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<記者の眼>スチュワートのソフトバンク入団は米球界に激震を与えるか?

何年か前、高校卒業を控えた大谷翔平は、日本のプロ野球をすっ飛ばしてアメリカに渡ることで、日本人がメジャーリーグでプレーする新たな道を切り開くチャンスがあった。

結局、大谷は日本ハムに入団し、その道は選ばなかった。しかし、アメリカの選手が、今それと正反対の決断を下した。

短大でプレーするフロリダ出身のカーター・スチュワート投手(19)が、メジャーのドラフトをスキップし、ソフトバンクと推定6年総額700万ドル(約7億6500万円)で契約合意したのだ。

スチュワートの選択について訊かれた大谷は、「別にこっち出身だからとか、日本出身だからとかというのは関係なく、どこでやってもこう、もっともっといい選手になれるように、それだけのモノを持って指名されていると思うので、どこでやるにしろ、気持ちさえあればどこでも関係なく、いいんじゃないかなと思います」と答えた。(野球情報サイトフルカウントより日本語での発言を引用)

端的に言えば、MLBのドラフト制度にはアマチュア選手との契約金額に上限が設けられているから、スチュワートは日本行きを選んだのである。

高校の最上級生だった昨年、スチュワートはMLBドラフト全体8位で指名を受けた。しかし、指名したアトランタ・ブレーブスが彼の健康状態を疑問視したため、契約に至らなかった。

スチュワートはフロリダの2年制短大に進学し、再びドラフトにかかる資格を得た。だが、おそらく2巡目での指名、150万ドル(1億6400万円)以下の契約金になるとの評価だった。

日本に行くことで、彼は短期間にもっとたくさんのお金を稼ぐチャンスを得られるのだ。更に、活躍次第では、25歳でアメリカに戻り、メジャー球団と大型契約を結ぶこともできる。

特殊なケース?

ただし、スチュワートの選択が他選手に大きく影響を与えることはないと思う。

第一に、多くのアメリカ人選手は日本で5、6年プレーする契約に縛られたくない

日本でプレーするには、文化の違いに適応する必要がある。メジャーでプレーしたアメリカ人選手が日本でプレーする場合は、NPB球団と1、2年の契約をして、合わなければ戻ってこられる。

しかし、初めにNPB球団と契約してしまうと、アメリカに戻りたいと思っても、25歳でフリーエージェント資格を得るか、日本の球団を説得してポスティングを行使してもらう必要がある。

もし25歳になる前にポスティングでメジャーに移籍する場合、比較的少ない契約金で我慢しなければならない。大谷は23歳で日本球界を離れ、エンゼルスとの契約金は230万ドル(約2億5000万円)だった。

また、スチュワートのような形で日本に行くのは、NPB球団が大金を積みたくなるほどの能力はあるが、メジャーリーグ球団がそれだけのお金を払うほどではないからこそ成立する。そういう選手は少ない。

もしスチュワートが一巡目指名の評価だったら、メジャー球団から300万ドルから700万ドルをもらえるので、日本に行く理由はなくなる。

スチュワートの決断は興味深く、彼の今後の動向は気になるが、あまり日米の他選手への影響はないだろう。

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