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【VISIONING VOICE Magazine #16】「 ”食べる喜び”を持続可能にできる世界へ」 〜 PLIMES株式会社 代表取締役副社長 兼 共同創業者 下柿元 智也さん〜

NEXs Tokyoが主催する、ローカルおよび国内外の広域展開に挑むスタートアップが”次のステージ”に向かって羽ばたくために、サポートをしてくれる人やファンと繋がる番組VISIONING VOICEをインタビュー記事としてまとめたマガジン「VISIONING VOICE Magazine」 📖
「VISIONING VOICE」はNEXs Tokyoと日経グループがコラボし、次のステージを目指すスタートアップ企業の3つの「カクシン(核心・革新・確信)」に迫り、起業家の想いを深堀りします。
パーソナリティは、長年スタートアップを取材している日本経済新聞社・上田敬さんとNEXs Tokyoコミュニティスタッフ・閏野が務め、番組をお届けしています。

今回はDIVEコース(地域発)のスタートアップ、PLIMES株式会社 代表取締役副社長 兼 共同創業者 下柿元 智也 (しもかきもと ともや)さんにインタビューさせていただきました!

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<登壇者プロフィール>
下柿元 智也(PLIMES株式会社 代表取締役副社長 兼 共同創業者)
筑波大学大学院修了、生体医工学技術とリハビリテーションの研究開発に従事。日本学術振興会 特別研究員、デンマーク工科大学 客員研究員、筑波大学研究員を経て現在に至る。PLIMESの共同創業者として参画。経営戦略・財務・総務・法務・国内外事業開発・研究技術開発・医療関係者とのネットワーキングなど実務全般に従事。博士(工学)・修士(医科学)。
PLIMES株式会社公式サイト:https://www.plimes.com/

「嚥下」を見える化する

人が食事をするときに、食べ物が喉を通る動きをAIでモニタリングするシステム「GOKURI(ゴクリ)」を開発してきたPRIMES株式会社の下柿元智也さん。“高齢になったり、既往症があっても、自分で食べられる喜び”をサポートするサービスを提供しています。

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下柿元さん:食べものが食道ではなく、誤って気管に入ってしまうことで起こる誤嚥性肺炎で亡くなる人は年間4万人で、その数は交通事故より多くなっています。しかし実際には、要介護者や、脳卒中を患った後に麻痺を発症して食べるのが難しい方など、ケアが必要な方は年間300万人ほどいるといわれています。一方、患者を支える医師、歯科医師、言語聴覚士は患者につきっきりになってしまうため、人手が足りないのが現状です。また、X線や内視鏡などの機材がない病院もあり、現場では患者の状態が言語化されず、正しい状況把握ができないという問題が起きていました。
「嚥下はよくわからない」これが一般の歯科医師の間での共通認識のようで、敬遠されている領域だというのが実情かもしれません。しかし私たちは、ケアの必要な方々が安全に食事をするというライフスタイルの部分をどう支えられるかという課題にチャレンジしたいと思いました。「食べられる喜びをいつまでも」という社のビジョンは、英語では、「Safe swallowing to enjoy eating together」といいます。安全に食事をする医療的な行為と、誰かと一緒に楽しんで食事をするという両輪をどう持続していけるのかを模索しています。

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下柿元さん:「GOKURI」というサービスは、医療従事者に難しいと思われている嚥下をもっと簡単に把握できないかという視点からAIの技術を応用し、言語聴覚士の観察を人工知能技術でデジタル化したものです。患者さんがネックバンドをつけることで飲み込んだときの音や温度、姿勢の角度を計測でき、脈拍のセンサーで体調も測ることができます。医師の側は、アンドロイド型のスマホアプリでデータ管理ができ、クラウドで他の介助者とデータが共有できます。これまで「なんとなく大丈夫」だった認識が、データで示せるようになったのです。最終的には、介護が必要な方も家庭で食事が楽しめる未来をつくれたら、と思っています。

【核心】人生の最後に食べる食事を考える

―― もともと大学で研究をされていたとのことですが、どのような経緯で会社を立ち上げようという思いに至ったのでしょうか。

下柿元さん:筑波大の研究員で共同研究していたとき、経営者とエンジニアの考え方の違いを感じることがありました。両者の間に立ってうまくブリッジできれば事業も進むことを感じ、経営企画の役割に興味を持ったのがきっかけです。

