されているが、説明に不足を感じたときはこちらも参照するとよいだろう。

補足と備忘録:コルネリウスの罠


1:導入

(これまでのあらすじ:ディセンション現象の急激な増加に対応すべく、シックスゲイツはアンダーニンジャをチーム編成し危険任務に割り当てる試験的システムを導入。カラテの不足を補わせ、増加する敵対ニンジャに対する生存力・対応力の向上を図っていた)
(幸運だったのは、システムに組み込まれた新進気鋭のニュービーたち。彼らは偶然、他より注目される立場でそのカラテを示す機会を手に入れたのだ!ただし、それも死地を潜り抜けられたらの話)
地の文「BRATATATATATATA!!オムラ・マシンガンがマズルフラッシュで周囲を鮮やかに照らし出し、くすんだ赤基調の内装を無残に破壊する!未報告のシノギの取引現場にエントリーした君たちは、この寂れた中華飯店において想定外のヤクザ戦力に集中砲火を受けていた。」

このシナリオは突然上記のような激しい戦闘シーンから物語が始まる。NMは今回の任務について次の情報を単にPLに渡しても構わないし、回想シーンを挿入してダンゴウを行ってもよい。

・ソウカイヤ系の弱小クラン、ハシバミ・ヤクザクランが未認可の大トロ粉末取引を行っている疑いがある。
・ハシバミ・ヤクザクランは巧妙に取引を隠匿しており、販売ルートに協力者がいる可能性が高い。
・クランの事務所には”思い知らせて”やるため、すでに別のニンジャが派遣されている。
・与えられた任務は、協力者についてインタビューし、必要ならその存在に対処すること。
・その場のヤクザは見せしめに皆殺しにすること。

情報をもとに中華飯店へ踏み入ったPCは、報告されていない大トロ粉末取引の現場に遭遇する。一見してヤクザはウキヨエを購入しているようであったが、ニンジャ洞察力はその額縁に隠された大トロ粉末を見逃さなかった!彼らは絵画取引に偽装してビズの上納金を誤魔化していたのである。

2:中華飯店でのイクサ

ことが露見すると同時に、客になりすましフライドライスを咀嚼していたクローンヤクザ軍団が、チャカ・ガンを引き抜いてソウカイニンジャたちに襲いかかってくる!!『『『ザッケンナコラーーーーッ!』』』』

◆メインホールのNPC
C1:クローンヤクザY-10型×8(チャカ・ガン装備)
Y1:リアルヤクザ×2 (ハシバミ・ヤクザクラン/オムラ・マシンガン装備)
Y2:カバノキ(ハシバミ・ヤクザクラン/トロ粉末取引のエージェント)
B1:トロ粉末ブローカー
◆クローンヤクザY-10型 (種別:モータル/バイオ生物/ヤクザ)	
カラテ		1	体力		1
ニューロン    	1	精神力		1
ワザマエ		3	脚力		2
ジツ		ー	万札		0		
◆装備や特記事項
 チャカ・ガン:遠隔武器、ダメージ1

◆リアルヤクザ (種別:モータル/ヤクザ)	
カラテ		2	体力        1
ニューロン    	2	精神力		2
ワザマエ		3	脚力		2
ジツ		ー	万札		1	
◆装備や特記事項
 オムラ・マシンガン:遠隔武器、連射3、ダメージ1

黄色いマスが初期配置エリア灰色のマスはテーブルなど射撃を阻害しない障害物=の開口部は通常の扉水色の箇所は窓を現している。店の外部へは、初期エリアに隣接する扉か任意の窓から脱出できる。

※この戦闘はあまり重要ではなく、厄介なボス戦のストレスを緩和する前座となることが想定されている。NMは人数や装備を自由に変更して、PCたちが楽に殺戮を行えるよう調整しよう。

カバノキとトロ粉末ブローカーは戦闘に参加せず、逃走を試みる。必要であれば、リアルヤクザと同じ能力値を適用してチャカ・ガンを装備させる。PLがスリケンによる足止めを提案するなら、体力が0になると行動不能になるものとして扱おう。

