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【演奏曲紹介】復興への序曲「夢の明日に」/ 岩井直溥

 Tuttiのフェルマータが響きわたり、一瞬の静寂。ほどなくして、やわらかくも切なく、憂いを帯びた艶やかなアルトサックスソロが奏される――。


 第2部の幕開けを飾るのは、2013年度全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅲ、復興への序曲「夢の明日に」です。この曲は、2011年3月11日に発生した東日本大震災からの復興を祈念して、岩井直博氏によって作られました。

 主に3つの部分から構成されるこの曲。課題曲としては珍しくドラムセットを使用しており、明るく軽快なサウンドが特徴です。

 冒頭では金管楽器と木管楽器の華やかなサウンドで主題を奏で、小気味の良いテンポで展開していきます。聴いていてどこか力の抜けたような、気張りすぎないメロディーラインとテンポ感は、まさに「大人のポップス」と表現できるでしょうか。フルートやピッコロ、そしてトランペットとトロンボーンによる合いの手にも注目です。

 突如、テンポ感が早まり、上昇する4分音符を駆け抜けたかと思えば、a tempoでメロディ―同士の掛け合いがなされます。そして迎える中盤、見どころはなんといってもアルトサックスのソロでしょう。一気に場の空気が変わり、切なさと美しさが共存するのをきっと感じていただけることと思います。

 ホルン奏者である今回の曲紹介の中の人は、ソロ裏のハーモニーで空気感をいかにうまく作りこみ、ソリストの世界観に合わせにいくかが肝だと感じているのですが、あまりにもニッチな話題すぎるのでここでは割愛します。

 ソロが終わり、再度ドラムセットによってビート感を取り戻したあとは、メロディーを様々な楽器に引き継ぎながら進んでいきます。

 Allargandoで打楽器とともに大きな盛り上がりを迎えたあと、早いテンポで駆け抜ける終盤部へ。トランペットが冒頭のメロディーを再現し、木管楽器がキラキラと跳ねるように音符を奏でる様子は華やかで、さながらミュージカルのような底抜けな明るさが感じられます。終盤も最後までめまぐるしく音楽が展開し、飽きることのない楽しい楽曲だと感じるのではないでしょうか。

 岩井直博氏が思い描いた「復興」とはどのような音色なのか。復興への願いと、未来へ向かう夢と希望を感じていただければと思います。

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NEW-S Wind Ensemble

2025年1月11日(土)夜公演
西宮市民会館アミティ・ベイコムホールにて開催!

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E-mail : newswindensemble@gmail.com


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