―― 「嚥下」については、当初から課題だと思われていたのでしょうか。

下柿元さん:大学の教授からも「嚥下に関わる資質がある」と言われるくらい、自分自身食事をすることが好きだったということが原動力になっているかもしれません。学会の展示などで介護食を食べる機会がよくあるのですが、今でこそ食品メーカーの努力で味は美味しくはなってはいるものの、食感がなかったり、歯ごたえが失われていたりするものが多くありました。本当はもっと食べられるはずの人もいるのではないかという疑問とともに、自分が年を重ねたときに、最後に食べる食事がこれでよいのだろうかという思いがわきあがりました。これが本質的な問いかけになったように思います。

【革新】医療によって決定される生活を変えたい

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―― この事業を通して下柿元さんがアップデートさせたい対象はどんなことでしょうか。

下柿元さん:人生の最後の食事まで持続可能にしたい、という思いがあります。介護における食事という領域には、医療、福祉、ご家族の都合、栄養士、など様々な要素が絡み合っていますが、その中で嚥下は“one of them”、付属的な要素として捉えられている傾向があります。この状態を解きほぐせないだろうか、本来自分の食事は自分で決められるのがいいのではないかという気持ちがあります。

―― システムを開発するだけでなく、世の中の考え方、医療の報酬体系も変えていかなくてはということでしょうか。

下柿元さん:そうだと思います。会社名のPLIMESはモノやコトの本質を追求する「シンプル」のアナグラムであって、社会制度の「でも」や「だって」という気持ちを、何とかしたいという創業者4人の思いがつまっています。食事自体は「生活」ですが、体調が悪くなったとたん「医療」になってしまいます。医療の決定によって生活も決められてしまう、という更新されないもどかしさをなんとかできないか、また、保険点数や介護保険制度にどう組み込むかというのも解決していかなくてはいけない課題だと思っています。

【確信】自ら食事を選択する自由を最後まで

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―― 下柿元さんの「欲しい未来」について教えてください。

下柿元さん:会社のビジョンにもなっていますが、すべての人が自由に生きる世界をつくりたいということです。人生100年時代と言われている中で、自分の食事を自分で選ぶという選択肢を最後まで閉じたくないのです。現在は、危険だからという理由で食べるものを選べないことが多くあります。しかしそれは本人の都合ではなく、介護する私たちの都合。本人の選択肢を拓く、という可能性を追求していきたいと思っています。

―― 器具を装着することで、食べられないものを見つけるというのではなく、もっと普通の食事が食べられるのではないか、という可能性がわかるということでしょうか。

下柿元さん:まさにそれを目指しています。現在は誰が何を食べられるのか、というスクリーニングを支援していますが、食事選びの部分でこの技術で蓄積したデータを活用できないだろうか、と考えています。データ上安全ではあるけれど、リスクもあるということを理解してもらったうえで、どう食事をするのか。その選択肢を示すサービスが大事だと思っています。

社会問題解決の突破口を見つけるために

―― 最後に、下柿元さんが今後さらに広域展開を目指していくにあたって叶えたいことや、どんな人に出会いたいか、教えてください。

下柿元さん:GOKURIを自治体の健診で使っていただくことにも関心がありますし、介護保険の課題については、行政と一緒に突破口を見つけたいと思っています。また、飲み込みのデータに関してはまだ誰も集積してないという強みがあるので、食品、飲料、製薬会社など飲み込みに関わる製品を製造されている会社の方々とも繋がっていきたいと思っています。

―― 海外展開も考えているのでしょうか。

下柿元さん:現在、海外からも問い合わせをいただいており、デンマーク、ドイツ、アメリカなどの企業と話を進めています。会社のメンバーが国際色豊かなので、各国の事情を把握しやすいという利点も生かしていきたいです。

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―― 下柿元さん、ありがとうございました!

番組ではその他にも、実際の介護食や、サービスの運用VTRなどを観ることが出来ます。youtubeアーカイブより視聴可能ですので、併せてぜひご覧ください!

次回はJUMP(東京発)コースのスタートアップ、株式会社タレントアンドアセスメント 代表取締役 山﨑 俊明(やまさき としあき)さんにご出演いただいた#41の記事です!

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