地の文「ニンジャの暴力が吹き荒れ、赤と緑の鮮血が店内をまだらに染め上げる!」

2-1:インタビュー
カバノキの生け捕りに成功すれば、ビズについてインタビューできる。少し痛めつけてやれば、彼は事実を認めて言い訳混じりに情報を吐き出す。

ハシバミ・ヤクザクランは予想以上の長期間に渡って上納金を誤魔化していた。金持ち向けのウキヨエ画廊を仲介ブローカーとして、大トロ粉末入りのウキヨエを売り捌いていたのだ。カバノキは話を持ちかけてきたのは画廊側だと弁明しながらも、オーナーである「ウタカワ」は油断ならない人物だと話す。彼は知っていてあえて言及しないが、ウタカワはニンジャである。

カバノキを殺してしまった、あるいは逃げられてしまった場合、死体のポケットや逃げ去ったあとに「ウタカワの名刺」が手がかりとして残される。

2-2:額縁
カバノキは現場からウキヨエ絵画を持って逃走する。持ち逃げされなければ、戦闘終了時点で額縁から人数分の「トロ粉末」が入手できたものとして扱う。これはボス戦で役に立つアイテムなので、優しいNMは他にも入手する手段を用意しておいても構わない。

2-3:ウキヨエ画廊について調べる
ソウカイネットなどを利用して調査を行うと、件のウキヨエ画廊はカネモチ・ディストリクトの一角に立地していることが分かる。画廊は実際繁盛しているようだ。オーナーのウタカワはウキヨエ師およびそのディーラーとして一定の名声を有しているらしい。ただしウタカワやその画廊にヤクザとの接点は見当たらず、ソウカイヤもこれまで特別マークはしていなかった。

3:ウキヨエ画廊

地の文「数時間後!ここはカネモチ・ディストリクトの一角。若干の居心地悪さを感じながら大型エレベーターを降りた君たちは、とあるビルの1フロア全体を貸し切った、ウタカワのウキヨエ画廊の入り口に立っていた。白基調のゼンめいた空間には草花やラッコをモチーフにしたウキヨエが飾られ、装飾的な両開き戸が訪問客を待ち受けていた」

描写はされないが、以降どの部屋にも天井に特殊なスピーカーと小さな監視カメラが備わっている。また、このエレベーターホールを除き、記載がない限りはどの部屋にも窓が存在しない。

①エレベーターホール、②虹色の通路、③画廊のエントランス
④トイレ、⑤応接室、⑥ギャラリー、⑦裏方の作業スペース
⑧倉庫、⑨アトリエ、⑩秘密の執務室、⑪隠し通路

C1は透明クローンヤクザのスポーンポイントオレンジ色の箇所は秘密のドンデンガエシの位置を示している。宝箱マークはトレジャーを、「!」マークが付いている場合は施錠されていることを示す。

3-1:虹色の通路

地の文「扉を押し開けた先には、簡易的なギャラリーを設けた通路が待ち構えていた。飾られるウキヨエは、地獄から這い上がろうとする亡者の集合体からなるブッダデーモン、下から上に流れる水など独創的なものばかりだ。
しかしそれ以上に君たちの目を引くのは、床から天井まであらゆる面が一連の毒々しい虹色のパターンで塗りつぶされた通路そのものだった。ウキヨエがなければ、壁と床の境目すら見失っていたかもしれない」

この通路はコルネリウスがゲン・ジツを掛けるための仕掛けとして機能している。ウキヨエ以外のあらゆるものが虹色に塗りつぶされた虹色閉鎖空間を移動するうちに、PCは何の判定も無しに恐るべきゲン・ジツの影響下に置かれてしまう。
 NMはジツの影響を受けていることを伝える必要はないが『たいした距離は無いはずが、随分と移動させられたような気分になった』『あまりに趣味の悪い光景に、めまいを覚える』など、虹色のカラーパターンにキャラクターが何らかの異常を感じているような描写を行っておくとよいだろう。

上記はPL向けのマップ。隠し部屋などの存在は伏せておこう。

4:受付

虹色の通路の突き当り、虹色の扉を開けた先は、画廊のエントランスに繋がっている。幸いにも、この空間は再び白基調のゼンめいたデザインで構成されている。受付カウンターとその上に置かれたUNIX端末、壁に飾られたウキヨエ以外には特に目立つものはない。


