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ケース基礎解説① "ニーズ"と"ウォンツ"について


はじめに


本noteを読む前に、皆さんがなぜこのnoteを読んでいるのか考えてみてください。
おそらく「ニーズ(Needs)とウォンツ(Wants)の違いについて詳しく知りたい」と思っているからでしょう。
しかし、それは皆さんの「ニーズ」でしょうか?
少し考えてみてください。
皆さんが本当に求めているのは、「ニーズとウォンツの違いを知ること」そのものではないはずです。
”知ること”はあくまで手段であり、最終的な目的ではありません。

実際には、皆さんがこのコラムを読む根本的な理由、つまり「ニーズ」は、ケース面接のアウトプットを高めるためのヒントを得たい、あるいは自分の思考力を向上させたいということではないでしょうか。そしてこの場合、「ニーズとウォンツの違いを知ること」は、ただの「ウォンツ」になります。

つまり、「ニーズ」とは根源的な欲求を指し、今回の例でいえば「ケース力を高めたい」ということを指しますが、「ウォンツ」とは、そのニーズを満たすための手段であり、今回の例では「ニーズとウォンツの違いについて理解したい」ということです。
したがって本noteでは、「ただ知る」のではなく、実際にケースで使うことを想定して解説していきます。この違いを正確に理解することが、ビジネスの現場やケース面接での質の高いアウトプットを生み出すために非常に重要です。ショートコラムではありますが、早速はじめていきましょう。


「ニーズ」と「ウォンツ」の重要性

なぜ「ニーズ」と「ウォンツ」が重要なのか?

コンサル就活を進める中で、ケース面接は避けては通れない大きな壁である。このケース面接の練習をする中で、アウトプットがどこか表層的で、納得感に欠けるという悩みを抱えている方も多いのではないだろうか。
このようなケース問題を解く際に、「ニーズ(Needs)」と「ウォンツ(Wants)」の違いを理解することは非常に重要だ。というのも、顧客のニーズとウォンツを正確に把握することで、表層的な論理展開を防ぐことができるからである。特に、ターゲティングした後の施策出しにおいて、その重要性は如実に現れる。

ウォンツだけに注目した場合、表層的な論理展開になりがちだ。たとえば、「Aが好きな人にAとコラボした商品を売る」というように、名詞のつながりだけを見た簡単なアイデアに留まってしまう可能性がある。これに対して、ニーズまで掘り下げた場合、より本質的で効果的な施策を打ち出すことができる。まずはそもそも「ニーズ」と「ウォンツ」の違いについて知ろう。

ニーズ(Needs)とウォンツ(Wants)の本質的な違い

まず、ニーズとウォンツの基本的な違いを簡潔に説明しよう。

ニーズ(Needs): 生活や仕事を円滑に進めるために欠かせない基本的な要素や解決したい問題のこと。ニーズは顧客の根元的な要求であり、時には顕在化していないこともあるが、生活や仕事に不可欠なものである。たとえば、健康、食事、住居、安全、社会的つながりなどがニーズに当たる。

ウォンツ(Wants): ニーズを満たすために顧客が求める具体的な商品やサービスの形。ウォンツはニーズを満たす手段として現れることが多く、顧客の嗜好やトレンドによって変動する。たとえば、「健康(ニーズ)」を満たすために「有機野菜を使ったサラダ(ウォンツ)」を求める、といった具合だ。

具体例で理解するニーズとウォンツの違い

例を用いて、ニーズとウォンツの違いをもう少し掘り下げてみよう。

例1:通信業界

ニーズ: 信頼性が高く、安定したインターネット接続。
ウォンツ: 5G対応の高速インターネットプラン、無制限データのモバイルプラン。
通信サービスを選ぶ際、顧客の基本的なニーズは「信頼できるインターネット接続」だ。しかし、そのニーズをどのように満たすかという選択において、顧客は5G対応や無制限プランといったウォンツを表明する。

例2:ファッション業界

ニーズ: 外見を整え、自信を持ちたい。
ウォンツ: 特定のブランドのトレンドを取り入れた服やアクセサリー。
ファッションにおいては、顧客の基本的なニーズは「自信を持って見た目を整えること」だが、それを達成するために顧客は特定のブランドや流行を反映した商品を求める(ウォンツ)ことが多い。

例3:就職活動

こちらはまさに皆さんが直面している状況だろう。

ニーズ: キャリアアップしたい、安定した収入を得たい。
ウォンツ: BIG4に入社したい。
「BIG4に入社したい」というウォンツを考えたとき、これは就活生の最終的な目的ではないことに気づく。このウォンツの背景には、「キャリアアップしたい」「高収入を得たい」「安定した職場で働きたい」といったニーズがある。


