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仕事がライフスタイルに溶け合う未来。イトーキが描く新しい働き方「XORK Style」とは?

コロナ禍をきっかけに働き方が変容する中で、ほぼ全ての企業がリアルな場である「オフィス」の在り方を見直すことになりました。

そんな中、そういった状況で新しいオフィスのカタチをいち早く描き出しているのが株式会社イトーキ。事務用機器メーカーとして捉えている方も多いかもしれませんが、コロナ禍以前より真摯に新しいオフィスの在り方をいち早く模索し、自ら「次世代のWork Style」を考えるための企業として躍進しています。

未来のオフィスから見えてくるリアルとリモート、アナログとデジタル、これからの会社の在り方について、イトーキの森田さん・香山さんにお話をお聞きしました。

ー イトーキさんがどういった会社なのか、改めてお聞きするところから始めたいと思います。

森田:家具メーカーとして認識いただいている方が多いと思いますが、現在の私たちは、家具を軸として事業領域が拡大しているので一言でいうのが難しいんです(笑)。

香山:そうなんですよね(笑)。

ー(笑)。

森田:簡単に言いますとオフィスという場づくりを通して「働き方」に変革を促すのが現在の私たちの事業です。イトーキのミッションステートメント“明日の「働く」を、デザインする。”を実践しています。

ー 事業領域が拡張しているのはなぜなんですか?

森田:一番大きなきっかけはやはり10年ほど前の「働き方改革」ですね。働く環境全体を見なおすきっかけでした。

香山:20年前までは、ワークスペースは基本的にデスクを並べて、コミュニケーションエリアをどうするかというのが、オフィスの課題だったんですね。時代と共に働き方が多様になることで事業領域が広がりました。

「XORK Style」ってなんですか?

ー イトーキさんは、コロナ禍以前の2018年に「XORK Style(ゾークスタイル)」を打ち出しました。どのように生まれたのですか?

香山:時代と共に働き方の自由度が増していますよね。この自由=フリーというのをキーワードに、未来の働き方を打ち出したのが「XORK Style」です。

ー「フリー」がキーワードなんですね。

香山:そうなんです。ワーカー個人が自由に自己裁量を持って働くことで、個人の生産性が最大化し、組織全体の生産性向上に繋がりますよね。こういった理想的な組織を実現するために「XORK Style」は「いつでも どこでも 誰とでも」というコンセプトに基づいた2つのフレームがあります。ひとつが「ABW=Activity Based Working」。これは、日常的にワーカーが行う業務を10の活動にセグメントし、それぞれに適したスペースを実装することで、ワーカー自らが自律的にワークプレイスを使い分けることを可能にします。

©️2021 Veldhoen+Company All Right Reserved.
10の活動はオランダのABWの創始者であるワークスタイル変革コンサルティング企業ヴェルデホーエン社の研究により作られた考え方です。

ー 日常業務を分解・再構築して、スペースに活かすということですね。

香山:もうひとつは、心の健康こそが、未来の業務においてはとても重要だと考え、私たちはWell-beingの概念にもとづく空間品質基準「WELL Building Standard」のゴールドレベルを取得しました。光や空気などの環境を整え、個人のWell-Beingを実現できると考えたからです。現実的な働き方の提案と精神的な安定。このふたつの軸から、未来の働き方を提案するのが「XORK Style」です。

XORK Styleを支える二つのフレーム

ー 一つずつ詳しくお聞きしたいのですが、ABWって多様な企業のニーズなどをきちんと理解しないと実現できませんよね?

森田:おっしゃる通り、コンサルティング領域から働く場を考える必要がありますね。「働く場所」って目的を達成するための手段でしかないんです。ですから「どんな働き方をしたいか」「どんな目的を達成したいか」というゴールとセットで考えないといけない。

ー 確かに!

森田:会社という共同体には、経営者の視点、個々人の多様な働き方、事業課題が複雑に絡んでいます。それに加え、現代のオフィスはIT・デジタルツールとも密接に関係しています。オフィスにどのようにデジタルインフラを構築するかで空間作りも変わります。

ー 書類をデータ化すると、棚がいらなくなったり、オフィスのレイアウト全体にも波及しますもんね。

森田:そうなんです。そういったニーズや要件の整理をして、事業デザイン全体でオフィスがどのように機能するかというのを考えないと、使い始めてからもうまくいきません。ABWはそういうことを考えるためのフレームワークでもあるんです。

ー そう考えると現代のオフィスには理念や企業のあり方、すべてが詰めこまれているのかもしれませんね。

森田:そうなんです。私たちは、経営者インタビューからオフィス作りをはじめることが多いんです。経営全体に対してどのような課題感と理想を持ち、どのような未来を実現するか?という本質的な話からスタートしないと良いオフィスにはならないんです。

ー まさにコンサルテーション領域からはじめられるんですね。もう一つのWELL Building Standardはどのようなフレームなんですか。

香山:旧来のオフィスにも「休憩室」はありましたが、休憩室ってなんとなく「休んでいる」ような罪悪感を伴いませんでしたか(笑)?