 この場所では黒いセルフレームの眼鏡をかけた秘書が受付として応対する。選択肢は彼女を無視して奥へと進むか、訪問客として奥ゆかしく訪ねるかの2択だ。後者の場合、商談の約束を取り付けていないことを理由に入館を断られかけるが、最終的にはウタカワの指示により迎え入れられる。

4-1:欺瞞!
NMはキャラクターたちが既にゲン・ジツの術中に嵌っていることを忘れてはならない。受付以降、どの場所も普通の部屋であるかのように描写されるが、実際には全てが虹色のカラーパターンで塗りつぶされている。PCたち(そして秘書)はゲン・ジツの影響により偽装された風景を目にしているのだ。コワイ!

(なんと恐るべきフーリンカザンか!あわれソウカイニンジャたちは、そうとも知らず、敵対ニンジャが綿密に作り上げたキリングフィールドに足を踏み入れてしまっていたのだ)

5:応接室/ウタカワの行動方針

仮にもソウカイニンジャたちが(比較的)奥ゆかしく振る舞ったなら、秘書は彼らをエントランスから繋がる応接室へと案内する。しばらくすればウタカワが姿を現し、彼らはデスクを挟んで睨み合うことになるだろう。

 ウタカワは監視カメラ越しに、PCがソウカイニンジャであることに気がついている。彼は事を穏便に済ませたいと考えているし、ある程度なら譲歩する(例:元締めとして大トロ粉末のビズを継続する代わりに、ソウカイヤへ幾らかの上納金を収めるようにする)。実際、彼は件のビズについて既に太い販路を幾つも開拓しており、スカウトする価値のある才能の持ち主である。
 しかしながら、ウタカワの言うがままに事を進めるのを面白く思わないPCも出てくるだろう。事実、提示される譲渡案は彼に有利な物が多い。PCが暴利を吹っかけたり、ソウカイヤを出し抜こうとした報いを受けさせようとしたとき、交渉は決裂し明確な敵対関係となる。

地の文「『ドーモ、ハジメマシテ、ウタカワです。そのクロスカタナのエンブレム、何やら特別な用事でお越しのようだ。』スリーピース・スーツの男は奥ゆかしく入室し、アイサツする。その振る舞いは自然であったが、その目には君たちを蔑視するような尊大な感情が見え隠れしていた。彼はニンジャであった」
◇ウタカワ/コルネリウスを演じる
態度にこそ出さないが、ウタカワは非才なマケグミを見下しており、その対象は末端の使い走りであるPCにも及ぶ。彼は丁寧に振る舞うが、根底的に自分本位だ。一方で上流・下流の階級に関係なく、他人の”才能”については正当な評価を与える傾向にある。PCが素晴らしいカラテやワザマエを示したり、舌戦で彼を言いくるめたなら、彼は驚くほど素直にそれを称賛する。

5-1:秘書
彼女はウタカワとの日常業務や展開中のゲン・ジツに起因してNRSへの耐性が高い。脅しでもしなければ特別怯えるようなことはないが、何らかの危害を加えようとした場合、彼女は煙のように分解して消え去ってしまう(ゲン・ジツだ!)。コルネリウスは使い走りのサンシタに部下が害を受けるなど我慢ならないのだ。このイベントが発生した時点で彼は完全に敵対する。

地の文「『アイエッ...!?』秘書は頭から煙めいて分解消失!一体何が起こったというのか!?邪悪なソウカイニンジャの手は虚空を通り抜けるばかりだ。天井のスピーカーからはそんな様子を嘲笑う声が響く!」
男の声『フーム...フム。良くないぞ、良くない。私のギャラリーにマケグミの臭いがするなど、許されんことだ。実際、ウキヨエの価値が下がる。ルーザー共、ここはお前たちのようなブザマな連中が訪れる場所では無い。奥ゆかしさを学んでから出直すがよい』

男の声は間違いなくスピーカーから発されているが、特殊構造故にどこから音が響いてきているのか把握が難しい。これは視覚にしか影響を及ぼせないジツを補うための仕組みだ。

6:ギャラリー

地の文「受付を後目に足を踏み入れた先は、広々としたウキヨエのギャラリーだ。平坦な壁には大小様々なウキヨエが奥ゆかしく飾られている。素人目にも卓越したワザマエが伝わってくる繊細なウキヨエ、錯覚めいた切子模様が組み合わされたパワを感じるウキヨエなど、その題目は様々であった」

