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[レポート]ものづくりスタディツアーin徳島 1日目

さまざまな伝統工芸の産地を周り、伝統工芸を新たな視点で発信している職人やコーディネーターらとの交流を通して、福祉の現場 にもいかしていけるような視点を見出すためのものづくりスタディツアー。
今回は、2021年12月18日(土)・19日(日) の2日間で徳島県を訪れました。

このツアーでは建築家の高橋利明さんにご案内いただき、伝統工芸に携わる方々の仕事場を訪問したり、上勝町での「ゼロ・ウェイスト」の取り組みについて学びました。
高橋さんは、”そこに暮らす方の気持ちに寄り添う設計をモットーにした設計”や、“みんなの複合文化市庭-うだつ上がる”を展開されている建築家です。職人の手仕事や人とつながる事の魅力を、高橋さんの視点を通して味わうこともこのツアーの魅力のひとつでした。

TTA+A 高橋利明建築設計事務所 http://takahashi-aa.net/


阿波指物集団 富永ジョイナー  

昼過ぎに徳島駅に集合し、はじめに訪問させていただいたのは「阿波指物集団 富永ジョイナー」。
阿波四代目指物師 富永啓司さんに工房や作品をご案内いただきました。

まず工房に足を踏み入れると、とたんに木の香りが。

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当日は工房には富永さんの他に3名の職人さんもいらして皆さん気さくに迎えてくださいました。

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富永さんのご先祖はもともと船造りをされていました。廃藩置県後は水車などの農機具を作るようになり、その後建具・蒸し器など生活の道具を経て戦時下には弾を入れて引きずり回しても壊れない丈夫な箱も作られたそうです。そして、昭和になり富永さんのお父様が飾り曲げ組をされるようになり、現在に続く意匠性の高い作品が作られるようになったそうです。

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大切に箱にしまわれていたこの”秘傳”と書かれた本は、お父様から受け継がれた本です。富永さんはこれに基づいてカンナなどの道具を使い仕事を学ばれました。
今のように精巧な意匠の作品が作られるに至るまでには手を動かす事だけでなく、湿気などの環境とどう付き合うか、海外への輸出対応も含め多くの試行錯誤があったそうです。

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工房を見学させて頂いたあとは、近くにある本福寺さんにご案内いただき、こちらのご住職からの依頼で富永さんの作られた作品を沢山見せて頂きました。

建物に入り目を引いたのはこちらの蓮の作品。本福寺さんの縁起を表現されています。
指物は裏側もとても美しく、光の在り方ともに変化する影は何度見ても見飽きないと感じました。

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桟唐戸もほぼ直線で構成されシンプルな意匠です。実は富永さんの作品を見て驚いたことの一つに直線の美しさがあります。ただただ真っ直ぐであることがこんなにも美しいのかと感動しました。

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こちらでは富永さんの仕事に対する姿勢や大切にされているものについてじっくり伺うことができました。

”伝統工芸”について、伝統工芸は、鎌倉や室町の頃から市民に愛され今に残っているもの。でもそれをそのまま残して今の人達にとって価値があるのか。今求められているものを作る必要があると考えている。と話されていました。今様に変化しつつ継承されるからこそ何百年と残り続けるのだと感じました。

また、作品を作る時はまず、木と話をされるとおっしゃられました。木にはそれぞれに個性があり張力も違う。その個性を見ながら「おまえはここいくかー?」と対話をし、ボンドを使わずも抜けたり折れたりしない組み方をしているのだそうです。

「ものづくりの中には心理学がある。」とも。ただ”美しいもの”を作るのではない。愛おしい、なんだか心が動く。そこを大切にして作っているとおっしゃっていました。そう話されながら懐から出されたのは、お孫さんが富永さんのために作られた道具入れです。「孫が作ってくれた。ぶさいやろ。でもこれが愛おしい。」と目を細めておられました。
”愛おしい、なんだか心が動く。”この視線は、私たち福祉を含むすべての社会に共通して活かせると感じました。

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富永さんの作品のモチーフには、蓮や竹、鳳凰などがよく使われています。
「どちらも土の中にしっかり根を巡らせていて、それをくぐって地上にでて花を咲かせる。たとえ落ちることがあっても蘇る。自分の作るものにはどうしても自分がすべて出てくる。だから自分の生き方をちゃんとしなあかん。いい環境やいい人たちと関わる中で自分もいい影響を受け、ものづくりにもつながっていく。」
という言葉もとても印象的でした。

富永ジョイナー http://t-joiner.com/
阿波四代目指物師 富永啓司 http://wwwb.pikara.ne.jp/tominagajoiner/


上勝町ゼロ・ウェイストセンター

続いて伺ったのは 「上勝町ゼロ・ウェイストセンター 」です。
上勝町の魅力を伝える活動をするパンゲアフィールドの野々山 聡さんにご案内いただきました。

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上勝町は四国の中で一番人口の少ない町です。現在は1400人あまりが生活していて、そのうちの53%は65歳以上、さらには全体の1/5が80歳以上です。
この10年弱、外から移住した人と自然減との相殺で年平均40人ほど人口が減り続けています。
この街で2003年、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」がされました。

