ニュース用語で振り返る2023年
終わりを迎えつつある2023年、今年はどんな1年だったでしょうか?
2023-24年末年始企画第2弾として、この記事では2023年を彩ったニュース用語から今年を振り返っていこうと思います。
ChatGPT
2022年11月にOpenAI社によって公開されたChatGPT、やはり今年を代表するコンテンツですね。人間の入力した質問に対し、インターネット上の大量のデータをもとに、まるで人間が答えているかのような流暢な文章で回答を出力するChatGPTは、リリースからわずか2ヶ月で利用者数1億人を突破するなど、急速な広がりを見せました。
ChatGPTのような生成AIの登場によって社会はさまざまな角度から影響を受けました。例えば、多くの企業が文書を作成する業務をChatGPTに任せることで負担軽減を図ろうとしたり、教育現場でChatGPTを用いてよいのか議論を呼んだり。また、IT大手のGoogleがBardという生成AIをリリースするなど、生成AI業界も大きく活性化しました。
一方で、「生成AI、本当に大丈夫?」という懸念も同時に広がりました。インターネット上の情報をもとに回答が作成されるため、誤った情報が回答として生成されることもしばしばあります。また、画像生成AIなどでは生成に用いた画像の著作権に関する問題も表面化しました。さらに、AIの軍事転用はどこまでよいのか、AIによって雇用が奪われるのか、といったAIと人間の未来を考える話題もよく取り上げられ、G7広島サミットや国連安全保障理事会などでも話し合われた他、各国でもAIへの規制が議論されました。
5類
2019年末から感染が広がり、世界から日常の生活を奪った新型コロナウイルス。2023年はコロナ禍から抜け出せた1年と言えるかもしれません。
今年5月8日には、新型コロナの感染症法上の分類が2類から5類に引き下げられました。これにより、濃厚接触者の特定や外出自粛の必要がなくなった他、コロナ関連の医療費が一部患者負担になるなどの変更がありました。
感染の落ち着きや5類移行に伴う最も分かりやすい変化は、やはりマスクをする人が大きく減ったことでしょう。外を歩いていてもマスクをしている人の方が少なくなりましたね。
「異次元」の少子化対策
こちらは、岸田首相が今年1月の会見で表明した政策です。会見の中で「我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれている」と述べられたように、少子化は日本が直面する最大の問題の1つです。
4月1日には新たにこども家庭庁が設置されました。子どもに関する部門が今まで文部科学省や厚生労働省などに分散していたことを受け、子ども関連の部門を一元的に管轄する省庁として発足しました。
12月22日には「こども未来戦略」と「こども大綱」が閣議決定されました。この中で、3つの基本理念として①若い世代の所得を増やす②社会全体の構造・意識を変える③全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する が掲げられており、児童手当の拡充や多子世帯の大学授業料実質無償化、子ども誰でも通園制度、出産支援などが盛り込まれています。
地球沸騰化
国連のグテーレス事務局長は、7月27日の会見で ”The era of global warming has ended, the era of global boiling has arrived.”「地球温暖化の時代が終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と発言しました。この発言から地球沸騰化という言葉が広がりました。
この発言の背景には、今年の世界全体の記録的な猛暑があります。7月3日には世界の平均気温が観測史上最高の17.01˚Cをつけ、さらに7月は記録がある1940年以降で最も暑い月だったと発表されました。日本でも6月に40˚C 超えを観測したり、東京の真夏日が過去最長の64日間続いたりと、猛暑に関わるニュースをよく見聞きしましたね。さらに世界でも、ヨーロッパで熱波が発生し高気温が続いたり、北アメリカで大規模な山火事が発生したりと、高温に苦しめられた1年だったと言えるでしょう。
処理水
2011年の東日本大震災から早12年、懸案だった処理水の問題が1歩前進したといえるのが8月から始まった処理水海洋放出でしょう。
処理水とは、福島原子力発電所内の放射性物質を含む水について、トリチウム以外の放射線物質を除去処理したもののことです。2011年の事故以降、この処理水はタンクに貯蔵されてきましたが、どのように廃棄するか決まらないまま貯蔵タンクが増えていくという状況でした。それが今年、薄めて海洋放出することが決定し、IAEA(国際原子力機関)の監視のもと8月から放出を開始し、2023年内に合わせて3回の放出が行われました。
処理水放出に対し、強く反発したのが中国です。処理水を「汚染水」と表現して放出を非難し、放出開始とほぼ同時に日本産水産物の輸入停止を始めた他、中国からの抗議電話が相次ぐなどの影響もありました。
イスラエル・パレスチナ
今年10月に始まったイスラエルとハマスの戦争は世界に衝撃を与えました。
この争いは、ユダヤ人とパレスチナ人の根深い対立に端を発しています。両民族がパレスチナ地域が自分たちの土地だと主張しており、現在ではユダヤ人による国家イスラエルと、パレスチナ人のヨルダン川西岸地区・ガザ地区に分かれています。
このうち、ガザ地区を実効支配するイスラム武装組織ハマスとイスラエル軍の間で衝突が起こり、イスラエルのガザ地区侵攻が始まりました。イスラエルを支援するアメリカ・ヨーロッパ諸国ですが、イスラエルによるガザ地区侵攻に反発する国も多く、戦争終結の見通しが全く立っていません。
そして、イスラエル・ガザ地区の戦争は、ロシアによるウクライナ侵攻への注目が薄れる原因にもなっています。
ウクライナでの戦闘が続き、イスラエルでも戦争が始まるなど、世界情勢の不安定化が如実に現れた1年と見ることもできますね。
マイナンバー
マイナンバーは2016年に始まった、個人に1つずつ数字を割り当てる制度です。行政の正確な運用や効率化、そしてデジタル化の推進のために導入されました。
マイナンバーカードの取得率の低さも懸念されていましたが、今年大きく注目されたのはやはりマイナンバーのひも付けミスですね。ひも付けミスにはいくつか種類があり、主に ・健康保険証とマイナンバー ・国からの給付金などを受け取る公金受取口座とマイナンバー のひも付けにおいて、他人の情報が誤って登録されていたケースが大きな問題となりました。一部のミスについては、他人の個人情報をみることができる状態になっていたものもあったということです。
このようなミスが次々と発覚したことを受けて、政府は今年6月からマイナンバー関連のミスの全容解明を行う総点検を開始しました。その結果が12月に公表され、先行して行われた調査分を含めて約1万6000件のミスが明らかになりました。
そんな中、現在の健康保険証を2024年12月2日に廃止することが閣議決定されました。紙の健康保険証は廃止後1年は使えるという経過措置も付けられましたが、マイナンバーを中心とする医療制度への移行が進んでいます。