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逃げたアメリカと残されたアフガン市民

20年間のアメリカ(& UK & NATO) 駐在の末に、こんな結末になってしまった。アメリカは夜逃げした。9/11の20周年に撤退日を定めて、功績を誇らしく祝うつもりだったのかもしれないが、その前に「やべっ!」となり、アフガン政府軍に警告も引き継ぎもなしに、空軍基地を置き去りにして逃げてった。米軍の残した武器がタリバンの手に渡り、刑務所からタリバン兵が続々と戦場に戻っている。

相方であり司令官であった米軍にそんな逃げ方されたアフガン政府軍は奮い立って戦うだろうか?彼らは呆気なく敗れ「無血開城」に近い形でカブールは陥落。アフガニスタンの大統領も出国した。現在、またアフガニスタンに軍が再派遣されているが、それはアメリカ人を全て撤退させるまでの期間だけだ。

この20年間で、米軍は(US Contractorsも含めて)6000人を失った。負傷者は25,000-30,000人。その中には手足を失ったり失明したり、PTSDで今も苦しんでいる人々もいる。これだけの犠牲を払って、結末がこれ?アメリカがいつか撤退するのはわかっていたが、こんな締めくくり方ってあるだろうか?そのショックをベトナム戦争の時と重ね合わせて、昨日はこんな写真が頻出していた。

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いろんな意味でデジャブ;;;。

トランプ政権の元で働いた元海軍特殊部隊のErik Princeは、War Roomで当時の状況をこう分析する。

アフガニスタンはそもそも一つの国ではありません。50民族の集合体です。アメリカは9/11の後のCIAや特殊部隊による6ヶ月の作戦だけ遂行して、成功したのだから撤退すべきでした。しかしそれを元々存在しなかった中央集権国家の確立を目指して今の泥沼に陥ってしまったのです。
敗北の要因は3つあります。1つ目は、責任者が不在で、グローバルリーダーがその役割を順に果たしていたに過ぎなかったこと。2番目に、治安はその社会を反映する形で構築されるべきなのに、それを無視したこと。現に、米軍は、現地の構造をよく勉強せずに、90%が読み書きができないアフガン軍にアメリカの武器を与え、アメリカ軍を複製しようとしたのです。あの時の会議はまるでStar Trekのワンシーンでした。現場を何もわかってないエリートが偉そうに会議を開き戦略を立てていたのです。3番目に、自然資源の発掘を同時に行うべきだったのに、地域開発が並行して行われなかったこと。エネルギーと金は戦場に向けられ、地域開発が同時進行で行なわれなかったことも泥沼にハマった要因です。

そこで、エリックは2017年夏にトランプ大統領に以下を進言する。

1)アフガン政府軍と寝食を共にする信頼のおけるリーダーをつけること。
2)空軍支援の強化。
3)戦闘支援の強化(食事、武器、空軍支援)

この進言を聞くだけで、米軍はよっぽど現実離れして連携が取れてなかったのかが伺える。緊急援助でもそうだが、資金がめちゃくちゃあっても連携が悪いと、後方支援も現場の基本的な供給も滞るのだ。

Erikの案の方が予算もJim Mattisらが提案した作戦よりももっと低かったが、エリックの進言は却下されてしまう。「トランプ大統領のじっと目をみつめて、奴らは平気で大嘘を着いた。トランプは正しい情報を受け取ることができず、結果として違う決断をするに至ってしまった。」とスティーブ・バノンは指摘する。

こうして、アメリカの最先端技術で武装したアフガン政府軍は、1940年代の武器を自由に操る元山羊飼いたち(タリバン軍)に追い散らされてしまった。

この2−3日前にバイデンは「アフガン政府軍はベトナム軍とは違う。残された後もしっかりアフガニスタンを守ってくれるでしょう。」と話したばかりだったが、あっという間にこんな結末に。陸路を絶たれている市民たちが空港に押し寄せ、どうにか飛行機に乗ろうと必死だ。

アフガニスタンは地政学的な要素もあり、1800年代から戦争の連続だった。イギリスの事情、冷戦の板挟み、パキスタンの私欲など、さまざまな自国外の事情に巻き込まれてきた。ムジャヒデン、アルカイダ、タリバンもその過程で外国勢力の支援を受けながら形成され、台頭した。

アフガニスタンは実は今世界で2番目にクリスチャンが増えている国である(一番はイラン)。このような激しいイスラム体制のもとで、迫害に耐えながら、イエス様に出会い、神の愛を知り、命をかけても守るほど価値があるものだと信じているのだ。

そのクリスチャンたちに早速タリバンの厳しい手が伸びてきている。タリバンは厳格なシャリア法に基づいたカリーフ政府の樹立を願っている。タリバンはテレビで「共生」とか聞こえの言い事を言っているが、彼らの言葉を信用してはならない。彼らは卑劣で極悪なグループだ。石打ちの刑や、斬首、橋からの首吊りなどの公開処刑、ジハーディストの嫁確保のため(さらなるジハーディストを産んでもらうため)の妻や娘たちの誘拐などがまた再発していくだろうことは目に見えている。
残念ながら、彼らの宿敵であるクリスチャンが標的になってしまうだろう。

一体今何ができるのか。まず祈ろう。祈りまくろう。彼らと家族の命が守られるように。こんな状況にあっても、言葉にできない超自然的な神の平安が彼らの心を覆うように。彼らに大胆さが与えられるように。希望の灯火が決して消されることがないように。タリバンの圧政がアフガニスタンのニューノーマルになる前に、声をあげ、あげ続けよう。

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