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[レポート]2023年度「ニュートラの学校(実践編)」始動

 NEW TRADITIONALは、今年度は、ミュージアムと連携したラーニングプログラムの実施を前年度に続きおこなうほか、ニュートラの学校(入門編)を、佐賀県と新潟県で開催、国外ではヴェネチアビエンナーレへの参加を通して海外での普及も行います。
「ニュートラの学校(実践編)」を地域や伝統的なものづくりの今のニーズに即したものにすることをめざして、8月2日に実行委員会を開催しました。

会議の前に、委員の一人である水上さんが施設長をつとめる生活介護事業所さふらん生活園を見学しました。さふらんには2年ほど前からSFRNという名義の活動もあり、利用者さんの「ゆらぎ」をいかした作品を発信しています。

均一に織られた職人様のものから極太横糸のラグまで、さまざまなものを製造。

会議では、どのような人を対象とした講座にするか、課題は何か、高い熱量で議論が交わされました。集まったご意見は、分野を横断し実践を重ねている委員ならではでした。一部を抜き出してご紹介します。

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浅野翔さん(デザインリサーチャー)
商品をつくる、イベントを起こす、という違うアプローチ両方が「ニュートラの学校」で学べる項目にあったらいいなと思う。受講者の発表の場として、それらが集まったフェスティバルの形式を取れたら楽しそう。

井上愛さん(NPO法人motif理事長)
自分自身が施設職員として福祉の世界で製品づくりを実践し、長年試行錯誤してきた。地域を巻き込む提案をできる企画力をつけられるような講座に、魅力を感じる。また、福祉×ものづくりを今プロデュースしている人の思考やスキームを、福祉施設の職員や利用者さんが写しとって実行できるような講座は、需要があるように感じる。

岩城鮎美さん(多治見市美濃焼ミュージアム学芸員)
教育普及を担当。作陶だけならば多治見市内いろいろな施設で体験していただけるが、美術館でありかつ小規模ミュージアムで機動性が高いからこそ、さまざまなまなびを来場客に提供できる。自分が「ニュートラの学校」を受講するなら、実際に施設に所属しており、目的意識をもった方々と出会うことができるものが理想だ。

佐藤一信さん(愛知県陶磁美術館館長)
子供や障害のある人が参加しやすくあってこそミュージアムが各地域に存在する意義があるという信念のもと、さまざまに実践してきた。福祉施設のものづくりにおいては、それをサポートするがわの姿が一般の方にもっと見えてくるようになれば、巻き込まれる人ももっと増えるはずだ。

高橋孝治さん(デザイナー)
2020年よりNEW TRADITIONAL に携わりはじめた。継続して福祉施設に関わっており、そこに流れる時間感覚と生産活動との関係を体感し、くらしを見直すことを社会に提示する鍵がここにあるのではないかと感じている。「ニュートラの学校」実践編本体とは別に、ミュージアムと障害者福祉との関係に問いを立てるようなイベントを設け、段階を踏んで「福祉×伝統工芸×ミュージアム」に移行してはどうだろう。

水上明彦さん(さふらん生活園施設長)
さふらん生活園がものづくりを通じて社会と繋がっていくことを模索中。施設の内と外をつなぐことを考えるとき、施設外部の人すら「内部」だと、おおらかに捉える構えでいる。職員たちは、日々の活動で利用者さんと一緒に実際に手を動かし、ものをつくり出すよろこびを感じている。施設がつくるもの、の魅力を伝えたいし、学びを深めたい。

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たんぽぽの家としても、NEW TRADITIONAL事業のなかで「ニュートラの学校」という軸が社会に提供できることを、中期的に想像し、検討していきたいと感じました。

【ご案内】 「ニュートラの学校(実践編)」を開催します

2023年11月に東海地方で開催予定です。募集の準備が整いしだい、NEW TRADITIONALウェブサイトfacebookたんぽぽの家ウェブサイトでお知らせします。ぜひご参加ください。

実行委員会の前日には、委員の井上さんにご提案いただき2つの場所を見学しました

生活介護事業所「FLAME」(特定非営利活動法人motif)

地域のなかの障害のある人と無い人が一緒に「何か」を作る場、という発想がベースにある福祉事業所です。名古屋市の北に隣接する西春日井郡豊山町で開設してまだ3年目、井上さんが代表を務められています。

デジタル刺繍機やミシンが充実したスペース。右が井上さん

これまで福祉の世界で多数の製品づくりや販売を手がけてきた井上さんは今、「出口さえも巻き込みたい」と考えています。FLAME自身が販売主になるのではなく、しかし下請けとも違う、商品をともに作る相手として、さまざまなメーカーや他の福祉事業所と共栄することを目指します。

今取り組んでいることのひとつが柿渋染です。以前は豊山には柿渋染が産業としてあったのだそうです。近隣の渋柿や灰をFLAMEが貰い受けて、自分たちで柿渋から作っています。
歴史をふまえ地域のなかでの循環から商品を生み出したり、材料も含めものづくりを見つめ直す。NEW TRADITIONALの取組みにとって非常に参考になりました。

「i'm lovin' it」 ART LAB(BLUE+) 作品展Vol003

アートラボブルーは、絵を描いたりものを作ったりするのが好きな人が活動する場所として、月に1度開催されています。「窮屈な学校生活や生産性を重視した社会とは無縁の場所を作りたい」と考えた伊藤愛さん(NPO法人BLUE代表)が、愛知県の特別支援学校で勤務する傍ら場を開かれて、5年目だそうです。
伊藤さんは、通ってくる子供たちや保護者が、孤立しないでとにかくどこかに繋がっていることを大切にしています。定期的に臨床心理士さんの相談回も同時開催しており、芸術・療育・教育がそろう場です。

絵を描いた子供が何に夢中なのか、どんな様子で作品を作るのか、伊藤さん(左)がいきいきと話してくださいました

展覧会「i'm lovin' it」
2023年8月1日(火)~8月13日(日)
​​みよし市図書館学習交流館 サンライブ1階 ギャラリー(愛知県みよし市三好町湯ノ前114)

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[更新履歴]
「ニュートラの学校(実践編)」開催予定時期を2023年12月ごろ→11月に変更しました(2023.08.19 11:15)

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