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エンゼルスGMが明かす、マイク・トラウト残留の裏側

大谷翔平の同僚で、ほぼ誰もが認める現役最高選手のマイク・トラウトが、エンゼルスと契約延長で合意に至った。12年間で総額4億2650万ドル(約475億円)は、野球のみならず、北米スポーツ界で史上最高額となる。

これでトラウトは、少なくとも38歳となる2030年のシーズン終了後までエンゼルスでプレイする。球団やファンにとって最大の関心事、そして心配の種でもあったトラウトの残留が決まり、みんな胸をなでおろしているだろう。2023年までエンゼルスとの契約が続く大谷にとっても朗報だ。

このオフシーズンで最大のニュースとなったトラウト再契約の裏側を、エンゼルスのビリー・エプラーゼネラルマネージャー(GM)が明かしてくれた。

「チームにかける想い」

エンゼルスで現役生活を終えてもいいという気持ちがトラウトにあるのに気づいたのは、2年前だった、とエプラーGMは言う。時折、夜11時くらいにトラウトからテキストメッセージが送られてきたそうだ。

「マイナーリーグの試合データを見ていると、彼から『(マイナーにいる)誰々が今夜の試合で活躍した』とか『誰々はどう?』なんていうテキストが届くんだ」とエプラーGM。「そんなことをする選手は他にいなかった。ユニークなことだね。彼のチームにかける想いが伝わってきたよ」

そういったやりとりが、トラウトが球団の長期的な成功に興味があることを気づかせてくれたという。

再契約を結んだトラウトは、これから12年間、まさにその成功のカギを握ることとなる。

「二つの故郷」

トラウトをチームに留めることができて、ほっとしたとエプラーGMは言う。

マスコミの間では、トラウトが故郷ニュージャージー州近辺の東海岸チームでプレーしたいのではないかと噂されていた。だが、トラウトには二つの故郷がある、とエプラーGMは言う。

「彼には生まれ育ち、今でもオフシーズンを過ごす故郷がある。でも、エンゼルスが彼の野球の故郷なんだ。彼を野球生活の故郷に留まらせることが、我々にとって重要だった。それを成しえて本当に嬉しい。トラウト残留を球団の焦点に据えてくれた(オーナーの)アートにとても感謝している」

狙っていたタイミング

トラウトの契約総額は、史上2位であるブライス・ハーパーの3億3000万ドルを1億ドル近く上回る。また、それまでエンゼルスで最高額だったアルバート・プホルスの契約を1億8600万ドル上回る。

以前の契約では、トラウトの2019年と2020年の年俸は3325万ドル(約36.7億円)だった。今回の契約延長で、それは3600万ドル(39.7億円)に変更となる。2021年から2030年までは、毎年3545万ドルが支払われる。

球団はトラウトの契約延長を何年もかけて計画してきた、とエプラーGMは言う。このオフシーズンが、「できる限り人目につかないで動いて」契約延長を実現できる最高のタイミングだと考えたそうだ。

もしシーズン後まで待ったら、トラウトの将来に関する疑問の声は更に大きくなるばかりだっただろう、とエプラーGMは話す。

チーム人事への影響

トラウトとの契約延長は、球団の他の選手人事には影響を与えない、とエプラーGMは述べた。

エンゼルスは、「スピードよりも方向性重視」のアプローチをとっている、とエプラーGMは言う。つまり、フリーエージェントの選手を獲る短期的な改善策ではなく、下位組織にいる選手を育成することを目指している。

「(トラウト残留)によって、我々はそのアプローチを保つことができる」とエプラーGM。

「野球界にとっていいこと」

ファンたちも、トラウトのエンゼルスユニフォームがいつか過去のものになってしまうのではないかと心配する必要はなくなった。

トラウトが一つのチームで現役生活を終えることは、「エンゼルスのファンにとって素晴らしいことだと思うし、個人的には野球ファン全般にとっていいことだと思う」とエプラーGMは言う。

「私は、オリオールズ一筋でプレーするカル・リプケンが粋だと見られた時代に育った。もちろん、ニューヨーク(ヤンキース)で働いて、マリアーノ・リベラやデレック・ジーター、ホルヘ・ポサダが1つの球団に留まる姿も見た」

「それはいいことだと思っているよ」

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