受付カウンターを奥に進んだ先は絵画ギャラリーになっている。それぞれのウキヨエは遠隔UNIX操作によって虹色シャッター隔離が可能であり、イクサの際には全てが隔離されコルネリウスのフーリンカザンが構築される。

 PLがウキヨエの回収・売却を提案することがあるかもしれないが、制限を課すか不可とすべきだろう。ここには沢山のウキヨエが存在するので際限がなくなってしまうし、実はこの画廊には有名なウキヨエ師の作品がほとんど存在していないからだ。

 ギャラリーの突き当りには2つの扉があり、それぞれ『ウタカワのアトリエ』と『倉庫』に繋がっている。倉庫にアクセスするなら、電子錠のハッキング【ニューロン:NORMAL】もしくは物理破壊【カラテ:HARD】が必要。ゲン・ジツにより扉が隠匿されているとして、NMはこの扉の存在を知らせなくてもよい。

6-1:ドンデンガエシ(透明クローンヤクザのオプション)
ギャラリーの壁の向こう側には裏方の作業スペースがあり、秘密のドンデンガエシによって部屋の各所からアクセスできる。それぞれのドンデンガエシはウタカワの遠隔IRC制御で動作するので、PCが使用することはできない。
 NMは、ここを透明クローンヤクザ軍団のスポーンポイントとして扱い、ボス戦など任意のタイミングで戦力を投下することができる。

◆透明クローンヤクザY-10型 (種別:モータル/バイオ生物/ヤクザ)	
カラテ		1	体力		1
ニューロン    	1	精神力		1
ワザマエ		3	脚力		2
ジツ		ー	万札		0		
◆装備や特記事項
◇サイレンサー付きチャカ・ガン、遠隔武器、ダメージ1
 『透明化』の効果中に限り、相手の回避ダイスを-1してから射撃判定を行う。
◇透明化
 このキャラクターに対する攻撃判定の難易度を+1する。

透明クローンヤクザの正体は全身が虹色に塗りつぶされたY-10型である。彼らにはゲン・ジツによる動的なステルス迷彩が展開されているが、堂々とヤクザスラングを発するので位置自体の特定は容易だ。飛散したバイオ血液が付着した箇所と周囲の境界には微かに虹色の境が現れる。

6-2:倉庫

地の文「頑丈な装甲扉の先は、ウキヨエ絵画の保管倉庫になっていた。棚にはひとつひとつ容器に収納されたウキヨエが整然と並べられ、湿度管理用のUNIX装置が低い運転音を響かせている。最奥には搬入用のエレベーターがあり、少し手を加えれば動かすこともできそうだ。」

この場所ではボス戦に備え、人数分の「トロ粉末」を入手可能なものとする。NMは収支の調整が必要なら「見事なウキヨエ:【万札】1d6+2」をトレジャーとして配置しても構わない。
 搬入用エレベーターは【ニューロン:NORMAL】のハッキングでアクセスが可能となるが、画廊を出入りする以外の用途はない。画廊のシーンをビルの外から開始して、これを侵入手段のひとつに提示するのもよいだろう。

7:アトリエ

地の文「ここはウタカワのアトリエだ。広々とした空間だが、不自然なほど物がない。君たちはウキヨエ・イーゼルやテーブル上の筆、画材を収めているらしき収納箱から、かろうじてこの場所の用途を察することができた。しかし、この白い部屋には扉はひとつしか存在しない。彼はニンジャの気配を察して、既に画廊から逃げ出してしまったのだろうか。」

コルネリウスは上手く気配を隠匿してこの部屋に潜んでいる。ゲン・ジツにより空間知覚に干渉されているため、部屋全体を爆破でもしない限りPCが彼の実体と接触することはない。
 応接室のイベントで彼と敵対しているなら、ゲン・ジツによる虚像と透明クローンヤクザをけしかけながらこの場所まで誘導する。

「バカな……行き止まりとは……!」

 アトリエには画材収納箱をトレジャー・オブジェクトとして配置する。これは戦闘開始のトリガーとして機能し、誰かが収納箱を開いた・壊した途端、中から大量の虹彩色スリケンが飛び出すというアンブッシュが発生する。アブナイ!緊急回避は【ワザマエ:HARD】による判定を行う。

