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ベルリンの壁のトルコ人親子三代

 西ドイツ西ベルリンで「ベルリンの壁」に沿って何キロか歩いていたら、母親、息子、孫らしき親子三代に遭遇。ドイツ人じゃない。移民として多く住むトルコ人だとすぐに分かった。

 その親子三代、壁を背にソファに座ってくつろいでいた。自分が歩いてきた壁伝いの歩道は公道のはずだが、彼らがくつろいでいる数メートル四方は私有地化されていて、通せんぼ状態に。

 よく見ると、公共のベンチの両わきにボロボロのソファを一つずつ並べ、ベンチの前にはチャイのポットを置いたテーブル。オヤジ=息子が「よう!」という感じで手を挙げた。「まあ座れ」と促す。オヤジはずっとドイツ語を話し、母親と孫の少年は全く喋らず、会話はほとんど成立しなかったが、「まあチャイでも飲んでいけ」と、熱いお茶を淹れてくれた。

 近くに民家らしい建物も見当たらない。息子は靴下にサンダルと、まるで自宅にいるよう。母親も孫も平然を座ったまま。親子三代、余裕しゃくしゃくだった。

 その2カ月後、ベルリンの壁が崩壊(1989年11月)。しばらく経ってから壁があった跡を歩いてみたが、親子三代がくつろいでいた場所が分からなくなってしまっていた。

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写真は全て当時の紙焼きをスキャンしたもの。

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