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モスタルに手紙は届かない

 旧ユーゴ内戦を舞台にした「ヴコヴァルに手紙は届かない」という有名な映画があり、以前それをもじって「サラエヴォに手紙は届かない」というnoteを書き、そして「モスタルに手紙は届かない」は、自分が実際に体験した。1992年、戦闘で町は傷つき、多くの人が死んでいっているのに、子どもたちの遊びは戦争ごっこだった。現地で撮った子どもたちの写真をフランスから送る際、郵便局の職員に「ボスニアヘルツェゴビナは来月以降、手紙を送れなくなる」と告げられた。

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 モスタルはネレトヴァ川によって町が東西に分かれていて、いくつもの橋が二分された町をつないでいたが、空爆のために橋が相次いで崩れ落ちていた。手紙を送って1カ月も経ったころ、子どもたちから奇跡的に返事が届いた。モスタルで最も有名なスタリ・モストの、爆撃で傷だらけの絵が同封されていた。その返事はすでにフランスから送れなくなり、子どもたちとのやり取りは1往復で終わった。

 スタリ・モストも最後は崩れ落ちた。現在、ボスニアヘルツェゴビナの最初の世界遺産登録となっているが、2004年に再建されたものだ。

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市内の全ての橋が落ちたモスタル。写真は当時のポジをスキャンしたもの。

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