7-1:コルネリウス戦

地の文「極彩色のスリケンは着弾寸前で霧散!漂う煙は凝り固まって、虚空に白色の装束を纏うニンジャの姿を生み出した!エーレンシュタイン的意匠のフルメンポから、その表情は読み取れない。」

上記の通り、虹彩色スリケンによるアンブッシュはゲン・ジツによるまがい物である。回避の成否を問わず、PCがダメージを受けることはない。


コルネリウス『驚いたかな?ドーモ、コルネリウスです。今のはただのデモンストレーションだ。ソウカイヤクザとは良い関係を保ちたかったが、こうなってしまっては仕方あるまい.....!』奇怪!その声は出処を隠蔽する天井スピーカーから発せられた!
◆コルネリウス (種別:ニンジャ)	
カラテ		20	体力        20
ニューロン    	8	精神力		8
ワザマエ		14	脚力		9
ジツ		6	万札		0
◆装備や特記事項
スキル:『ケムリ・ジツ』、『ブンシン・ジツ(煙)』
◇ケムリ・ジツ
 戦闘中は使用不可。【精神力】1消虹。
 ジツの展開中は術者のあらゆるダイス判定を隠匿し、シークレットで処理を行う。
◇ブンシン・ジツ(虹)
 移動開始前に使用可能。【精神力】を消費した数だけ、半実体の分身を出現させる。
 分身は【ニューロン】を除き、本体の半分の能力値を持つ。
 分身は攻撃を受けるとすぐに霧散してしまうが、出現から3ターンの間は何度でも再生する。

戦闘シーンが始まったら、NMはコルネリウス本体と分身を合計でPCと同数になるよう任意の場所に配置する。『待った、何かがおかしい』?

安心してほしい。彼はゲン・ジツを駆使し、本人のカラテ力量やジツの効果をPC(とPL)に誤認させているだけだ。配置される"本体"のコマでさえゲン・ジツで生み出された虚像に過ぎない。

 場合によっては、このステータスが開示された時点で『酷いゲームバランスだ!』とPLが不公平感を抱いてしまうことがあるかもしれない。心配なときは「カラテ」や「体力」を128ぐらいにしておくとか、なんか露骨に偽装ステータス感を出しておくと無用なトラブルを避けられるだろう。

地の文「アイサツを終えると同時に白いニンジャは渦巻く煙へと分裂し、瓜二つの外見をした複数の分身を生み出す。『これが私のジツだ。君たちに見極められるかな?』スピーカーから声が響き、分身はそれぞれ意思を持つかのように、異なるカラテを構えた。これは一体!?」
描写の手引き:奇妙なブンシン・ジツ
冒頭の通り、コルネリウスは決してブンシン・ジツの使い手ではない。PCの視界に偽の情報を合成して、そのように見せかけているだけだ。しかし極限のカラテ戦闘状況下では、その精密な映像を見破ることは難しい。

一方でジツの特性上、登場する虚像には幾つかの制約が課せられている。NMは説得力を増すため、以下の内容を踏まえて描写することが望ましい。

1:合成可能な視覚情報は「術者がイメージできる映像」に限定される:カラテ強者ではないコルネリウスは、煙化して瞬間移動、残像で動きを不鮮明化、予備動作なしの高速カラテ、といった誤魔化しでカラテを演出する。PC視点では凄まじい速度でカラテを繰り出してくるように見えるはずだ。

2:目に映る虹色をバックスクリーンとして視覚情報を合成する:虹色でないものに映像の上書きは行えない。すなわち虹色の壁と虚像の間に手を入れて遮るなどすると、その箇所だけ映像の欠落が発生する。これを避けるため、虚像はPCに対して常に壁側を位置取るように動くだろう。

7-2:戦闘処理
ゲン・ジツが破られない限り、コルネリウスは一方的にPCを痛めつけることができる。コルネリウス(偽)の攻撃に対処する無防備なPCに、姿を隠したコルネリウス(真)による攻撃が突き刺さるのだ。

