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ユーロビジョン・ソングコンテスト2024


今年のユーロビジョン

2024年のユーロビジョン・ソングコンテストがいよいよ5月の第二週から開催されます。
今年の開催地はスウェーデのマルメ
ヨーロッパおよび周辺国から37か国が参加します。
ルクセンブルグは31年ぶりの参戦となります。

政情不安定なウクライナやイスラエルの参戦も予定されており、いつもより剣呑な雰囲気が予想される今大会ですが、参戦するアーティストは例年にもまして個性派ぞろい
なかなか見どころのある大会になりそうです。

とりあえず、すべての曲を聴いて僕なりの感想をまとめてみました。
今年はは地域別(国連基準)で紹介してまいります。


①西欧諸国

西ヨーロッパからはオーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダ、スイスの7か国が参戦します。
EUの中心地ともいえる土地柄でありながら、オランダがパンク精神溢れる独自の存在感を放っていて、目が離せません。

ベルギー

ベルギーの代表アーティストはマルチタレントの『Mustii』。歌は『Before the party is over』パワー感のるポップソングです。MVは肉体美を強調したセクシーな構成になっていますが…歌の内容を鑑みるにミスマッチ感は否めません。共感よりも反感を生まないか、いらぬ心配をしてしまいますが…果たして?本線でのお客様の反応が気になる一曲ではあります。

フランス

フランスの代表アーティストは『Slimane』。豊かな表現力と声量を誇る男性シンガーです。歌は『Mon amour』。ストレートなラブバラードです。他のフランス語は分からなくても『ジュテーム!』という絶唱を目の当たりにすればそれだけで伝わる、ある意味強引な一曲です。彼が身に着けている衣装によってもたらされる演出に、心が動くかどうかは感性次第かなぁ…と。決して手抜きではないと思うのですが…。

オーストリア

オーストリア代表アーティストは『Kaleen』。歌手でダンサーで振り付け師という…ステージ上で多彩な才能を発揮する女性アーティストです。歌は『We Will Rave』。タイトル通りのパワー溢れるポップソングです。実は彼女、舞台演出として昨年のeurovisionに参加してます。昨年の僕の推しだった、アルメニアの舞台にも協力していたとのことで…ちょっと気になる存在です。

オランダ

オランダの代表アーティストは『Joost Klein』。ミュージシャンで作家…某オーケ○先生のような肩書きです。歌は『Europapa』…キワモノの多い今大会の中でも、かなりの問題作です。ユーロビジョン…というよりむしろEUの理念に唾吐くその姿に、確かなパンクの魂を感じますが…良いのかなぁ。今大会、荒れますな。

ルクセンブルク

およそ30年ぶりとなるルクセンブルクの出場。代表として選ばれたのは、ペルー系ユダヤ人にルーツを持つ『TALI』。主にニューヨークで活動しているミュージシャンとのこと。曲はパワー強めのポップチューン『Figther』。バックダンサーとの絡みがなかなか見事です。ステージではどんな演出を見せてくれるのか楽しみではあります。

ドイツ

ドイツの代表アーティストはストリートミュージシャン出身の『ISAAK』。歌は力強い歌声が印象深い『Always On The Run』。どことなく80年代の雰囲気を感じさせながらも、歌われるのは現代社会の息苦しさからの脱却。戦う相手を見失い、いったい何処へ行こうというのか…そんな空虚さを、力でねじ伏せようとしているかのように感じた一曲でした。

スイス

スイスの代表アーティストはネットからブレイクし、今はプロデューサーとしても活躍する気鋭のシンガー『Nemo』。歌は少しサイケなテイストが魅力のデジタルポップ『The code』。MVはクラシカルな列車の中で様々な衣装に身を包みながら歌いまくる勢いのある構成です。歌詞の意味と合わせるとなかなか味わい深いものがあります。


②東欧諸国

東ヨーロッパからはウクライナ、チェコ、ポーランド、モルドバの四ヶ国が参戦。ロシアとの関係の深いベラルーシの不在は頷けるとして、ルーマニア、北マケドニア、ブルガリアなども参戦していないところを見ると、東欧諸国の実情のようなものが透けて見えるような気がします。

チェコ

チェコの代表アーティストは『Aiko』。ロシア生まれのチェコ育ち。現在はイギリスで活動するシンガーソングライターです。歌は『Pedestal』…惜しげなもなく『自分』を全面に押し出す、勢いのあるパワーソングです。なんか…自分に自信のあるカースト上位の若い女の子に好まれそう…とか穿った見方をしてしまうのは、良くないですね。

