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[レポート]障害のある人の表現と伝統工芸をめぐるリサーチシリーズ|木工①

2021年9月25日(土)。今日は、GJ!センター香芝に福井県鯖江市より木地師/ろくろ舎代表の酒井義夫さんをお招きしました。


酒井さんには今年度、木工と障害のある人のしごととの可能性を一緒にさぐっていただきます。
漆器のお椀の工程だけでなく、産地のこと、ご自身のなりわいとしての伝統工芸のこと、製品づくりのヒントなど、たくさん伺いました。また、GJ!メンバーとともに杉板と工具を使った実験をし、実際に製品に取り入れられそうな手法を見つけることができました。

漆器の産地

鯖江は、めがね、和紙、刃物、繊維など、実はいろいろなものづくりが盛んな場所です。
漆器は工程が分かれているのが特徴のひとつ。酒井さんは木地師といい、木材から荒挽された荒型からうつわのもとを削り出す部分を担当します。

_23A8922のコピーろくろに合わせて使う自作の道具も見せてくださいました。自分に合わせた道具・刃物まで準備できるようになるのが一人前と言われているそうです。

漆器は、今はずいぶん、作れば売れるという時代から遠ざかってしまいました。そのため木地師になる人は今は非常に珍しく、20〜30年ぶりの木地師の誕生と言われたそうです。酒井さんより若い、新しい人が鯖江にいると聞いたことはないそうです。

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画像1工程の数は産地によって違います。得意な工程も違います。たとえば鯖江は、さいごに手塗りできれいに仕立てます(花塗といいます)。

 自分から伝えてゆく

酒井さんは、オーダーメイド品の受注や商品開発にも力を入れています。2018年には、オーダー受注会をまるごと外に持ち出す仕組み「オンリー椀(わん)」を開発しました。今日の勉強会でずらっと並べてくださった半切りのお椀たちも、漆器の魅力を伝えるために自ら用意した、漆器制作の過程の見本です。

順調に延びた売り上げは、2020年新型コロナウィルスの感染拡大で打撃を受けます。下請けなどの仕事に代わるものとして手応えを感じていましたが、それ一本だとそれが止まった時に収入が途絶えてしまうという危うさに気づきます。
同時期に世間では、オンライン販売が急激に普及はじめました。
酒井さんは、オフラインでの動き方をさらに強化することに舵を切ることにしました。オンリー椀に続き、直接自分が動けるコンテンツを増やすことにします。それが、移動式工房「ろくろ車(しゃ)」です。

自分から出ればもっと伝わる。場所を持たなくても成り立つことをする。同時に、やはり木地師として極めたり、経営のバランスも考える。
機能ではなく、感覚が動く・琴線にふれるタイミングに買うというのが消費者の購買行動になってきている昨今にて、どうそこに切り込めるかを考えています。

障害のある人とのこれからのものづくりにむけて

そんな酒井さんがものづくりで大切にしていることは、工程を踏むなかで自分が喜びを感じるか、まわりの人を幸せにしているか、みんなで倒れないでやっていこう、ということだそうです。
たんぽぽの家やGJ!センターでは、素材の良さや、工程のなかにある豊かさを大切にしたものづくりにもっと取り組んでいきたいと考えています。素材の魅力をひきだすあんばいなどについて、酒井さんに助言をお願いしました。
お話のあとは実際に、GJ!メンバーを巻き込み板の加工の実験も行いました。

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酒井さんとは引続き11月から年度末にかけて交流を続けてゆきます。

*この取り組みは日本財団の助成(「障害のある人の表現と伝統工芸の発展と仕事づくり」)で実施しています。

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酒井さんとの交流がはじまった2020年の「越前・鯖江スタディツアー」のレポートもぜひご覧ください




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