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人生の恩人にお礼を述べる(ブックオフ創業者:坂本孝さんへ)

・ブックオフの創業者、坂本孝さんが逝去された。

・ぼくらのポッドキャスト『NewNakanoStories』は古着、古本、ブックオフをテーマにしているわけなので、このニュースは感じ入るものがあった。

・坂本さんのことをよく知っているわけではない。

・しかし、ブックオフのいちファンとして、恩人へのお礼を述べたいと思う。

ブックオフがなければ若き日にカルチャーを十分に摂取することはできなかった

・ブックオフなどの新古書店、古本屋さん自体があまり縁がない、馴染みがないという方も多くいらっしゃると思う。

・しかし、なぜか昔から僕はブックオフが大好きだった。

・なにか、DNAなどに起因しているのではないかというぐらい、無意識に好きだ。

・ブックオフには「なにかを探しに行く」のではない。

・いつも「なにかがそこにあるのを期待して」寄る。

・さらにいえば、別に何かがなくても構わない。

・頻繁に寄りすぎて商品が回転しておらず、全く前回と代わり映えがなくても、それでもなんとも思わない。

・あの「雑多に整列している」本の山に囲まれること自体が好きだ。

・図書館でも同じような感覚を味わうことができるけど、やはり大きく違うのは手の届く価格で心がときめいた本を買って帰れることだ。

・ただ、僕はブックオフで買った本を読み終わったあと、ブックオフに売ったりしているので、「ブックオフに本を還す」と呼んでいる。

・感覚としては貸し本屋に近い。

・買った価格と売った価格の差額がレンタル代となる。

・若く、お金もそんなに持っていない時期。そして、インターネットも発展途上の約20年前。

・カルチャーを安価に摂取できる身近な場所は、ブックオフを置いて他になかった。

・なんとなく寄って、なんとなく気になった本を買った。

・少なくとも3冊以上は買わないと気がすまなかった。

・役に立った本もあるし、そうでもない本もある。

・積んだまま読まずにブックオフに還した本も多い。

・でも、その全てが今の僕を形成していると、確信を持って言える。

・まずはその点について、そのような場を作ってくれた恩人である坂本さんにお礼を述べたい。

資格の勉強は全部ブックオフの数年落ちのテキストでなんとかした

・思い出せるだけでも、TOEIC、FP試験、MCPなどのIT関連、などなど。

・社会人として働く中で必要となった資格の勉強において、そのテキストは全部ブックオフで探した。

・こういったものは最新のテキストを買わなくても、1~3年前のものでだいたいなんとかなる。

・2~3年も落ちればだいたい100円で売られている。

・そして、実際にだいたいなんとかなった。

・このコスパはとんでもないものだと思う。

・また、資格だけに限らず、働く中で必要な知識を得るための実用書もだいたいブックオフで100円で買った。

・そして、現在、一応なんとか社会人として形になっている。

・それもこれも、創業者の坂本さんのおかげだ。

病めるときも健やかなときも いつもそばにいてくれた

・誰にも会いたくない、外にも出たくない、そんな時期が誰にだって少なからずある。

・自分は一体何をしているんだろうか、このままどうなってしまうのだろうか。

・なぜみんなは毎日を普通に暮らせるのだろうか。

・電車に乗っていると急に襲ってくるこの不安感は何なのか。

・大勢で集まっているのに、周りの声が遠くなっていくこの感覚は何なのか?

・この原因不明の吐き気と人生をともにし続けるのだろうか。

・実際に倒れたことはないのに、倒れそうだと思うこの感覚はなんなのか。

・そんな渦の中にいると、音楽や文学を摂取しようという気持ちさえ浮かんでこない。

・でも。

・ブックオフには行けた。

・同じように、図書館にも行けた。

・ブックオフは営利企業でありながら、パブリックな立ち位置をいつのまにか確立していた。

・ブックオフはなにも気にしない。

・僕がどんな状態にあろうと、ただそこにある。

・来る人の属性を規定しない。

・誰もを受け止める。追いもしない。

・特定のイデオロギーも生き方も押し付けもない。

・「こんな状態をだれかに心配されるとしのびない」と思っていた。

・そんなことは思い上がりで、ブックオフではみんな本やCDを探しているだけだ。

・僕のことなんか誰も気にしない。

・この時期、人生で最もたくさんの本を買って読んだ。

・難解であればあるほど、頭の中から余計な考えを排除できた。

・そしていつのまにか、自分のことがどうでも良くなった。

・僕もブックオフのように、ただそこにいればいいのだと。

・何者かになる必要などないのだと。

・これもやはり創業者の坂本さんのおかげだ。

・ブックオフがなければ、僕はここにいないだろう。

これからも

・約25年前、高校生の時期にブックオフを知り、それからずっと通ってきた。

・ブックオフもいろいろ変わっているが、やはり、あのお店に入った瞬間のワクワクする感覚は変わることはない。

・いまも、仕事関連の勉強は全部ブックオフでなんとかしている。

・読むのが全然追いつかない量の本を買い続けている。

・いま、僕は40代なかば。

・ここまできたらずっとこのままだろう。

・同じように、ブックオフに助けられた人間がたくさんいることを僕は知っている。

・その一人として、ブックオフ創業者の坂本さんに、人生の恩人にお礼を述べさせていただく。

・ありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。

(end)

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