ポーランド

ポーランドの代表アーティストはミュージシャンでヨガのインストラクター『LUNA』。歌は軽いノリのポップソング『The Tower』。スピリチュアルな分野に興味を持つ彼女であれば、やはり不吉な思いをこの歌に寄せているのでは…と勘ぐってしまいます。彼女自身もまた塔を築く者の一人としてあるのであれば…この歌はキャッチーな雰囲気とは裏腹の諦念とも取れる重いメッセージを孕んでいるのでは…と。考え過ぎですかね。

モルドバ

モルドバの代表アーティストは今大会で二度目の出場となる『Natalia Barbu』。今回もバイオリニストとしての側面を前面に出しながら、前大会のロックスタイルとは打って変わったバラード調の曲『In The Middle』で今大会に臨みます。MVではバックミュージシャンと同一の衣装に身を包み、自らの個性をステージ上に拡張する…という手法を取っています。なかなか際立つ存在感を示す彼女。本戦での活躍に期待します。

ウクライナ

ウクライナの代表アーティストは『alyona alyona & Jerry Heil 』。2022年にウクライナに優勝をもたらした『Kalush Orchestra』が所属するレーベルの共同設立者『alyona alyona』によるユニットです。歌は『Teresa & Maria』。タイトルから分かるとおり平和を熱望する内容です。実力もかなりのもので、今大会注目株の一組といえます。


③南欧諸国

南ヨーロッパからはギリシャ、クロアチア、スロベニア、ポルトガル、スペイン、アルバニア、キプロス、イタリア、サンマリノ、マルタ、セルビアの11ヶ国が参戦。下馬評ではクロアチアが注目を集めているそうです。

ギリシャ

ギリシャの代表アーティストは豊かな才能を持つシンガーソングライター『Marina Satti』。歌は『ZARI』ギリシャ風の音調をベースにしたポップソング。MVは安い旅行番組風のカットを巧みにつなぎ合わせた味のある映像作品になっています。実はギリシャは今大会が50回目のユーロビジョン参加となります。ギリシャにとって記念すべき今大会…ギリシャの歌姫の健闘を祈っております。

クロアチア

クロアチアの今年の代表アーティストは『Baby Lasagna』。ロックバンド出身のミュージシャン『Marko Purišić』が立ち上げたプロジェクト…という立ち位置です。曲は『Rim Tim Tagi Dim』。勢いのあるデジタルロックです。果たしてこの歌は田舎を捨てる若者達の背中を押すのか、それとも踏みとどまらせるのか…聞き手によって解釈が変わりそうな一曲です。

スロベニア

スロベニアの代表アーティストは音楽の錬金術師と評される『Raiven』。メゾソプラノの美声を持ち、ハープの演奏もこなす多彩な女性アーティストです。歌は業の深さを感じるラブバラード『Veronika』。MVのコンテポラリーダンサーズとの絡みは前衛的で評価の分かれるところかも。嫌いではないですが…。

ポルトガル

ポルトガルの代表アーティストは、ブラジル生まれポルトガル育ちのシンカーソングライター『iolanda』。歌は『Grito』。さながら静かに燃える炎といったところでしょうか…白を基調とした衣装と前衛的なバックダンサーが、歌の雰囲気としっかりと調和しており、独自の魅力を発揮しています。 果たして本番のステージではどんな『白』を見せてくれるのか?期待したいと思います。

スペイン

スペインの代表アーティストは、恐らく今大会最年長のポップデュオNebulossa。…出場アーティストの平均年齢より彼等の方が、僕の歳に近いことに改めて気付くわけですが。…とにかく色々と勇気付けられる存在です。歌は『ZORRA』。スペイン語で『ビッチ』の意味だそうです。挑発的なタイトルですね…。MV見てるとまだまだ自分もやれる気がしてくるから不思議です。(何を?)

アルバニア

アルバニアの代表アーティストとして選ばれのは『BESA』。歌は『Titan』…タイトル通りの勇ましい曲です。アルバニアの歴史を象徴しているのか、打ちのめされても決して諦めない不屈の精神をストレートに表現した一曲になっています。古き時代の誇りを取り戻そうと言うのならば、その拠りとなるのはやはり民族意識なのでしょうか…。

キプロス

キプロスの代表アーティストは、ギリシャ人とキプロス人の血をひく『Silia Kapsis』。シドニー生まれのシドニー育ち…ロスで振り付け師として活躍中。そんな彼女が歌うのは、アップビートのポップソング『Liar』。MVで見せるダンスのキレは、本大会でも屈指のもの。今大会は特にダンス系のアーティストが多いのですが、その中でも光ものを感じます。本戦での活躍に期待したいです。

