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京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー

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東大総合文芸サークル・新月お茶の会のメンバーが、いま改めて京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉と出会う連載企画。毎週火曜更新予定。(完結済)
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記事一覧

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第1回:『姑獲鳥の夏』

 いかに唐突に出現したように見えようとも、一篇の物語が書かれるためには、すでに数知れぬ物…

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京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第2回:『魍魎の匣』

 一課の刑事、木場は少女が線路に落下した現場に行き会い捜査に乗り出すが、一ヶ月後、重傷の…

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第3回:『狂骨の夢』

 恥ずかしながら京極堂シリーズを読むのは今回の『狂骨の夢』が初めてだ。なので、本当にその…

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第4回:『鉄鼠の檻』

 拙僧が殺めたのだ───。  雪深い箱根の山中にひっそりと佇む謎の寺院、明慧寺。  俗世か…

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京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第5回:『絡新婦の理』

 世を騒がせている目潰し魔と女学校に突如現れた絞殺魔。2つの殺人事件は織作家の女たちを通…

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第6回:『塗仏の宴 宴の支度』『塗仏の宴 …

 『塗仏の宴』は百鬼夜行シリーズ第六作の大長編であり、また百鬼夜行シリーズそのものである…

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京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第7回:『陰摩羅鬼の瑕』

 作家である関口は、探偵を依頼された榎木津とともに白樺湖畔の洋館に赴いた。そこでは過去4度に渡って婚礼の夜に花嫁が命を落としており、“伯爵”の5度目の婚礼が行われようとしていた——。  京極夏彦作品に初めて出会った時の衝撃は忘れられない、それは京極作品に一度でも触れたことのある多くの人が共通してもつ感慨だろう。まさに世界がひっくり返る感覚、京極作品に出会う前の自分には戻れない。とてつもない知識量、個性溢れる登場人物、引き込まれる文章、……、それは『陰摩羅鬼の瑕』でも健在であ

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第8回:『邪魅の雫』

「僕は嘘しか云いませんよ」  江戸川で死体が見つかり、次いで大磯でも事件が発生した。彼ら…

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第9回:『百鬼夜行 陰』

 物語とはつねに書き直されたものであり、あらゆる創作行為はすべて「重ね書き」である。それ…

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第10回:『百器徒然袋 雨』

 薔薇十字探偵社の探偵・榎木津礼二郎が活躍する中篇三つをまとめたのが、この『百器徒然袋 …

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第11回:『今昔続百鬼 雲』

 本作は『メフィスト』に掲載された中編3編に書き下ろし1編を加えた、百鬼夜行シリーズの外伝…

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第12回:『百器徒然袋 風』

 薔薇十字探偵・榎木津礼二郎は推理をしない名探偵だ。眉目秀麗にして腕力最強。破天荒にして…

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第13回:『百鬼夜行 陽』

 過去とはすべて物語である。なぜなら過去というものは、主観を通して再構成された体験の記憶…

京極夏彦〈百鬼夜行シリーズ〉全レビュー|第14回:『今昔百鬼拾遺 月』

 わたしたちは、常日頃から情報を無意識的に選択し続けている。のみならず、他人が取捨し終えたあとの情報を、丸っと生の情報と誤認して受け止めてしまう。加工された情報と生の情報、この間にある情報量の差が死角を生み、そしてそれが謎を生む。妖怪はこの死角を好み跋扈する。  本書は〈百鬼夜行〉シリーズの番外編短編集、中禅寺敦子の巻である。中禅寺敦子といえば、ご存知京極堂こと中禅寺秋彦の妹君であり、〈百鬼夜行〉シリーズに出てくる登場人物のなかでも数少ない「社会人」である。もうひとりのキー