ゲーム上では、分身が一斉に攻撃判定を行い、それに対してPCの誰かひとりが回避判定後に確定で1ダメージを受ける、という処理になる。

 コルネリウス(偽)による判定は全てシークレット(PLにダイスロールの内容を開示しない)で行い、結果はNMの好きに処理してしまって構わない。彼らには実体がないので、ダメージを受けなければ与えることもできないし、PCに触れた時点で霧散してしまう。

◇コルネリウスを動かす際の考え方
NMは最も強い(もしくは体力が多い)PCに優先してダメージを与えることを心掛ける。分身の攻撃を敢えて受けてみようとするPCがいるなら、そちらに優先してダメージを与える。この場面で必要なのは、PLへの牽制と撹乱だ。

例:
PCが4人いる場合、コルネリウス(偽)本体と分身*1を最も強いPCに向かわせる。残りは適当に割り振り、通常の判定処理後に先のPCへ不可解なダメージを与える。PLたちは『本体からのみダメージを受けるのでは?』と考えるかもしれない。そうしたら今度は1対1になるよう攻撃対象を割り振り、分身に攻撃されたPCの誰かにダメージを与える。彼らは別の法則性を検討し始めるだろう。
地の文「『イヤーッ!』コルネリウスの拳が胴体に叩き込まれる!?否、煙分解!「グワーッ!?」カラテ打撃が襲いかかったのは意識外の背後からだ!しかし姿は見えず!」
地の文「『イヤーッ!』「イヤーッ!」攻防一体の回し蹴りをブリッジ回避!交錯の瞬間、コルネリウスのメンポが嗤う!「グワーッ!?」左脚に虹色彩スリケン被弾!これは!?」
地の文「「イヤーッ!」BOOOM!チョップ突きがコルネリウスの心臓貫通!否、手応えがない!飛び散った煙が再び白いニンジャ存在を形作ろうとする!」

7-3:戦闘の緊張感を高める(戦闘のオプション)
必中とはいえ、敵ニンジャはどう頑張っても1ターンに1ダメージしか与えられない。賢明なPLはこの事実にすぐ気が付き、敵への警戒度を下げてしまう可能性がある。そんなときはドンデンガエシを利用して、厄介な透明クローンヤクザ戦力を投下することで場を混乱させてしまうといい。PCがクローンヤクザを引き連れているなら、彼らはゲン・ジツで空間知覚を操作され、意図せずPCを攻撃してしまうだろう。
 このオプションには適度に戦闘の緊張感を高め、ジツの本質を見破られにくくする意図がある。

8:ゲン・ジツを見破る

実際のところ、一方的に攻撃を受ける戦闘を続けてもPLにストレスを与えるばかりだ。1~2ターン異常なジツの効果を味あわせたら、PCたちにはゲン・ジツを見破るチャンスを用意するべきだろう。ピンチからの逆転の演出は、このシナリオにおける重要なポイントだ。

以下はゲン・ジツ(虹)を見破るきっかけとなるイベントの例である。

1)ジツで内壁を損傷させる:ゲン・ジツの彼をすり抜けたカトンやカラテ・ミサイルが壁や床をわずかに損傷させることで、煤けた・ひび割れた箇所を通して薄っすらと虹色が見えるようになる。

2)ダメージを負い多くの血を流す:おびただしい出血!鈍化する主観時間で、床に流れた血を透かして虹色を目にする。

3)大トロ粉末が溢れる:コルネリウスの攻撃が偶然、装束ごと懐のトロ粉末の袋を引き裂く。粉末は床にぶちまけられるが、一部は空気中を漂う。白い粉末の霞を通して、そのPCは一瞬現実の虹色を目にする。

彼のゲン・ジツを破るには「虹色存在に気がつく」→「意識的にジツを見破ろうとする」→「ニューロン判定」というプロセスが必要になる。PCがイベントを発生させたら、NMは「次の手番でこうすれば何かが起きる」と「意識的にジツを見破ろうとする」ために必要な行動をPLに伝えるべきだろう。

選択肢の中でベストなのは3番のイベントだ。アイテムさえ持っていれば 誰にでも発生する可能性があり、引き裂かれた袋から「トロ粉末」をさらに振りまく(消費する)ことでジツを破ろうと試みることができる。

