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初恋

息子は幼稚生の時、同じ組に好きな女の子がいた。
まだ恋愛とは違うけど、
ママに「好きな子いるの?」と聞かれると、
その女の子が頭の中で思い浮かぶらしい。

息子からその女の子の名前を聞いたのは、
夏休みを終えたばかりの頃。
幼稚園のお迎えの時に、その子を探してみる。
帰りの会を終え、園庭に飛び出してきた女の子の
名札を見ると息子から聞いた名前。
日焼けして、笑顔が可愛い、活発そうな女の子。
思わず「素敵な子だねぇ」と息子に話す。

「でもね、その子には好きな子がいるんだよ」
とも教えてくれた。
女の子がよく好きな男の子の話を聞かせてくれるら
しく、
息子はその子に好きな子がいると知っていた。

息子は大人しくて、引っ込み思案。
幼稚園では自分から友達を遊びに誘うことはなく、
誘われるのを待つか、遊んでいるみんなについてい
くかだった。
「今日は何して遊んだの?」と聞くと、
「お絵描き」とか「虫探し」とか、一人で遊ぶ事も
多かった。

ある日いつもの様に「何して遊んだの?」と聞くと
「おままごと」と、嬉しそうに答えた。
好きな女の子に誘われて、一緒に遊んだらしい。
思わず「良かったね!」と言い、
「何役をしたの?」と尋ねてみた。
すると息子はまたまた嬉しそうに、


「犬」



と言った。
私は思わず笑ってしまいそうになるのを堪えながら、「楽しそう」と言った。
パパ役は女の子が好きな子だった。

犬役は好きな子からのご指名。
好きな子から頼まれれば、犬役でも嬉しそうにする
様子を想像して、私は息子らしいなと思った。
もしかしたら本人はそこまで深くは考えてない
可能性の方が高いけど、そこもまた息子らしい。

そんな息子も「この人じゃないとダメ」と、
お互い想える、そんな人といつか巡り合うのだろうか、そう思うと、ママは寂しくなって

「まだ犬役でいてね」

と、言ってしまう。

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