「ゼロ・ウェイスト」とは、無駄や浪費をなくそうというという考え方で、ゴミを出さない社会を目指すものです。

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・生ゴミは各家庭でコンポストによって堆肥にして活用。
・それ以外は45種類に分別しリサイクルする。
・ゴミ収集車は無いので自分でゴミを分別場へ持参する(持参が無理な世帯へは2ヶ月に一回ゴミ運搬支援があります)。
・ユースショップなどで物を循環させる。
これらの取り組みにより上勝町のゴミリサイクル率は80%を上回ります。全国平均は20%なので4倍のリサイクル率です。
どうしても出てしまう残り20%弱は、保健衛生上問題のあるおむつなどのゴミ・革製品・ゴムなどで、これらは町民だけで解決できず商品開発に関わる企業との連携が不可欠なものです。

日本初の宣言を出すに至るには上勝町がもともと抱えていたゴミ課題がありました。
もともと上勝町では1998年に県から指示されるまでゴミは野焼きされていました。その後小型焼却機を2機購入、稼働させます。すると、国のダイオキシン基準の設置により1機が使えない事になり、以来ゴミはすべて県外へ送ることになりました。その費用は1コンテナ17万円。年換算で 3,500万円。できる限りリサイクルして節約しないと…と役場の職員が町民一人一人に説明し、ゴミを33分別することになりました。
そこへ2002年、国際環境NGOグリーンピースが視察に訪れ、アメリカでゼロ・ウェイストを提唱し世界中で講演活動をしているポール・コネット氏も訪れました。
それを契機に2003年上勝町はゼロ・ウェイスト宣言をします。

1 地球を汚さない人づくりに努めます。
2 ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をします。
3 地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!

この宣言をもとに45分別、リサイクルをすすめ、2020年にはリサイクル率80%を達成するに至りました。
現在2021年を迎え、更なる目標として「色んな人・企業と共にゴミについて考える。」ことを掲げ、それを実現するための場として上勝町ゼロ・ウェイストセンターが作られました。

町民はそれぞれで分別したゴミを洗浄し乾かしたりしてからセンターへ持参し、それぞれの置き場へ納めます。
分別するもの毎に、どこへ運ばれてリサイクルされるか、そこにかかる費用あるいはそれにより得られる収入はいくらかといった情報も示されています。

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センター内にはくるくるショップがあり、町民が不要になったものを持ち寄り、誰でも(町外の人も)持ち帰ることができます。また、センター建物にもリサイクル資材が使われています。
その他、センターのラーニングセンター&交流ホールでイベントや講座など学ぶ場をもったり、併設のホテルに宿泊することもできます。

住民がゴミ課題を自分たちだけの課題ではなく、企業や自治体との協力関係も作りながら社会全体の課題として取り組み、発信する。
そして、その事に価値を創出し、自分たちのブランディングにも繋げられている。
実りある活動を継続するために、状況や関わる人に合わせ対応しながら、わかりやすい方法で取り組むこと。今回野々山さんに案内していただく中で、ごみ課題だけではなく、何かに取り組む時に必要なことについても学ぶことができました。

上勝町ゼロ・ウェイストセンター https://why-kamikatsu.jp/
合同会社パンゲア https://why-kamikatsu.jp/


カフェ・ポールスター

最後に伺ったのは、今回ツアーをご案内くださっている高橋さん設計の「  カフェ・ポールスター  」。

山が見える・働いている人が見える・そこに泥靴のおじいさんおばあさんが来たりパソコン仕事する人がいたり。みんなで過ごせる場所として設計されたこちらのカフェでは、地元の食材を使った食事や様々なプログラムが楽しめます。(2022年の1月からは業務形態を一新してスタッフ含め色んな人のライフスタイルに合うスタイルでの営業を始められるそうです。)

カフェ・ポールスター https://cafepolestar.com/


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今回はお店のご厚意により特別に、閉店後の店内でツアー一日目の振り返りをさせていただきました。

この振り返りでは
「福祉と工芸が合わさり、直しながら使い続けられるもの、いびつだけどいいなと思えるものができるといいと感じた。」
「普段はなかなか見に行けない所が見学できてよかった。」
「参加することで他の施設の人と関われたのがよかった。」
「自分たちの出しているゴミについて改めて考えたい。」
「富永さんのものづくりに対する熱い思いは、福祉にも共通するものがあると感じた。」
「”ゴミ収集センターへ行く”という具体的な行為など、何をするかがはっきりしていると取り組みやすいと感じた。でも、個人ではできることに限界があり、企業や行政も一緒にしないとどうにもならないところがあると感じた。」
といった感想が聞かれました。

このツアーでは、ものづくりや、自分たちのいるところ(地域)人やものとのつながりについて真摯に、でも朗らかに。自然に繋がりを広げている方々にお会いできました。
その方々の仕事の素晴らしさにも感動しましたし、大切にされていること、哲学にもとても感動しました。

お世話になったみなさま、本当にありがとうございました!

(リポート:たんぽぽの家 小松紀子)


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