地の文「「グ、グワーッ!」コルネリウスのカラテ斬撃に切り裂かれ、装束に収めていた大トロ粉末が床へとこぼれ出す!「シマッタ...!」反射的に目で追ってしまう!ウカツ!しかし一体いかなる現象か、漂う白い粉末の霞を通して一瞬、君は虹色の床と壁を目にした!極限カラテ戦闘による幻覚か!?確かめねば。もう一度繰り返すのだ!」

「意識的にジツを見破ろうとする」行為を取ったとき、そのPCは【ニューロン】判定(難易度:NORMAL)に成功することで、ゲン・ジツ(虹)の影響から脱することができる。

ゲン・ジツから逃れた後、声をかけてゲン・ジツの存在を知らせたなら、他の全員が次のターンから「意識的にジツを見破ろうとする」ことができる。

地の文「『...イイイヤーッ!!』極度のニューロン集中により血の涙が流れ、視界が歪む!こ0100れは1?10偽りのテクスチャーが剥がれ落ちたことで、白いニンジャは消え失せ、白基調の部屋は虹色に覆われた真の姿を現す!何たる激情的色彩の奔流に支配された混沌閉鎖空間!君は恐るべきゲン・ジツに囚われていたのだ!」

8-1:コルネリウス戦(真)

コルネリウス『バカな!私のジツを破ったというのか...!?油断ならぬやつ!』幻は消え失せ、虚空からニンジャの真の姿が暴かれる!その装束は超自然の虹色であった!
◆コルネリウス (種別:ニンジャ)	
カラテ		3	体力        3
ニューロン    	8	精神力		8
ワザマエ		5	脚力		3
ジツ		3	万札		5	
◆装備や特記事項
 『セン・スリケン(虹)』、『ゲン・ジツ(虹)』、『ゲン・ジツ(迷)』、『マルチターゲット』

◇セン・スリケン(虹)
 虹色彩のスリケン。虹色空間で使用する場合、対象の回避ダイスを-1してから攻撃判定を行う。
 【精神力】を1消費することでスリケンを不可視化し、攻撃の回避難易度を+1することができる。

◇『ゲン・ジツ(虹)』
 虹色閉鎖空間を通過する対象を密かにゲン・ジツの影響下に置く。
 術者が認識できる空間内であれば対象人数に制限はなく、判定も不要。
 虹色パターンを媒介し、影響下にある対象のあらゆる視覚情報に介入する危険なジツ。
 ゲン・ジツに気がついたとき【ニューロン】判定で影響から逃れることができる。

◇『ゲン・ジツ(迷)』
 スリケンや装束の視覚情報を限定的に偽装してほぼ完全な不可視状態にする。
 あるいは破壊的な錯視パターンの明滅でニューロンにダメージを与える。

 移動開始前に使用可能。『ゲン・ジツ(虹)』の影響下にない、交戦中の全ての敵が対象。
 1+対象の『ボス級の敵』の人数分【精神力】を消費して【ジツ:HARD】判定を1度だけおこなう。
 ジツを受けると、術者の次の手番が始まるまで、あらゆる判定の難易度が+1される。
 例外的に『ボス級の敵』は【ニューロン:HARD】判定でジツに抵抗することができる。

 コルネリウスは1ターン中に最大で「ジツ」→「移動」→「攻撃」の行動が可能。

ゲン・ジツ(虹)を打ち破ることで、PCはやっとコルネリウスを同じカラテの土俵に引きずり出すことができる。上記の通り本人はカラテに乏しいので、彼は強力なジツによるPCのダイス判定操作とスリケンを軸に戦うだろう。ただし複数人がゲン・ジツを脱した場合、彼はアトリエからの逃亡を試みる。

コルネリウスは体力が非常に低く、場合によっては1ターンで倒されてしまうこともあり得る。成長したPCや慣れたPL向けに戦闘の難易度を上げたいNMは、別々の対象を狙う虹色クローンヤクザを投入したり、次のオプションを採用しても構わない。

オプション:ゲン・ジツ(迷)への対抗判定を変更する:PCは現在の【精神力】に等しい数のダイスで、難易度HARDの判定を行う(自動成功不可)。

8-2:決着
コルネリウスは体力が0になっても即座には爆発四散しない。彼は素直にPCたちのカラテを認めて降参し、ソウカイヤに恭順する代わりに見逃して貰おうと交渉を始めるのだ。PCは最後まで話を聞いてもいいし、任意のタイミングで彼をカイシャクしてもいい。

