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パワハラ防止と解雇のリスクの狭間にある韓国のアパート警備員 -- 老後福祉の貧しさを埋める民間雇用が抱える問題

韓国で最近、(また)問題になってきたアパート警備員(管理人)への住民からのパワハラと雇用の問題。社会で目立つ課題に一律の法整備で規制する方向に走りがちな文政権。社会に根ざす構造的な問題から目を逸らして目先の解決に走ると当事者が困窮するという悩ましい話。

 韓国ではアパート(ま、日本の団地みたいな感じ)の警備員が退職後に就く仕事としてメジャーなのですね。警備員と言っても日本で言うところの管理人で、ゴミの処理や施設内の清掃なども請け負う。基本的には24時間駐在で、2交代、3交代制。

最低賃金ぎりぎりの給料ですが、年金が乏しい韓国では高齢者のできる仕事として重宝していたんだそうです。

ところが、文政権になってからこっち、最低賃金が爆上げされたことによりこれら高齢者の生活を支える仕事が激減。それまで3人でやっていた仕事を2人でやらされて、それでも労働時間を抑えるために途中、途中に休憩時間を強制的に取らされる。もちろん、その間に住民から苦情がきたら対応せざるを得ないし、有名無実の休憩なんてざら。

雇う側の管理組合としても、3人に最低賃金を支払う予算がないからと、2人にするなら、若い人を雇って効率を上げたいと残った2人の雇用も高齢者から奪われることもある。なにせ、それまで見向きもされなかった管理人の仕事さえ、若い世代が就くぐらい、全体に低賃金の仕事がなくなっていたわけです。

韓国で根深い住民のパワハラ

 最近も立て続けに管理人が自ら命を絶つ事件がありましたが、一件は住民のパワハラが原因とされ、もう一件は長時間の労働が原因だったと記憶してます。

これまでもパワハラなどなかったわけじゃないけれど、雇用が失われてきた今となっては、例え酷い扱いがあったとしても辞めることができないので、行き着くところまで行っちゃうケースが増えたりします。

一般的な風潮ですけど、韓国では上下の格差は絶対のもので、自分が上だと思えば下になにをしても許される、下の者は何をされても我慢すべき…という誤った儒教的価値観が残っていますから、当然のこと、パワハラが日常化しやすい。

この問題を文政権が規制という形で解消しようとすると、警備員は警備以外の仕事をしてはいけないという警備業法を厳格に守らせようとする方向に向かう。でも、そうすると今と同じ頭数を雇っていてもゴミの処理はしてもらえない。なので、むしろ雇われている警備員の方から厳格な法の適用を嫌がられているという悩ましい状況。

労働環境の専門家などは、警備員と管理人を分けて、それぞれの業務を区分して雇用し運営し、直接の雇用主である警備会社以外に派遣されるアパートの住民などもパワハラ禁止法の適用対象にするべき…と、正論ではあるんですが、業務内容が細分化されるとその業務内で専門性の高い効率が求められるようになるのは必定。なんでもできる便利屋なら7割の出来の高齢者でも最低賃金で働いてくれるならOK。でも、専門家となるとどうでしょう?

社会に構造的な問題がいろいろとあって、複雑に絡み合った中でひとつの問題にだけ視点をあわせて強引にやろうとするから、他の問題が浮上してしまうという厄介な状況ですね。ま、今までそういう問題を先送りにして見ないようにしていたツケを今、払っているわけですけどね。


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