死なないための音楽
こんにちは。音楽好きの若者のひとりとして、今この状況において思っていることを自分なりに書いてみます。私は音楽を自分で作ったり演奏する人生は選ばなかったけれど、それでも音楽が大切で、音楽のために自分ができることをしたいと思い音楽業界で働いている23歳です。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、音楽業界は今、大きな危機に瀕しています。もちろん大変なのは音楽業界だけではなく、今を生きる全ての人が当事者として、それぞれの危機に直面しています。国や企業のあり方・人生との向き合い方など、あらゆる根本的なことと向き合わざるを得ない状況にあって当然で、そうではない人がもしいるなら、それは平和ボケしているだけだと言っても過言ではないでしょう。
これまで経験したことがなく、マニュアルも過去事例もないからこそ、国や地方自治体、企業、個人などのひとつひとつの対応が、それらの本質的な性質を暴いていく。とても恐ろしいことだと思います。なんとかなると見過ごしてきたことや、分かっていて目を瞑っていたことが次々と引き金となって、取返しのつかない事態へと向かっていってしまうのです。ここまで日常が奪われる事態は誰も想定していなかったわけですから、多くのビジネスモデルが破綻してしまうのも無理はありません。
今回、音楽業界が注目を集めたのは、自粛の影響を最も早い段階で受けたからでした。まるで3密を象徴するかのようなライブハウス。実際にライブハウスでのクラスター発生が大きく報道されたこともあり、企業のテレワーク推進や外出自粛が広く叫ばれるよりも前に、多くの興行は延期の判断を余儀なくされました。これは音楽イベントだけでなく、演劇や学会などあらゆるイベントや集会に共通する話だと思います。
イベントの延期や中止が始まったのは2月の終わり頃。金銭的なダメージを受けた主催者の悲痛な声が拡散されました。世間には「ライブが中止になって大変だ」という認識が広まり、新型コロナウイルスの一番の被害者はアーティストやライブハウスだと思われていました。まだ多くの飲食店は営業していましたし、外出することも制限されていない段階だったからです。この時、私も含め多くの人がこの状況はわりとすぐに改善されるだろう、という希望的観測でいた部分があったのではないでしょうか。多くの公演が「1ヶ月後に延期」といった対応となり、私たちはそれを「絶対できない」と思っていたわけではありませんでした。
しかし、2ヶ月以上経った今も、ライブが開催できる目処は全くたっていません。「1ヶ月後に延期」といった対応をした公演は、再度の調整を迫られ、「◯月に再延期」「日程調整中」もしくは「中止」となってしまいました。アーティスト関係者や会場関係者は先が見えないなかでの準備や日程調整に追われています。
結婚式場のスタッフなども同じような状況だと聞きます。いつならできるのか、誰も分からないのです。手探りの調整は非常にストレスフルであり、正解がないため困難を極めます。今となっては人が集まること自体ができませんから、アーティストはレコーディングもできなければ、全ての人が、いつものように綿密なコミュニケーションをとりつつ仕事をしていくことも難しい状況です。
これはライブハウスに限った話ではないのですが、営業自粛を要請しておきながら、自粛によるダメージを補填するための支援策が後手に回っていること、
そして、「夜の街やライブハウスに行くのはやめてください」といった取り沙汰され方をし、関係者がコロナ菌呼ばわりされ嫌がらせを受けるなど、風評被害が起きていることに私もひどく胸を痛めています。
音楽は不要不急だと、初めから分かっています。音楽が無くても、確かに、生きていくことはできるかもしれません。それでも私は音楽の仕事をしています。音楽は生き甲斐だからです。音楽に救われた命が、あったからです。どんな仕事も趣味も素晴らしいと、そう思っています。
私と同じように思う人がたくさんいると信じています。でもこのままでは、想いだけでは解決できないことがあるのです。このままでは、ライブハウスはなくなってしまうし、未来のミュージシャンたちは音楽をやめてしまうかもしれません。とても悲しくて、やるせなくて、怒りが込み上げてきます。
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