焼肉屋のバイトで反社会勢力を接客した話
私は学生時代に焼肉屋でバイトをしていました。
その焼肉屋は様々な常連さんがいたのですが、その中には893さんもいらっしゃいました。
当時は暴排条例がまだ施行されていなかったので、街中でもたまに893を見かけたものです。
私のバイト先に来る893は、地元の小規模な組の方々なので、家族連れだったり、構成員を引き連れてだったりでいらっしゃいます。
家族連れで高校生のお嬢様がいらっしゃる際には、セーラー服で普通におタバコを吸われていました。
店長が一応注意するも、
「ああ”?!本人が吸いたいって言ってるんだから別にいいだろ!」と凄まれます。
その道の方にそうされては、もうセーラー服のコスプレをされている成人女性と思わざるを得ません。
そんな893さんですが、ある日6名くらいの団体でいらっしゃったので、個室席に通しました。
そんな広い店舗ではなかったので、強面が狭い個室席に並んで座るとそれはそれは迫力があります。
その時間帯は私と店長しかいなかったので、私が炭の入った七輪をテーブルに入れる事になりました。
その当時私はバイトを始めて3か月くらいでした。まだそんなには仕事に慣れてません。
それだけではなく、七輪を入れるエリアは奥と手前で二箇所。手前は個室の入口から入れられますが、奥はせまーい893の間を潜らないと辿り着けません。
「うしろ、失礼しまーす。」と言いながら細心の注意を払います。
893の熱視線が私に突き刺さり、手が震えます。
万が一、炭を落としたり、七輪で頭をガーン!とやってしまおうものなら、私に明日はないでしょう。
コンクリートに埋められるか?
それとも東京湾に沈められるか?
鎖で繋がれながら、バットでリンチされるか?
生きた心地がしない中、何とか七輪を入れ終わりました。
てか、893ならこんな庶民派の店来ないで、叙々苑とかいけよ。
そんな事を思いながら、七輪を入れ終えた後、1人の893さんに呼び止められます。
「おい、兄ちゃん!」
ビクッ
何か粗相でもあったでしょうか。
炭の灰でも目に入ったのでしょうかね。
流石にそこまでは不可避です。
私は細心の注意を払いました。
だから、命だけはご勘弁を、、、!
「はい、いかがいたしましたか?」
「あれ持ってこいや!」
「あれと言いますのは?」
「いいから、あれだよ!んなのもわかんねぇのか!」
893が声を荒げたので、
「はい、あれですね!承知しました!」
と退散しました。
私は困り果て、店長に聞きにいきます。
「893達にあれって言われたんですけど、あれって何ですか?」
「ああ、ダスターの事だよ。」
ダスターとは、飲食店でよく使われる不織布の雑巾の事です。
「あ、あの人たち綺麗好きなんですか?」
「違うよ(笑)とにかく、新しいのを人数分持っていきな。」
店長にそう言われたので、恐る恐る新品を人数分持っていきます。
「おう、これだよ!」
893さんはご満悦でした。
そして何に使うのかと見ていると、全員おもむろにダスターを広げ、服の襟にインしていきます。
当時、お店に紙エプロンがなかったので、893達は代用品としてダスターを使用していたのです。
全員、人を56してそうなくらい怖い顔をしているのにも関わらず、全員がきっちりとダスターエプロンをしてテーブルを囲んでる姿はギャップが激しすぎて、むしろ可愛く感じました。
まるで幼稚園生たちのお昼ご飯の光景のようです。
これこそギャップ萌えというやつですね。
そんなこんなで、私は893とのピンチを乗り切る事ができました。
あの893達は今頃何してるのかなぁ。
こいつに小銭でもめぐんでやろうか。そう思われた神のようなあなた!大変ありがとうございます(ノ∀`*)