ー なんかちょっと周りの目が気になったりしましたよね(笑)。あいつサボってやがるな?みたいな。

香山:そうそう。そうではなくて、本当は休息をとることも、仕事のために必要な活動の一つだってことだと捉えるべきですよね。そういう思いのもとリフレッシュやリチャージというコンセプトで、仕事の一環として休息できるスペースを考えるのが「WELL Building Standard」です。心身の健康こそが生産性を上げるためのベースですから。

森田:「XORK Style」において生産性を上げることは、何よりも大事なことだと思います。企業活動の根幹でもありますよね。

実践の場「ITOKI TOKYO XORK」への移転

ー 2018年「XORK STYLE」を打ち出すと同時に本社も移転し「ITOKI TOKYO XORK」をオープンしましたよね。

香山:私たち自身が「XORK Style」を実践するためのスペースとして「ITOKI TOKYO XORK」は生まれました。

森田:それまでは大小いくつもの拠点を持っていましたが、一箇所に集まるで未来の働き方を実験する場としても機能しています。

ー 先進的なオフィスだと思いますが、実際に働いてみていかがでしょうか?

森田:私のように元々コンサルティングや営業をしているメンバーは、かなり前からフリーアドレスを実践していたので比較的移行はスムーズでしたが、デスクに書類を積み上げて仕事をするようなスタイルが残っていた管理部門には戸惑いはあったようです。数ヶ月の運用で以前よりも働きやすくなり、満足度も向上しました。

香山:移転前から、研修やトレーニングプログラムを充実させたので、意識もアップデートされていたので混乱はありませんでした。

ー そういう意識をアップデートするのってなかなか大変ですよね。

森田:クライアントのお話を聞いても、40代以上のワーカーには、やはり新しい働き方に対してのアレルギーはありますね。

ー 世代の差があるんですね。

森田:そういう方々は、この「ITOKI TOKYO XORK」に見学に来ていただくようにしています。そうするとガラリと意識が変わる方が多い。想像しきれていないのが弊害になっているだけで、実際に目の当たりにすると意識が変わられる方が多いです。ということで、ぜひお越しください(笑)。

コロナ禍におけるオフィスの変容

ー さて、2018年にXORK Styleを打ち出したわけですが、コロナ禍はやはり影響ありましたか?

森田:影響は受けざるを得ませんよね。ポジティブ・ネガティブ両面あると考えています。ポジティブな面では、日本の企業では一般化していなかった在宅ワーク・テレワークの導入や、紙からデータでのやりとりへの移行など、デジタル領域における働き方が強制的に進化したこと。加えて、通勤時間がなくなったことで、プライベートな時間が増えたというのもいいことだと思います。

ー そうですね。

森田:一方で、ざっくりまとめるとコミュニケーションについてはネガティブな問題点が頻出したと捉えています。分散して働くことで、日常的な会話などの一見無駄と思われるようなコミュニケーションが削ぎ落とされてしまった結果、個々人のパーソナリティなどが仕事に反映されにくくなってしまいました。

ー ツールは進化して、本質的なコミュニケーションが失われたのはなんだか皮肉でもありますね。

森田:コロナ禍以前の業務の延長でリモートワークになる分には、大きな問題にはなりにくい一方、新入社員に代表されるような組織に馴染んでない方の教育は、深刻な問題だと思いますね。管理職なども、社内の情報を集めにくく、負荷がかかっていると聞きます。その他にもゼロから何かを生み出すようなクリエイティブなミーティングは、オンラインではやりづらいという声もあります。

ー そういった状況で、イトーキさんの事業も変化しましたか?

