短歌まとめ 2022.11

わけもなく爪先を見る爪を噛む隣人愛の氾濫の下

穴だらけ汚い体を横たえて静物画として過ごす黄昏

夕暮れの風がなぞった輪郭にモナ・リザほどの価値が無くとも

貝になる詩が書けなくて咽頭に砂が詰まって涙が枯れて

喉からは嵐のような音がしてジェンガはおしまいお前のせいで

ゴミ袋には君だったされこうべ 未明に星は黒く輝く

(寂寞の薄明)何もいらないよ、落ちるだけだよ、空はこんなに、

春だった離れ離れの花筏 光は遠く 普遍的な死

安らかな眠りを妨げるための赤かった薔薇、吸い殻、未練。

死んだ子の年を数える少し背の高い横顔の鼻梁が醜い

灌木の名も無き緑に差し色の愛と平和とマウントレーニア

一人分息を吐く吸う上を向く「ピアノ・ソナタ 月光」前を向く

ありふれた哀悼として歌唄う いつかこの星も灰になるまで


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