◇コルネリウスの交渉カード
・ビズの優れた才能がある(大トロ粉末ビズの収益を増加させている)。
・優れた掌握術を持つ(複数のヤクザ・クランを手玉に取っていた)。
・カチグミのウキヨエ業界に太いコネクションを持っている。
・防衛向きの強力なジツを有している。
・彼を殺せば、ネームバリューと共に上記の全てが失われてしまう。

9:秘密の執務室

地の文「ガゴンプシュー!コルネリウスが爆発四散すると共に何らかのUNIX障害が起き、壁の一箇所が開かれた。隠し部屋だ!白基調のゼンめいた空間(ここで君は反射的にゲン・ジツを疑ってしまった)にはUNIX端末の置かれたデスク、書きかけのウキヨエ、黒漆塗りの金庫と冷蔵庫がある。」

コルネリウスを爆発四散させた、もしくはコルネリウスに逃げられた場合、隠された彼の執務室への扉が開く。

9-1:UNIX端末
この端末はオンライン接続されていないが、画廊内の各監視カメラとシャッター、ドンデンガエシ・システムを操作することができる。また経理関係のローカルデータベースへのアクセスが可能であり、【ニューロン:HARD】判定でハッキングに成功すると「機密データ」を回収することができる。
 残念ながらこの場では何も分からないが、このデータを持ち帰れば、ウキヨエ画廊が多数の末端ヤクザ・クランと”ウキヨエ”の取引を行っていた事実が暴かれる。

9-2:黒漆塗りの金庫
【ワザマエ:NORMAL】で解錠可能。美しいが、不気味な印象が拭えない彫刻が施された「パーソナルメンポ」が収められている。これはウタカワの作品だ。物好きはどこにでもいるもので、【万札】1d6+6で売却できる。

9-3:冷蔵庫
「オーガニックスシ」が回収できる。オミヤゲな。

9-4:ドンデンガエシ再び
秘密の執務室からはドンデンガエシを経由して受付に繋がる隠し通路にアクセスできる。秘書に手を出そうとしてコルネリウスに妨害されていた場合、彼女はここにいるかもしれない。既に逃されている可能性もあるが、全てはNMの采配次第である。ブッダ!

10:結末と報酬

◇コルネリウスの降伏を受け入れ、上層に報告した。(評価:A)
 彼はソウカイヤに吸収され、今後は上納金を収めながらビズを継続する。確かなカラテと冷静な判断力を示し、組織に利益をもたらしたチームには相応の評価が与えられる。ただしコルネリウスはビズの才能を駆使して組織内部でのし上がり、鍛え上げたカラテとジツを備えた状態で再び君たちと相見える可能性がある。備えよう。
◇コルネリウスを始末し、機密データを回収した。(評価:B)
 データ解析によりウタカワと共謀していた多数のヤクザ・クランが暴かれ、大規模な粛清が行われる。ウタカワのビズが生み出していた少なくない利潤とコネクションは失われたが、ソウカイヤはヤクザたちを酷く恐怖させメンツを保つことができた。
◇コルネリウスには逃げられたが、機密データを回収した。(評価:C)
 評価:Bと同じ結果にたどり着く。ただしコルネリウスはキョートに逃亡してしまい、強化されたカラテとジツを備えたザイバツニンジャとして再び君たちと敵対する可能性がある。
◇コルネリウスを始末したが、機密データを回収できなかった。(評価:C)
 コルネリウスの死で起動したタイマースイッチが、ローカルUNIXサーバーの機密データを破壊してしまう。彼のビジネスの全容は掴めなかったが、少なくともソウカイヤの恐ろしさを知らしめ、未認可の取引を阻止できた。
◇コルネリウスに逃げられ、機密データの回収にも失敗した。(評価:D)
 コルネリウスは逃亡に成功したばかりか、重要な証拠である機密データまで破壊していった。 少なくとも未認可の取引は阻止できたが、それだけだ。もはやどこに潜んでいるのかは分からないが、彼はより慎重で狡猾にソウカイヤと相対することだろう。

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