イタリア

イタリアの代表アーティストは若手シンガーソングライターの『Angelina Mango』。歌は勢い十分なポップチューン『La noia』。歪んだデジタルミュージックに、様々なジャンルのいいとこ取りをしたボーカル。万人向けとなるかキワモノとなるか…危ういバランスが良い案配です。MVで披露した奇抜すぎる髪型がステージでどう表現されるのか楽しみではあります。

サンマリノ

サンマリノの代表アーティストはハードロックバンド『MEGARA』。曲はストレートなロックナンバー『11:11』…なんだか意味ありげなタイトルですね。MVは11:11を境に乱痴気騒ぎを始める悪魔…みたいなイメージでしょうか?『理性』を象徴すると思われる二人の男女の微妙な表情がちょっと面白いです。

マルタ

マルタの代表アーティスト『Sarah Bonicci』は笑顔で見せるすきっ歯にギャップを感じるセクシー系のポップシンガー。ユーロビジョンで披露される『Loop』は持ち前の魅力を全面に押し出したアグレッシブな一曲になっています。セクシーでマッチョな男性ダンサーを従えて、さながら女王のごとく振る舞う彼女ですが、時折見せるすきっ歯に毒気を抜かれる…というか不思議な魅力を感じます。

セルビア

【欧】ユーロビジョン2024。セルビアの代表アーティストは憂鬱な空気を身にまとう女性シンガー『Teya Dora』。歌は『Ramonda』…花の名前からきているようです。日本では『イワタバコ』という名で呼ばれ、岩場で慎ましやかな花を咲かせる…可愛らしい存在と見られる趣にあるようですが、この歌では岩場に力強く咲く気高い女性の象徴として表現されており、感性の違いに面白みを感じた次第。…なかなかの実力派です。


④北欧諸国

北ヨーロッパからは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランド、デンマーク、エストニア、リトアニア、ラトビア、イギリス、アイルランドの10ヶ国が参戦。イギリスとアイルランドが北欧に数えられるのは国連による分類によるものです。

ノルウェー

ノルウェーの代表アーティストは『Gåte』。民族音楽とロックを融合させた独自のスタイルが人気のバンドです。歌は『Ulveham』。ノルウェーの言葉で『狼男』を意味するそうです。タイトル通りの激しいパフォーマンスでありながら、民族音楽のテイストはしっかりと残すという、なかなか上手い構成です。『暗黒メルヘン』とでも言うべき御伽噺風の歌詞も独特の魅力を放っています。

アイスランド

アイスランドの代表アーティストは二度目の出場となる歌姫『Hera Björk』。あの『Björk』とは別人ですのであしからず…。歌は80年代の雰囲気たっぷりのポップソング『Scared of Heights』。…直訳すると『高所恐怖症』曲調とは裏腹のデリケートな想いを綴った歌のようです。この辺もまた80年代っぽいかな…と。

リトアニア

リトアニアの代表アーティストは『Silvester Belt』。セクシーな容姿と甘いボイスが売りの若手男性シンガーです。リトアニアではアイドル的な扱いなのでしょうか…。歌は『Luktelk』。『ちょっと待って』という意味のリトアニア語ですが、内容は甘い甘いラブバラードです。女性人気はありそうですが、おじさん的にはちょっと…。

デンマーク

デンマークの代表アーティストは『SABA』。黒人であり同性愛者というマイノリティな背景を持ちながら、デンマークの代表アーティストに選ばれたことを誇りに感じているとのこと。歌は脆く崩れやすい関係を歌ったバラード『Sand』。力強く歌い切る彼女の表情の晴れ晴れしさには純粋に惹かれるものがあります。

イギリス

イギリスの代表アーティストは、俳優、歌手など総合的な活躍を見せる『Olly Alexander』。歌は『Dizzy』フラットなポップソングです。なんか男性アイドルのような立ち位置でしょうか…。MVは舞台の国イギリスらしく、舞台装置と舞台表現を駆使した質の高いものに仕上がっています。どのような演出で本戦に臨むのか、少し楽しみではあります。

アイルランド

アイルランドの代表アーティストはシンガーソングライターの『Bambie Thug』。ダウナー系(ゴス)ロリポップ…とでも形容すべきでしょうか…。歌は『Doomsday Blue』。彼女の魅力を体現する強烈な一曲です。彼女は自身の歌を『ウィジャ・ポップ』と名付け、サブカル系のタブーと「がっぷり四つ」で組み合いながら活動しているそうです。。今年の注目株の一人かも…。