ウォンツを正確に理解するためには、その背後にあるニーズを掘り下げることが大切だ。この関係を理解することで、より効果的なビジネス戦略や製品提案が可能になる。

実際のケース問題でのニーズとウォンツの捉え方

以下、ケース問題を用いて、ニーズとウォンツをどのように捉え活用するかを示す。各事例では、顧客のウォンツを理解した上で、さらに深いニーズを掘り下げ、より高い付加価値を提供する方法を提案する。

事例1:高級フィットネスクラブでの戦略


ケース問題: 高級フィットネスクラブが、既存会員に対してさらに収益を上げるための施策を検討している。ターゲットは30代から40代の経営者やビジネスプロフェッショナル。

顧客のウォンツ
「最新のトレーニング機器を使いたい」
「パーソナルトレーニングを受けたい」

ウォンツのみ捉えたアウトプット:
「最新のトレーニング機器を導入し、専用のパーソナルトレーニングプランを提供しよう。」
(これは、顧客のウォンツに直接対応する施策だが、彼らが求める本質的なニーズを深掘りしていない。)

確かに必要な戦略ではあるが、ニーズへの理解を通して上記アウトプットを出してほしい。また、これらは競合も行っている場合が多く、競争優位性の確立にはつながらないことが多い。

顧客のニーズ:
「健康を維持したい」「ストレスを解消したい」「ビジネスに役立つ体力やメンタルの強化を図りたい」

ニーズを捉えたアウトプット:
「30代から40代の経営者やビジネスプロフェッショナルのニーズを満たすために、フィットネスだけでなく、栄養管理やストレスマネジメントに焦点を当てた包括的な健康プログラムを提供する。また、ビジネスパフォーマンスを向上させるためのメンタルコーチングセッションやリラクゼーションプログラムも導入し、クラブ内で完結できる健康管理の一環として売り込む。」

例えば、ニーズを深ぼった結果、「イケてるトレーニング器具を使ってる自分を誇示したい・頑張っている感を感じたい」という非常に仕様もないモノが出てくるのであれば、「最新器具を導入し、それっぽい環境を整備する」のもアリかもしれない。
つまり重要なことは、今回のアウトプットの差分ではない。
そこまでの論理展開に、”ウォンツ”よりも深い”ニーズの定義”があるかどうかということにある。

事例2:ベビー用品ブランドのアップセル戦略


ケース問題: ベビー用品ブランドが、出産後6ヶ月から1歳未満の子供を持つ母親をターゲットに、売上を向上させるためのアップセル施策を考えている。

顧客のウォンツ:
「安全で使いやすいベビー用品が欲しい」「流行のデザインの商品を使いたい」

ウォンツのみ捉えたアウトプット:
「安全性を強調した新デザインのベビー用品を発売し、顧客に訴求しよう。」

顧客のニーズ:
「子供の健やかな成長をサポートしたい」「育児のストレスを軽減したい」

ニーズを捉えたアウトプット:
「顧客の育児ニーズを満たすため、ベビー用品だけでなく、育児サポートサービスやオンライン育児相談プラットフォームを提供する。また、成長段階ごとに必要な商品を提案するサブスクリプションボックスを導入し、育児の負担を軽減しつつ、子供の成長をサポートする包括的なサービスを展開する。」

こちらの問題も同様で、新デザインのベビー用品開発が問題なのではなく、そこまでの思考プロセスの浅さにあるということである。

まとめ

ニーズとウォンツの違いを正しく捉えることは、ケース面接のアウトプットのクオリティを高めるために非常に重要だ。高いクオリティのアウトプットとは、顧客の根本的なニーズを深く理解し、それに応じた施策を提案することであり、表面的なウォンツのみに応じるものではない。顧客のニーズを深掘りすることで、より包括的で持続可能な戦略を立案でき、アップセルやクロスセルの機会を見出すことができる。

例えば、ただ最新のトレーニング機器を導入するだけではなく、顧客の健康やストレス管理といった深いニーズに応じたサービスを提供することで、より高い付加価値を提供し、長期的な顧客満足度を向上させることができる。さらに、顧客のライフスタイルや成長に合わせた継続的なサービスを提案することで、企業の収益を安定的に向上させることが可能になる。

それらが実現する「製品のオリジナリティ」は「競合への差別化」の実現につながるだろう。
特に施策を考えるうえでの”アイデア出し”局面で、今回の話を思い出してほしい。


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