森田:ワークプレイスの側面から見ると大きく2つの変化があったと思います。ひとつは、オフィスの規模感が変わりました。今までは、社員数=出社人数という企業が大半でしたが、出社が前提でなくなり、事業目標を達成するために適切なオフィスの規模について、ほぼ全ての企業が再定義することになりました。

ー なるほど。

森田:もうひとつは、オフィスが毎日来る場所から「目的を持って集まる場所」へと変化しました。出社する意味、集う意味をもう一度考えることとなりました。この2つの変化によって、私たちの事業も変化しました。今までは単純に人数が増えたから…働き方を改革したいから…という現実的な問題解決の手段として新しいオフィスにするというのがご相談の大半でした。ですが、コロナ禍以降、オフィスとは何か、自分たちの事業とは何か…といった本質的なところからきちんと考える企業が増えたと思います。

香山:そうなんですよね。面白い現象として、床面積を減らしてオフィス自体は小さくする傾向なんですが、その分スペースを充実するための投資は惜しまないという企業が増えているんです。

森田:「オフィス縮小は”オフィスに来るな”ということではない。社員がリアルで集まってコミュニケーションすることで起きるシナジーはイノベーションに不可欠だ」という経営者のお話が印象に残っています。この話には、多くの経営者が共感してくれます。

香山:そういった背景から、XORK Styleの「いつでも どこでも 誰とでも」というコンセプトに「ここでしか」が加わりました。これは、オフィスでしかできないことを再定義する意味でも重要なコンセプトなんです。

ー お話をお聞きしていると、オフィスの在り方はイコール「会社とは何か」みたいな根本的な問いになっていますよね。

森田:企業の活動の中でオフィスが果たす役割ってこれからもっと重要性を増すと考えています。例えば、社内制度や福利厚生を充実させても、なかなか伝わらなかったりします。「社員のウェルネスを考えている」といっても詭弁に見えてしまう企業もあります。オフィスを整えておくことで、直感的に「ウェルネス」にきちんと投資しているというのが見える化できます。

ー 確かに。就職・転職活動する際にも、オフィスの写真が決め手になったりしますもんね。

森田:まさに会社の在り方がイコールオフィスの在り方ですから、採用活動にも当然波及します。

香山:優秀な個を繋ぎ止めるために魅力的なオフィスを作るのはとても重要ですよね。XORK Styleが「フリー」というキーワードから生まれたように「個」の自由度が高くなると、一方で会社というフォーマットから逸脱してしまう可能性も秘めています。そういう中で会社へのエンゲージメントを高めるというのは、様々な企業が抱えている課題です。

これからのコミュニケーション

ー これからのコミュニケーションはどのように変化すると考えておられますか?

森田:コミュニケーションのための選択肢が増えたのは、すごくいいことだと思います。もっと目的に合わせてコミュニケーションの手段を最適化することが、全体のハッピーにつながると思います。Face to Faceのコミュニケーションの重要度にはみんな気がついていますよね。だからこそ、リアルな空間にも様々な選択肢を持たせることで、コミュニケーションがもっと豊かでスムーズになると思います。

香山:みんな試行錯誤しながら、少しずつ目的に合わせてツールを使いこなし始めています。Face to Faceの重要性って雑談とかにあるのではないかなと思います。ちょっとした仕草などから得られる情報がオンラインだとやっぱりちょっと足りないんですよね。オンラインでも、リアルでもコミュニケーションを大事にしていきたいと思います。

私たちの新しい働き方について

ー 在宅ワーク、出社、ハイブリッド…様々な選択肢がありますが、私たちの働き方はどのように変わると考えていますか?

香山:分散して働くことは、すでに当たり前になり、現在進行形で働き方は多様になっています。生産性を上げるためにも、コミュニケーションの新しいカタチをデザインすることが重要なのかなと思うんですよね。

森田:私も仕事が分散することで、日常生活に溶け込んでいくような未来になると思います。ワークライフバランスのように仕事とプライベートを対立構造で描くのでなく、これからは「ワークライフインテグレーション」と言われるように、統合して考えるものになってきています。オフィス家具もかなりホームユースのものにデザインが近くなってきています。私たち自身も、「家ではたらく」ためのプロダクトを提供しています。様々なことやものが融合して、普段の生活や遊びの境目がなくなっていくのが未来の働き方なのかもしれませんね。

ー 本日はありがとうございました!

↑イトーキではITOKI HOMEという在宅ワーク向けの家具ブランドも新設された。

ー 編集後記 ー
「オフィスって本当にいるの?」コロナ禍を経てオフィス不要論を耳にする方も多かったかもしれません。お二方のお話を聞くと、リアルでのコミュニケーションの価値が高まることで、ますますオフィスは重要になると改めて考えさせられました。リアルとリモート、これは対立する考え方でなく、それぞれが生活の中に溶けていくことで、より良い未来を描くことができる。私たちオンラインワークスペース「NeWork」では、これからもリアルな現場についても考えることで、もっと素敵な未来に向かえると考えています。

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さあ、一緒に新しい働き方へ。
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NeWork note 編集チーム:中見麻里奈、原田結衣、梶川詩央

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