スウェーデン

スウェーデンの代表アーティストは双子のポップシンガー『Marcus & Martinus』。歌はエレクトロポップな『Unforgettable』。こういう何も考えなくても聴ける曲は、ある意味貴重かもしれません。とか言いながら、僕が読み取れないだけで、実は深い意味が潜んでいるのかも…。油断できない海千山千さがeurovisionだと勝手に心得ております。

エストニア

エストニアの代表アーティストは『5MIINUST x Puuluup』。エストニアで人気のヒップホップグループ『5MIINUST』と木製リラを奏でるゾンビフォークデュオ(自称)『Puuluup』の異色のコラボレーション。歌は『(nendest) narkootikumidest ei tea me (küll) midagi』。翻訳したらなかなか味のあるタイトルでした…。

フィンランド

フィンランドの代表アーティストは『Windows95man』悪乗り系オタクDJですね…。歌は『No Rules!』カオスの申し子のような歌です。色々とハラハラさせるステージパフォーマンスに悪乗り系日本文化の影響を嗅ぎ取る人は僕だけではないと思います。なんというか…90年代も既に懐古の対象なんだなぁ…と妙に感慨深い想いに浸りました。

ラトビア

ラトビアの代表アーティストは20年のキャリアを持つ実力派シンガー『Dons』。歌は渋めのバラード『Hollow』。曲名が示すとおり、静かで虚無感漂う一曲になっています。MVも虚ろで地味で病的な映像になっており、ヤケクソ気味の喧騒っぷりが目立つ今大会の中では、かえって良いアクセントになっていると感じました。


⑤その他の地域

中東や中央アジア、オセアニアなど、欧州以外からはオーストラリア、アゼルバイジャン、イスラエル、ジョージア、アルメニアの四ヶ国。実力はあれどなかなか優勝できないアルメニアを今年も応援したい。

オーストラリア

欧州より最も遠き大地オーストラリアの代表アーティストは『Electric Fields』。オーストラリアとしては初めてのデュオユニットによる参加となります。歌は力強いポップチューン『One Milkali』。アボリジニの一部族『アナング』の言葉で『一つの血脈』…という意味だそうです。オーストラリアにおける先住民政策を意識した感はありますが…良い歌だとは思います。

アゼルバイジャン

アゼルバイジャンの代表アーティストは『FAHREE feat. Ilkin Dovlatov』。若手ポップシンガー『FAHREE』とアゼルバイジャンの伝統芸術ムガムの担い手『Ilkin Dovlatov』とのコラボです。歌は『Özünlə Apar』しっとりとした男性ボーカルが魅せるバラードです。Ilkinのムガムパートがバックコーラスとしか機能していないのが残念かな…と。

イスラエル

物議を醸していたeurovision2024へのイスラエルの出場が正式に決定しました。問題になっていた歌の歌詞はしっかりと改変され、美しく耳に残るバラードとなっています。芸術性の高いMVと完成度の高い楽曲…本来なら高評価を得るべき作品だと思います。最後にヘブライ語で何やらメッセージを乗せているのですが…そこに何か歌の真意のようなものが秘められているのでしょうか。…さて。

ジョージア

ジョージア代表は…ジョージア生まれのトルコ育ち…アメリカでキャリアを重ね、ドバイに永住権を持つ女性アイドル(?)『Nutsa Buzaladze』。随分とバラエティーに富んだ来歴ですな…。歌は『Firefighter』消防士…ではなく、フェニックスの如く炎を身にまとった戦士のイメージ…のようです。火をつけまくってます。強い女性像…昨今の流行でしょうか…。嫌いではありませんが。 

アルメニア

アルメニアの代表アーティストはアルメニア人ボーカリストとフランス人のインストゥルメンタルアーティストのコンビ『Ladaniva』。歌は『Jako』。アルメニア語で歌われる奔放すぎる一曲です。MVでは歌い手の『Jaklin』が民族衣装をフューチャーしたワンピースを身にまとい、伝統的なアルメニアの街中で溌剌とした魅力を振りまく構成となっています。なんかジブリの映画に出てきそう…。


今年の推し

今年もアルメニア強く推していきたいです。
『Jako』はアルメニアの風土を感じさせながらも、しっかりポップな一曲になっており、万人受けするポテンシャルを感じます。
まだ歌い手の『Jaklin』のナチュラルな振る舞いは、さながらジブリアニメのヒロインの如し。ユーロビジョンには珍しい健全な魅力を感じます。
アルメニア悲願の優勝…なるか?
本戦での活躍を大いに期待いたします。

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